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幕間 初デートの定義は満たされない (映画~カラオケ)

 私は彼が気に入らなかった。

 私は彼が理解できなかった。



 そう、私は彼が嫌いだった。



 小学二年生の時、生意気だと高学年の男の子に襲われた。朝に雨が降っていたから、身体の大きなその人は大人用の先が尖った傘を持っていて、それで私を攻撃してきた。

 中てるつもりはなかったのかもしれない。けれど、その傘は私を守るために飛び出した彼の右手を貫いた。

 私は怒った。高学年の男の子じゃなくて、彼を。彼は先生を呼んでくるだけでよかった。


 私は生まれた時から異常だった。傘程度で傷つかない。私の中の熱が、勝手に私を守ってくれる。だから、彼は無駄に怪我をしただけだった。

 私は私より弱い彼が私を守ろうとしたことが気に入らなかった。プライドが傷つけられた。だから烈火のごとく怒った。


 高学年の男の子はいつの間にかいなくなっていた。周りにあった草は全て灰になっていた。彼はずっと「ごめんなさい」と謝り続けていた。

 私はその後三日も口をきいてあげなかった。



 私は彼が嫌いだった。





 そういうわけで、荷物をロッカーに預けた後、まず来たのは映画館だ。


 入り口で売られているポップコーンには心惹かれたけれど、一人で食べるには大きすぎて、二人で食べるには良二くんの腕の問題がある。今の彼の腕は、暗がりで静かにこぼさず食べるのには適していない。

 あと折角二人なのに、間にポップコーンが挟まるのは違うだろう。


 見る映画は「あの日の夢の続きを~Tears for devil~」。封切直後のアニメ映画。前作が大ヒットした有名監督の新作で、CMを見るたびに気になっていた作品だ。

 内容は男を騙し、手玉に取り、そして契約し地獄に落とす少女の姿をした悪魔が、契約の邪魔をする飄々とした男の魂を手に入れるために彼に色々なアプローチを仕掛け堕とそうとする話だ。

 良二くんも興味があったらしく、ワクワクした様子で特典色紙を受け取っている。


 さてさて、どんなお話だろうか。



 油断した。

 単なる女たらしの男と恋する悪魔のラブロマンスかと思いきや、意外と設定が練り込まれていて引き込まれる。

 まさか始まった時点で男の術中に嵌っていたなんて……男が飄々とした女たらしになったことにもちゃんと理由があって、その全てがこの恋物語に集結していく。

 悪魔の焦がれる想いと、男の重すぎる感情が物語を彩っていく。



 ふと、左手に何かを感じた。良二くんの右手だ。ジュースに口づけた後無造作に置いた手が触れたらしい。

 画面に集中しつつ、彼の手に触れてみる。硬い。暖かさを感じない。手触りもツルツルしている。一目見た時から気になっていたけれど、彼の右手はよく見ればすぐに義手と解ってしまう。みんなは彼の右手の事を知らないので、なるべく隠した方が良いだろう。急いで人の手そっくりに見えるような高精度の人工皮膚を用意させよう。それなら触らなければ気が付かないはずだ。それくらいなら明日までに間に合うだろう。

