ep82 予想外の来客
「えっと......どちら様ですか?」
「あ、あの......ぼ、僕は、キース・スチュアートと申します。アミーナの友人で...」
「キース!?アミのビジネスパートナーの!?」
「は、はい......」
「やあやあどうもスヤザキさん」
キースの後ろから巧妙な笑みを浮かべた男が前に出てきた。
「フロワース警部!これは?」
「ボクがキースさんを保護したんですよ」
「ふ、フロワースさん......」
キースはびくつきながら不安そうにフロワースを見る。
「どうですか?スヤザキさん。これでボクを信用する気になりました?」
フロワースはニコッと笑った。
ーーーーーー
コーロもユイも、フロワースの事を信用しきってはいなかった。
しかし、彼がキースを保護した事に加え、もはや状況が状況だけに背に腹はかえられなかった。
協力を仰ぐためにも、コーロはフロワースに一通りを説明した。ユイが勇者だということ以外は...。(それもやがてバレるだろうが現時点で言うべきでないと彼は判断した)
「...!!アミが拉致されたんですか!!?そ、そんな......!!」
キースはあまりの事実に一気に顔色を失ってうなだれた。
「拉致、ですか。ふむ......しかし、少し不自然ですねぇ」
フロワースは冷静に反応する。
「......というと?」
「なぜ、ブラックキャットがそこまで貴方達を恐れるのでしょう?いくらスヤザキさんが言うようにユイリスさんが高名な剣士だとしても、そのようなやり方をするでしょうかね?」
フロワースは疑わしげな視線を二人に向ける。
コーロとユイは一瞬視線を交わすと、ユイが答える。
「奴らの真意はわかりません。それに、奴の魔法を見破ったコーロの能力にも脅威を感じているのかもしれません」
「......ふむ。まあいいでしょう。こちらとしては、ボクの捜査への協力をしていただけるのであれば、ボクも協力しますよ」
「ありがとうございます」
「で、何か手立てを考えているんですか?すでにお分かりのとおり、ボクは独自で動いています。組織を動かすのは難しいですよ?」
「それはわかっています。とりあえず、今はフロワース警部の協力を確約できれば十分です」
「なるほど」
「それと......」
コーロは何かを言いかけると、ショックに打ちのめされたキースに視線を移す。
「......え?あ、あの...?」
「キース君は、ブラックファイナンスに嵌められたということは認識しているよね?」
「は、はい......」
キースは青ざめたまま答えた。
「あれはおそらく、ブラックキャットの偽造魔法による契約書を使った悪質な詐欺だ」
「ぎ、偽造魔法...ですか?」
「ああ。キース君がサインした段階ではどれもまともな契約書だっただろ?」
「そ、そうなんですが...」
「あれは、ブラックキャットの魔法によるトリックなんだ」
「えっ!?そ、そんな...!!」
「ほう。よく見破りましたね?」
足を組んで顎に手を当てたフロワースが興味深く反応する。
コーロはフロワースを一瞥してから再びキースに向かい口を開く。
「それでなんだけど......キース君はどうしたい?」
「...ど、どうしたいって?」
「このまま泣き寝入るのか、それとも取られた金を取り返すか」
「...と、取り返す!?そ、それは、取り返せるなら、取り返したいですけど......でも、現実には......」
「......なあ、キース君にとってアミーナはどんな存在なんだ?」
「...アミ、ですか?彼女は、僕にとって、かけがえのない存在です......」
「じゃあアミーナは絶対に助け出さないといけないよな」
「は、はい。もちろんです」
「だったらアミーナのお金も取り返さないとな」
「えっ?」
「キース君。俺はアミーナを救いたい。だからそのために、キース君の力も貸してくれないか?」
「ぼ、僕の力?」
「本当の意味でアミーナを救うためには、キース君の力が必要だ」
コーロは確固たる信念の表情でキースを見た。
すると、コーロの真意を汲み取ったユイがキースに語りかける。
「アミーナは傷ついているわ。一番の悪はブラックファイナンス、でも、貴方が相談してくれなかった事をアミーナはすごく気にしていたわ。なぜなら、アミーナは貴方を信頼していたから」
「......!ぼ、僕は...アミに...なんて謝れば......ぜ、全部、僕のせいなんだ......」
キースは涙を流してうつむいた。
ユイはキースの手前にすっと躍り出ると、両の手で彼の肩をぐっと押さえて、鋭くも温かい、勇者らしい力強い声をかける。
「貴方がアミーナを大切に思うのなら、選択肢は一つしかない。...彼女を救うために戦うの!大丈夫、心配しないで。私達が必ず何とかしてみせるから!」
「ユ、ユイリスさん......」
キースの潤んだ瞳にユイの凛々しくも美しい勇者の顔が映る。
コーロは二人を見て軽く微笑むと、再び彼に問う。
「キース君の力を、貸してくれるか?」
「......は、はい。僕なんかが、少しでも役に立てるなら......。ぼ、僕も、僕も、アミを救いたい...!」
「それを聞きたかったんだ。これでブラックファイナンスから二人を助けられるな」
コーロはさりげなく言った。
「...えっ?」
ユイは信頼の眼差しでコーロを見つめる。
ーーーやっぱりコーロ、あなたは......。あの時、私、あなたに出会えて本当に良かったーーー
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