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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
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ep73 依頼主

「スチュアートさん」

 コーロは夫人の名を呼んで、部屋の端から彼女と警部の元へと近づいていく。


「あの?」

 夫人はきょとんとしてコーロを見上げた。


 コーロはアミーナの隣にすっと座ると、思慮深く丁寧に切り出す。

「その、大変申し上げにくいんですが、キースさんは、極めて悪質な詐欺に遭ったと思われます。その証拠となるのが、アミーナが見た書類なんです」


「キースが詐欺に??」


 コーロは横のアミーナと視線を交わす。

 アミーナは無言で頷く。

 コーロは手に持った封筒から書類を取り出し、スチュアート夫人に手渡した。

 そしてスチュアート夫人に書類を見てもらいながら、ひと通りを説明した。


 すべてを理解した夫人は、呻き声を上げながらうなだれた。

「ああっ!なんてことなの!キース!キース...!」


「おばさん!」

 アミーナは立ち上がって夫人に歩み寄り、かがんで彼女の手を握った。


「アミーナちゃん!ごめんなさいね...!ごめんなさいね...!キースが貴女を巻き込んでしまったばかりに...貴女まで...!」


「おばさん!おばさん!」

 アミーナは、嘆き喘ぐ夫人を抱擁した。


 フロワース警部は、一連の様子を沈黙のまま冷然と眺めていた。

 ずっと何かを思案しているようであり、何も考えていないようでもある。

 だが、ふいにスッと立ち上がり、薄く微笑して口を開く。

「スチュアート夫人。時間も遅いです。本日はもう戻りましょう。ボクが家までお送りしますから」


 若干の落ち着きを取り戻した夫人は、警部を見上げて頷く。

「......ええ。そうですね」


「ご心配なのはよくわかります。ですが、キースさんのことはどうかボクにお任せください」


「は、はい。よろしくお願いします。フロワース警部」

 夫人は立ち上がると、フロワースに伴われ部屋の入口まで移動した。

「みなさん。夜分遅くにご迷惑をおかけいたしました。それに、アミーナちゃんには、わたくし、何て言ったらいいのか......」


「おばさんが謝ることちゃうよ!悪いんは、キースを騙した連中なんや!だから、おばさんは気にせんで!」


「まあ、とにかく、今日は引き上げます。本日は捜査にご協力いただきましてありがとうございます。それでは、夜分遅く失礼しました」

 フロワースは皆に向かい丁寧に別れの挨拶をした。


 彼はドアを開くと、紳士らしくスチュアート夫人を先に退室させる。

 続いて自らも立ち去ろうとしたその時、ふいに「あっ」と声を発して、コーロ達の方へ振り返った。

「そうだそうだ。えーと、スヤザキさんとユイリスさん。いつもありがとうございます」


「え?」

 二人は何のことかわからない。


「アレですよアレ。野良犬駆除です」


「それが何ですか?」

 コーロは再度疑問の声を上げる。


「あ、そうですよね。アレ、依頼主は匿名にしていたんでしたね。そう、野良犬駆除の依頼、全部ボクが出していたものなんですよ」

 フロワースはニッコリと笑った。


「えっ??」


「では、本日はお邪魔しました。それでは失礼します。おやすみなさい」

 フロワースは笑顔でそう言い去って、スチュアート夫人を伴い部屋から出て行った。


 コーロ達の前には、閉じられたドアが無言で佇む。

 ......。


「コーロ、これはどういうことなのかしらね」

 ユイリスは疑念を表した。


 コーロは口を結んだまま腕を組んで考える。

 アミーナは、どうしたの?と二人をきょろきょろ見る。

 ミッチーはふわ~っとコーロ達の近くに寄って来た。


 シーン。


 水を打ったような静寂が室内を包む。

 そんな時......


 タラタラタラタラタン


「ん?何の音だ?」

「なに?」

「なんや?」

「何でしょう?」


 突如、謎の音が部屋に響いた。

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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