 そんなことを考えながら良二くんの手に指を這わせる。反応はない。もしかしたら、感覚器官が鈍いか、あるいは指先以外に搭載していないのかもしれない。

 私は彼が気が付かないことを良いことに、もっと大胆に指を這わせてみる。優しく、しっとりと、彼がそこにいるのを確かめるように。

 映画もそろそろ終盤だ。二人の心が激しく絡み合っていく。私もそれに合わせるように、恋人繋ぎになるよう、良二くんの指と私の指を激しく、繊細に、艶やかに絡み合わせた。

 彼の体温は感じない。けれど、彼がそこにいてくれている、私と同じ時を過ごして、同じものを見てくれているということはしっかりと伝わる。

 この手が本物の彼の手ならいいのに。けれどきっと、それなら私はこうやって彼の手には触れられなかっただろう。

 盛大な音楽と演出が、画面の二人の恋の終わりを彩っていく。心奪われた私は、火照った手で良二くんの手を強く強く握る。


 良二くんは映画の終わりまで、ジュースを飲もうとはしなかった。



「泣いてないわ」


 当り前じゃない。恋愛強者である私が、愛映画を見て泣くなんてそんなことありえないわ。


「何も言ってないんだが」

「目が言っていたのよ」

「そうか。ところで終わった後の声が涙g」

「それ以上言うと、あ~んをしてあげないわよ」


 そう言うと、良二くんは素直に口をつぐんだ。

 もしかして、あ~んして欲しいのかしら。流石に人目がある所では恥ずかしいのだけれど。


 私たちは今ショッピングセンターのフードコートにいる。お昼ご飯の最中だ。

 メニューはサブマリンサンドイッチ。良二くんはグリルチキンで、私はエビアボガドだ。二人とも野菜多めで、私はドレッシング少な目。

 彼はもっとちゃんとしたレストランに行きたがっていたみたいだけれど、私がここを選んだのだ。これなら右手に不慣れな良二くんでも簡単に食べられる。こういう時くらい、私のことを気にせずもっと甘えて欲しい。

 それとも、パスタならもっと気軽にあ~んしてもらえると思ったのだろうか。


「そういう良ちゃんこそ目が潤んでいなかったかしら?」

「ソンナコトナイヨー」


 良二くんが露骨に目をそらす。露骨すぎて本心かどうか判別し辛い。卑怯者め。


「それで、良ちゃん的には良かったということかしら?」

「そうだな。全体的に引き込まれたけど、主人公が悪魔が消えてしまうのを納得するのが早すぎるところは気になったかな」


 悪魔は終盤、主人公である男の命を守るため、昔に交わした契約を破棄してしまう。その代償により存在が消えてしまうのだ。

 人を道具か玩具としか考えていなかった悪魔が愛を知り、愛のために命を投げ打つ感動のシーンである。


「そうね……確かに契約のルール上再契約を結ぶか、契約は一種のDAを使っていることが示唆されているから、その解析と書き換えが行えれば助けられる見込みはあるわ。でも良二くんや私ならともかく、独学で勉強していただけの彼にそれを理解しろというのは酷じゃないかしら」


 私の意見に良二くんが眉をしかめる。


「なあ麗、勘違いなら済まないんだが、こういう時に話すのは作中における描写や表現に対する感想じゃないのか?

 主人公を助けるために悩みぬいた悪魔の献身さに対して、もっと深く彼女を愛していたはずの主人公が彼女が消えてしまうのをあっさりと受け入れすぎてしまうのに違和感があったんだ。

 だから、感情も戻ったんだし、何もできないにせよもっと泣き叫ぶなり狼狽えるなりで戻った感情を表現して欲しかった、という意味で言ったんだ」


 顔が一瞬で熱くなるのを感じる。


「ちょっ!ちょっと違うの!

 良ちゃんだから冷めた目線で斜に構えた空気の読めない感想言ってくるんじゃないかなって勘違いしちゃって……

 私がそういう風に考えながら見ていたわけじゃないのよ?」


 慌てる私を良二くんがジト目で見てくる。


「ソウデスネー。

 内容については兎も角、麗が俺のことをどう見ているのかについては良く解ったよ」

「違う……違うのよ……」


 わざとらしく口をとがらせる良二くんにはエビアボガドサンドを一口献上することで機嫌を直してもらって、私たちはお互いの感情と感想を存分に語り合い、そして作中における魂の定義や使用されたDAについての機能の仮説を議論するのだった。



