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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
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ep92 勇者vs魔人形集団

 丸腰で構えるユイ。


 キースは、彼女の背中から、つい先程、千頭の魔犬達を目の当たりにした時を凌ぐ緊迫感を感じ取る。

「...あ、あの、ユイリスさん」


「なに?」

 振り向かずに返事をするユイ。


「だ、大丈夫...なんですか?なんかさっきよりも、その...」


「大丈夫よ。キース君は絶対に私から離れないで。いい?」


「あの、さっきの剣は?」


「あれはもう使えないの。だから素手で戦うしかない。でも大丈夫。貴方の事は必ず守るわ」

 ユイはキースを安心させるように軽く振り向いて微笑んだ。


 距離を置いて睨み合うユイと魔人形ども。

 (あや)しい静けさが漂う。

 キースはゴクっと息を飲む。

 夜風が彼らの間をビューッと吹き抜けた時、三体の魔人形が同時に、ユイへ飛びかかった!


 斧を持った魔人形が上からブンと斬りつける!

 ユイは身体を反転ヒラリとかわす!

 その刹那、側面から彼女の背中に向かい剣の魔人形がビュッと斬りつける!

 ユイはひゅんっと跳んでかわしながら弧を描くように回転し、斧の魔人形の頭蓋に強烈な回し蹴りをぶち込む!


 ガンッ!!


 斧の魔人形はぐにゃりと首をひしゃげ、戦線離脱する勢いで吹っ飛んだ!

 着地したユイは、間髪入れず次撃に移らせる間もなく、剣の魔人形の胴に腹を突き破らんばかりの蹴りをズドン!とぶち込む!

 剣の魔人形は武器を落として、同じく戦線離脱の勢いで吹っ飛んだ!


 危機はまだ終わらない。


 今度は槍の魔人形がユイの胴体目掛け串刺しにせんと突きを入れる!

 ところが、先端が体に届く手前でユイは槍を下から蹴り上げバキンと破壊した!

 転瞬、ユイはひとっ飛び間合いを詰め、槍の魔人形に飛び膝蹴り一閃!


 ガツンッ!


 前の二体同様に、槍の魔人形は吹っ飛んだ!


「オイ......オイオイオイ!一瞬で三体もやられちまったじゃねーか!?大丈夫かよオイ!?」

 ゲアージはマイルスに向かい怒りまじりに騒ぎ立てる。


 マイルスは至って冷静に答えた。

「まったく問題ありませんよゲアージさん。だから落ち着いてください。それに相手は勇者様ですからね。あれぐらいは当然でしょう」


 ユイは敵の落とした剣を拾うと、剣尖をマイルスとゲアージに向けて言い放つ。

「もうすぐ貴方達の番よ。覚悟しなさい!」


「チッ!調子に乗りやがってクソオンナぁ」

「勇者様。気が早いですね。彼らはまだ終わっていませんよ?」


「残りの七体もさっさと片付けて......ん?」


 吹っ飛ばされて地に伏せた三体の魔人形。

 と思いきや、者どもはむくりと起き上がり、再びぬらりと近づいて来た。

 その内の一体は、首をひしゃげたままのおぞましい姿である。


「......これは?魔人形って......」


「まだ気づきませんか?勇者様。......これは人間の屍体を使っているんですよ」


「!!」


「わかりやすく言えばゾンビみたいなものですね。といっても、下品なゾンビなぞとは違いますけどね」


「......完全に禁忌の類ね。そんなの魔導ではない!忌むべき外法だわ!」

 勇者は炎のように目を燃え上がらせた。


「チッ!勇者の正義の演説なんか聞きたかねーわ!」

 ゲアージが憎々しく口を挟む。

「おれは債務者のゴミどもを追い込む。搾り取る。

 だが搾り取れなくなった奴らは生かしとく価値はねえ。

 でもよ?そいつらブッ殺して魔人形にできりゃあこんな最高な事ねーよなぁ!?

 究極のリサイクル、究極のサスティナブルって訳だ!

 これも資源活用なんだよ!エコってやつか?ギャッハッハ!」


「この外道め......!!」

 正義の怒りに打ち震えるユイ。


 ところが、怒れる勇者を前に、目の前の事にはもう興味が無くなったと言わんばかりにマイルスがクルっときびすを返し、化け物に(またが)った。

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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