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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
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ep56 黒猫調査、開始!

いよいよ本格的に黒猫調査に乗り出したコーロ。

ーーーーーー


 コーロはしばらく街をうろついてから、ごく平凡な喫茶店に入っていた。

 店内にはテーブル席とカウンター席があり、彼はカウンターの方へ腰掛けていた。


 注文した一杯の珈琲を啜りながら座っていると、ふと元の世界でのサラリーマン時代が思い浮かばれた。

 彼はそのまま思想に耽りそうになった。だが、すぐに本来の目的を思い出し、首を少し前に出して、カウンターの奥にいる人の良さそうな中年男の店主に声をかけた。


「あの、すいません」

「はい?」


「ちょっと聞きたいことがあるんですが」

「何でしょう?」


「破滅の黒猫って人についてなんですが」

「破滅の黒猫?その人がどうかしたんですかい?」


「...その人が今このキャロルのどこかにいるって聞いたんですが、もっと詳しい事を知りたくて」


「破滅の黒猫ねぇ?まあ、キャロルでそれこそ商売なんかやってりゃみんな知ってる人ですがねぇ。そのお方が今キャロルにいるって?それは初耳ですなぁ」


「そうなんですか?じゃあ詳しい事は何もわからないって事ですか」


「申し訳ないですが......あ、そういえば」

「?」


「最近なんですがねぇ...いや、半年ぐらい前からだったか?タペストリの金融界の間でよく噂されてる人がいてですねぇ。その人がブラックキャットって言うらしいんですが。黒猫様とは関係あるんでしょうかねえ?」


「ブラックキャット?」


「これがまた相当なやり手の貴族社長さんで、ここらで新規事業やっとる連中の多くはその人の会社から融資を受けてるらしいんです。

 ほら、普通は新規に事業を始めようとしても中々投資はしてもらえんでしょう?

 だけど、そのブラックキャットさんは融資という形で、分け隔てなく多くの人間に資金提供してチャンスを与えてるって話です。

 会社名は......ブラックファイナンス?だったかな?」


「ブラックキャット。確かに黒猫だけど......」


「まあ私が知ってる事はそれぐらいですよ。商売仲間の話を耳に挟んだ程度ですがね」


「いえいえ。ありがとうございました」

「お客様は、破滅の黒猫様に会いたいのですかい?」


「そういう訳でも...あるのかな?(アミーナは憧れって言ってたよな?)」


「いや~会うのは難しいでしょうねえ。何せ今生きているのかどうかすらわからないお方ですからねぇ。まさに伝説の人ですから。お会いできるのであれば私もお目にかかりたいぐらいですよ」


「はあ、そうですか......」


 店主と話し終えると、コーロはしばらく考えながら、ふうっと大きく息を吐いた。

 そして勘定を済ませ、店を後にした。


 それからも何軒かの店に入り、黒猫について尋ねて回った。


 コーロは道を歩きながらため息混じりに呟いた。

「これといった収穫なし......なんだか途方がなさすぎてヤバい......」


 その言葉に、彼の懐に潜むミッチーが顔だけひょこっと出して反応する。

「ドンマイですよコーロ様!そもそもそんな異名だけで、ある人について調べるなんて、シャーロックホームズでも銀田一でもソナンでも無理ですよ」


「その方々ならやるんじゃね?」


「まあ、そもそもコーロ様はサラリーマンとしても二流でしたからね。サラリーマン銀太郎、否、銅太郎ぐらいです。」


「ミッチー。泣きっ面に蜂って言葉知ってるか?おまえは蜂なのか?」


「この場合は、水に落ちた犬は打て、の方が相応しいでしょう」


「おまえ無駄にボキャブラリー豊富だよな!てゆーかやっぱりわかってて言ってるのか!」


「ワタシはコーロ様をコーチングしているのです!だいたいまだ初日ですよ?そんなどこぞのロボットのパイロットみたいにすぐに落ち込まないでください!これからですよこれから!」


「ま、まあそうだよな。気合い入れ直さないと!......あと、どこぞのロボットのパイロットに謝れよ、おまえ」


「はい?」


 コーロは集合場所の時計台に引き返した。

 彼が指定の場所に着いた時には、すでにユイが彼の到着を待っていた。


「ユイ!すでに戻ってたんだな」

「コーロはどうだった?タペストリの街は?」


「なんというか、色々と充実した街だよな」

「それで、何かわかったことはある?」


「あるというかないというか...最近、タペストリの金融界でブラックキャットって人が有名らしい。黒猫と関係あるのかないのか」


「ブラックキャット?確かに黒猫と言えば黒猫だけど...。それとも貴族の資本家なのかしらね?」


「うーん。それ以上の事は何もわからなくてさ」


 ここで隙アリと言わんばかりにミッチーがコーロの懐から声を上げる。

「これがヘタレコーロ様の限界です!ユイ様!勘弁してあげてください!」


「ちょっと待ってくれミッチー。ヘタレってなんだヘタレって」


「じゃあ私が勘弁してあげる」

「え?ユイ?」


「なんでもないわ。さあ、残りの時間でやれるだけやってみましょう!」


「あ、ああ、そうだな!(ユイ、さっきより若干雰囲気が柔らかくなったような...?)」


 それから二人(+一冊)はタペストリの街を駆け回ってさらなる黒猫調査を敢行した。

 途中、食事を取ったりしながらも、暗くなるまでできる限りの探索をした。


 夜になると、調査を切り上げて、彼らは東の街の宿屋へ戻った。

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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