「やっぱり一番のキモは巻き込まれていたはずの主人公が、本当は悪魔を罠に填めたていたところだろう。

 違和感がある描写も所々あったし、もう一度見れば見方が変わりそうだな」

「そうね。初めの方にあった意味深な彼の表情のカット、もう一度見直したいわ。きっと懐かしさと愛しさが混ぜ合わさった表情のはずよ」


 D-Segをかけていればそのシーンを見直すことができるけれど、私たちは映画泥棒ではないのでもちろんD-Segは鞄の中にしまっていた。ちなみに、今回の買い物は一切監視しないように、アイズくんと愛韻くんにはよく言い聞かせている。


「普通に面白かったし、もう一周したいな。多分二週目の方が楽しめる」

「そうね。

 ……ところで、その時は誰と行くつもりなのかしら?」

「それは――」


 答えようとした良二くんが言葉に詰まる。けれどもう遅い。


「良ちゃん。二人きりの買い物だもの、他の女の人のことを考えるのは失礼よ。

 ちゃんと私の事だけを見て、考えて」


 良二くんはバツの悪そうな表情をすると、こくりと頷いた。


「よろしい。それじゃあ誰と行くつもりなのかしら?」

「麗」

「ふふ、誘ってくれるのね。嬉しいわ」


 実際には言わせたわけだけれど、嬉しくてつい微笑んでしまう。


「もちろん一緒に行くわ。また感想を交わしたいもの。けれど、次は良ちゃんの両腕が治ってからね。

 良い作品だし、あと二か月は上映するから間に合うでしょう」


 きっとその時は今日みたいに手を触れないけれど。歩く時に腕を絡めることもできないけれど。それでも元気な時の方がいい。


「そうだな。それじゃあ両腕がそろったら誘うよ」

「ええ。楽しみにしているわ。また二人きりで来ましょうね」


 さりげなく二人きりアピールをしておく。そうしないと、良二くんは雪奈ちゃんや仁くんを連れてきかねない。

 さて、これで()の約束を取り付けられた。一つミッションクリアだ。


「それで、これからの予定は?」


 サンドウィッチを食べ終わり、ジュースの残りを飲みながら良二くんが尋ねてきた。


「喉の調子はどうかしら?」

「傷は治った。魔力器官はまだ完治に時間がかかるけど、痛みはないし何時間も叫び続けたりしない限りは問題ないよ」


 良二くんが立ち上がる。トレーを持とうとしたので、慌てて彼より早くトレーを手にする。

 彼は私に恥をかかせようとしているのだろうか。


「それじゃあカラオケに行きましょう。

 久し振りに良ちゃんの歌声を聞きたいの」




 遥かなる大空 自由に翼を羽ばたかせる


 Like the hawk.


 見果てぬ地平線目指して速度を上げて

 壊れそうなスピードに身を任せ 乱気流だってぶっちぎって

 飛び込め 最高の未来に


 Beyond the hawk.


 勇気と希望があるのなら


 Bravely hawk...




 点数:87点



 良二くんがブスッとしている。思ったよりも点数が伸びなかったからだろう。その様子が可愛らしくて思わず笑ってしまう。

 良二くんはその様子が気に入らなかったのか、不機嫌そうに眉をしかめた。


 今いるのはショッピングセンター二階にあるカラオケ店。そのVIPルームだ。一度剣聖生徒会の皆で来たからか、何も言わなくても自動的にこの部屋に通された。私としては狭い部屋で二人きりの方が嬉しかったのに……

