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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
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ep44 破滅の黒猫

アミーナはコーロに取引を持ち掛ける。その取引とは...?

ーーーーーー

 

 アミーナの精霊魔法の力のおかげで、馬車はかなりの勢いで駆けていた。

 夜には確実にキャロルに着くであろう速度で。


 昼過ぎ、休憩のため、林の影に馬車は一時停車した。

 木陰の下、木や草の椅子に、一行はしばしの憩いを楽しんだ。


 昨晩の事件のおかげで、コーロ達と連中はすっかり打ち解けていた。

 だが、コーロはまだ慣れない旅のせいもあり、少し疲れていたので、連中とは離れて休んでいた。

 ユイも、コーロを気遣いつつ隣で一緒に休んでいた。

 ミッチーは気ままに二人の近くをフワフワ漂っていた。


 そこにアミーナがそそくさと歩み寄って来て、愛嬌良く三人に話しかける。

「おにーさん!おねーさん!それと本のおねーさん!」


「なんだ?」

「なに?」

「何ですか?」


「その、導きの欠片?なんやけど」

「おっ、返してくれる気になったのか?」

「うん。ただ、条件があんねん」

「条件?お金ではなく?」


「うん。あんな?ウチ、実はずっと探してる人がおんねん」

「はあ」


「ほんでな?キャロルでその人の事を調べて欲しいねん。というのも、その人、今キャロルにおるらしいんや」


「誰なんだ?それは」


「破滅の黒猫ってゆう人や」

「破滅の黒猫?」


「破滅の黒猫......魔導を志す者にとっては有名な名前ね」


「ユイは知ってるのか?」


「その昔、魔法の歴史を数百年は早めたとも言われる天才魔導師がいて、その魔導師の異名こそが破滅の黒猫よ。

 何でもたった一人で万の軍勢を沈めたという話だわ。それでそんな異名がついたという訳ね。


 そして、現代魔法の礎はその人が築いたと言っても過言ではないの。

 今世の中にある様々な魔動設備の多くも破滅の黒猫が考案、開発し、一般的に利用されるに至ったものも多いの」


「そ、そんな凄い人なのか......あれ?まだ生きてる人なのか?」

「それは私にはわからないけれど」


「生きとるよ!ほんでな!破滅の黒猫様は魔法だけやないねん!」


 アミーナは急に興奮したように、大きい目をキラキラと輝かせて語り出した。


「あんな?破滅の黒猫様はな?魔法だけやないねん!

 ある時から、戦いの場からは退いてビジネスの世界に転身するんやけど、そっからの活躍がホンマごっついねん!

 今世の中にある郵便などの通信事業、くわえて銀行なんかも黒猫様がその基礎を作ったんやで?

 それでごっつ儲けた金で政治を動かしてキャロル国内の道路整備などの土木事業を一挙に推し進めて、現在の経済大国キャロルの近代化にも大きく貢献したんやで?ホンマすごいやろ!?」


「え、なにその渋沢栄一と田中角栄を足して二で割ったような人......」


「さらにはその後、異世界に渡って運輸業を起こして大成功させたなんて伝説もあんねん!」


「異世界に渡った黒猫様が運輸業?それってまさかクロネコヤマ...」


「な!?スんゴイやろ!?」

「あ、ああ。その人が凄い人だってのはわかったよ」

「ウチの憧れやねん!」


「それで、アミーナはその人について調べていて私達にも協力して欲しいと、そういうことなのかしら?」


「せや!ウチも調べとるんやけど、わかったんは今キャロルにおるって事ぐらいやねんな。

 で、昨日のおにーさんとおねーさん見て思ってん。この二人ただ者やない!てな!しかもキャロルに行くんやろ?

 せやったらこの二人に協力してもろうたら、なんやもっと色んな事わかるよーな気いしてな!」


「じゃあキャロルに着いたら俺達でその破滅の黒猫様について調べて、その情報と引き換えに導きの欠片を渡してくれるってことか?」


「正解や!」


 コーロとユイとミッチーは、向かい合って検討する。


「どうする?」

「どうするって言っても、他にも手があるのかしら?」


「決して無理難題という訳でもないでしょう。コーロ様。ユイ様。ここはアミーナさんの提案に乗ってみても良いのでは?」


「わかった。じゃあそうするか...(条件付きで返してもらうってのは気に食わんが...)」


 コーロはアミーナの提示した条件を飲み、取引が成立した。


「ほな、契約成立やな!ニャハハ!」


 導きの欠片を巡ったコーロ達とアミーナの一件は、とりあえず一定の方法性を見い出して落着した。

 やげてしばしの休憩も終わり、再び馬車は出発した。

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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