ep72 来訪者
一同は視線を交わし合うと、もっとも入口に近かったコーロが入口に出ていき、ガチャリとドアを開けた。
すると、ウェーブのかかった栗色の長髪の優しい目尻をした美しい婦人が、やや疲れた表情で立っていた。
アミーナが婦人を目にした途端叫ぶ。
「キースのおばさん!?」
「え!?キース君のお母さん!?」
驚くコーロ。
婦人はアミーナを見て口を開いた。
「アミーナちゃん。押しかけてしまってごめんなさいね。ええと...こちらの方とそちらの方は、アミーナちゃんのご友人の方?」
「あ、ええ。はい。俺はスヤザキと申します」
コーロは改まって挨拶をした。
「私はユイリスです」
ユイはすっくと立ち上がって挨拶した。
コーロとユイとアミーナは、突然の婦人の来訪に面を食らった。
だが、彼らを驚かせる来訪者は婦人だけではなかった。
「スチュアート夫人。ボクもよろしいですかね?」
奥の方から、もう一人、若い男の声が部屋に聞こえた。
「ああ、これは申し訳ございません。警部」
「警部?」
ユイとアミーナは顔を見合わせる。
夫人が横にそれると、男がスッと前に出てきてその姿を現した。
背丈はコーロより若干低いぐらい。
目と耳あたりまで伸びたウェーブのかかった水色の髪。
薄く微笑んだような目と口元。冷たく深いブルーの瞳。
黒いベストにグレーのワイシャツ、青いネクタイを閉めた細身の体。きめの細かい白い肌と小さい顔。
それは、おおよそ警部という言葉が似つかわしくない、どこか妖艶さを醸す美男子だった。
「どうも今晩は。夜分遅くの突然の訪問、失礼します。ボクはフロワースと申します。タペストリ警備局の警部です」
フロワースはニコっと笑ってうやうやしく挨拶をした。
コーロは彼をじっくりと見る。
「どうかなさいましたか?」
フロワースはコーロに向けて微笑みながら訊ねた。
「あ?ああ、いえ!」
スチュアート夫人とフロワース警部が入室すると、コーロは小机の書類を素早く回収して封筒にしまい、それを持って部屋の隅に移動。
夫人と警部は小机の二つの椅子にそれぞれ腰掛ける。
ユイとアミーナはベッドに座ったままで、コーロは部屋の隅で立っていた。
ミッチーはすでにベッドの端で何の変哲もない本としてそっと横たわっていた。
フロワース警部は、自身がキース失踪について訪れたことを簡素に説明すると、アミーナに視線を送り微笑みかける。
「貴女がアミーナさんですね?」
「あ、はい......」
ついさっきコーロの口から聞かされた事が気になり、アミーナは警戒しながら小さく答えた。
「ということは、貴女がキースさんのビジネスパートナーさんですね?」
「...はい」
「それで、貴女はキースさんが今どこにいるかご存知ですか?」
「それは、ウチも、わかりません......」
「それは困りましたねぇ。では、何かしら思い当たる場所とかもないですかね?」
「......わ、わかりません」
「そうですか。ところで...」
「?」
フロワースはコーロとユイに顔を向け、話を切り替える。
「ええと、スヤザキさんとユイリスさんは、キースさんとはどのようなご関係で?」
コーロが答える。
「俺とユイ...ユイリスは、キースくんとは全くの他人です。顔を見たこともありません」
「なるほど。ではアミーナさんとは?」
今度はユイが答える。
「アミーナは私達の大切な友人です。それでちょうど今、キースさんがいなくなった事について相談を受けていたんです」
「ユイおねーちゃん......」
アミーナはユイの美しい横顔にじっと視線を注いで呟いた。
コーロは、ユイとアミーナを見て軽く微笑むと、言葉を重ねる。
「そういう事なんです」
ここでスチュアート夫人が我慢しきれず割って入る。
「ねえアミーナちゃん?アミーナちゃんは何か知っているんじゃないの?」
「いや、ウチは......」
「アミーナちゃん、何か書類を見て飛び出して行ったけど、あれは何なの?ねえアミーナちゃん?」
「え、えっと、その......」
アミーナは言うべきかどうか判断しかねてあたふたする。
コーロは懸念を抱く。
ーーーマズイな。
このフロワース警部が信用できるかわからない以上、事情を説明するのはリスクがある。
でも、キース君の母親に嘘をついてしまうのは良くない。事態がややこしくなってしまう。
ここはーーー
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