 広くて設備は豪華。ソファーだって気持ちがいいし、音響も最高だ。しかし採点は甘くない。


「ディバイン・ギア・ソルジャー ホークの主題歌『Beyond the hawk』。

 タイミング的には最高よね」


 なんて言ったって、本人と出会って、DGSとして戦ったのだ。これ以上ないだろう。


「元々あんまり好きというわけでもなかったんだけど、シルエット・ホークとの決着の時に流れたのが最高で、良く聞くようになったんだよな」


 点数が低いのはあまり歌い慣れていなかったからだろう。


「良かったわよね……あのシーン……」


 元々私は見ていなかったけれど、参考のために最近見始めた。意外とドラマが深くて侮れない。


「ちなみに、この主題歌の歌詞は鳳駆さんが監修しているそうよ。

 ギア・アイズのテーマソングを作る際は良ちゃんも携わってみたらどうかしら」

「いや、それはちょっと……でもなかなか面白そうだな……」


 悩む良二くんを置いておいて、次は私の番だ。




 伸ばした手 搦めて 抱きしめて

 貴方の光 離さないで


 宵闇の草原に私は一人 行く先も見えずに当てなく彷徨う

 冷たい暗闇に手を伸ばし 温かさを求めて泣きながら歩いた

 ずっと一人で孤独で これからもそうなんだ 闇の中ずっと一人だ


 薄暗い闇の中微かな光 暖かい灯火

 夢中になって追う 涙に濡れて

 伸ばした手に貴方が触れた 伸ばした手に私が触れた


 宵闇の草原に私と貴方 二人が光を導いて

 若草の草原に私と貴方 光が二人を導いて


 一つになった 強く輝いて

 伸ばした手 搦めて 抱きしめて

 貴方の光 離さないで




 点数:91点



 歌い終わって少しすると、良二くんがぱちぱちと手を叩いてくれた。

 その表情は複雑そうだけれど、歌っている最中ずっと見つめていたのだ。今更取り繕っても遅い。


 映画『君の瞳の灯りに恋して』の主題歌『見えない光』は彼に好評のようだ。


「今回の『あの夢』もそうだけど、あの監督は構成が上手いよな。あらすじと主題歌で9割ネタバレしてるのに全く気が付かなかった」


『君の瞳の灯りに恋して』は去年大ヒットしたアニメ映画だ。

 去年の五月ごろ、人気が落ち着き始めた辺りに良二くんと一緒に見に行った。二人きりではなかったけれど。あの時は結局手を握ることはできなかった。もう一度観たかったけれど、誘うこともできなかった。

 少しだけ成長したと思う。


「ふふ。一曲目は私の勝利ね。文句はないでしょう?」

「……映画を思い出したよ」


 良二くんは目を逸らすと、素直に気持ちを答えてくれた。


「先週リバイバル上映してたらしいな」

「ええ。せっかくだし、皆で見に行きたかったわね」

「……そうだな」


 良二くんは口を開きかけたが、一度閉じて違う言葉を口にした。


「夏休みにホークの完結編をやるはずだ。

 鳳駆さんも誘って見に行こうぜ」

「そうね。皆で、一緒に。絶対に楽しいわ」





 僕に教えて君のココロ

 Hello your world...


 数字羅列化した僕のセカイ 不純物な君のショウタイ

 二進数だってハカレナイ 複雑怪奇な君はコタエナイ

 解らないよ君のソンザイ プログラムだってデキヤシナイ


 メソッドを用意して引数をそろえて 君の答えを計測する

 何でそうなるのさ いつだってその挙動は不審だらけだ

 わからないわからない

 君が見るセカイわからない


 君が手を伸ばせば新しい数式が生まれるよ

 物理法則だって自由自在さ

 聖剣片手に君は空だって切り裂いて セカイの姿変えていく


 Hello your world!


 計測させてよ! 君のセカイ


 Hello your world!


 理解させてよ! 君のセカイ


 Hello your world!


 応援するから、全力で! 一緒にセカイを造りだそう!


 だから僕に 君のセカイ教えて



 Hello my new world...




 点数:90点




「こういう曲も歌うのね」


 今流行の機械音声を使ったテクノポップの『Hello my world!』だ。良二くんは何時も熱いアニソンばかりなのでちょっと意外だ。

 機械音声特有の、早口言葉のようなラップ調を見事に歌い切った。流石なんでもそつなくこなす秀才だ。


「最近研究室でよく流れてたからなぁ。ちょっと歌ってみたかった」

「そう言えば何度も流れていたわね」


 聖研究室では、作業中にアイズくんが音楽をかけてくれることがある。今回は私もそれなりに作業を手伝ったけれど、この曲は何度か耳にした。私でも覚えているくらいなので、長く研究室にいた良二くんの耳にはこびり付いていることだろう。


「ねぇ良ちゃん。この曲の作詞作曲は誰だか知っているのかしら?」

「いいや?そう言うのは気にしないからなぁ」

「そう。そうよね。

 I-Aiと書いて、アイズと読むそうよ」

「…………グウゼンッテ アルモノ ダネ」


 凄い勢いで目が泳いでいる。

 きっと歌詞に書かれている『君』が誰なのか分かったのだろう。


「ふふ。それじゃあ次は私の番ね。

 私も知り合いの曲にするわ」




 烈火のごとく燃え尽きて


 冷たかったあの日々 つまらなかったあの時

 色のない音のない心ない熱のない

 恋なんて知らない 愛なんて気づかない

 青く冷たいHeart 誰にも触れさせない


 スクリーン越しにしか知らない 凍てつく心焼き尽くすBurning!


 貴方と出会って火種が生まれた

 まさにSpark! 直流電流弾けてHeart火を灯すBurn the Red!

 貴方を知るたび燃え上がる 貴方を考えるたび燃え盛る

 まさに烈火業火 灼熱の恋弾けて 触れたもの焼き尽くすLove!

 貴方を想うたび火が灯る 貴方に触れるたび熱が上がる

 この手に触れて熱を感じて

 灰になってさらに燃えて

 共に塵になるまで 共に同じ火となるまで

 愛し合いましょう


 烈火のごとく燃え尽きて




 点数:98点




 私は喉を震わせシャウトする。この曲には魂を直接震わせるような、情熱の籠った叫びにも似た歌声こそがふさわしい。

『この恋は烈火のごとく燃え尽きて』

 最近ヒットチャートにもランクインしている曲だ。


 薄っすらとかいた汗を拭いながら良二くんに微笑みかけると、ようやく反応を取り戻し拍手をくれる。

 先ほどとは違い爽やかな顔をしている。


「作詞作曲は愛韻くん、歌っているのは音彩ちゃんね。

 何時もは音彩ちゃんが作詞するんだけれど、今回は愛韻くんが知り合いにインスピレーションを受けて作詞したらしいわ」


 情熱的な恋の歌だ。きっとその知り合いも燃えるような恋をしているのだろう。思い当たる人物がいないけれど、私の知り合いなのだろうか。


「今度新入生の前で歓迎ライブをするけれど、二人がうちの生徒というのは内緒だからきっと驚くわね」


 サプライズだから在学生にも口外禁止ね、人差し指を立ててウィンクする。


「流石情報担当と広報担当。歌も作れるのか。音楽や歌声にもDAは使ってるのかな?」

「剣聖生徒会の行動の一環じゃないから知らないわ。歓迎ライブでは使うけれど」

「麗は歌わないのか?」

「歌うわけないでしょう。本人がいるんだもの。

 ……それとも良ちゃんが聞きたいのかしら」

「麗がステージで歌うのは華やかでいいと思うんだけどな」


 華やかと言われるのは悪い気はしないけれど、私としては良二くん自身の希望を聞きたい。そう思い口を開こうとすると


「でも、麗の歌声を独り占めするのもいい」


 良二くんのことだ。私が望む言葉を察して、色を付けて答えてくれたのだろう。きっとそうだ。けれど――


「ふふ。それじゃあ今日は、良ちゃんのためだけに一杯歌ってあげるわね。

 他の人に聞かせられないくらい心を込めて歌うから、一音たりとも聞き逃しちゃ駄目よ?」



 私たちの買い物はますます盛り上がっていく。




 See and Song. ... and Feel. - 了

お読み頂きありがとうございます。


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