ep43 取り立て屋ゲアージ
二度の脅威を退け、順調に西のキャロルへ足を進める一行。
......
夜が明ける。
快活に太陽が辺りを照らす。
昨日に続いての晴天。
早朝早く、鳥の囀りが歌い始める頃、彼らは出発した。
「お、おい!俺達このまんまなのか!?」
「縄解いていってくれよ!」
両手両足を縛られながら木の周りに寄せ集められた盗賊どもは騒いだ。
駆け出した馬車の中から、アミーナが彼らに向かい一本のナイフを投げ捨てた。
「それでなんとかしいや!」
馬車は目的地に向かい足早に駆けていった。
ほどなくして馬車の姿は見えなくなった。
「まったくとんでもない猫娘だぜ」
「完全にババ掴んじまったな」
「だけどよ。もとはと言えばよ。ブラックファイナンスのせいなんだよな」
「ああそうだ。俺達がこんな盗賊風情に成り下がっちまったのは」
「かっぱらった武器で襲って金をかっぱらって、挙句の果てには痛い目見てこの様だ。落ちるとこまで落ちたもんだよ」
「だが結局これも、もとを正せばブラックファイナンスのせいなんだ」
「そうだ!ちくしょう!アイツらから金なんか借りなきゃ良かった!」
「ホントだぜ!」
「ブラックファイナンスめ!」
「おいおい?ブラックファイナンスがなんだって?ああ?」
「..!お、おまえは!?」
突然、盗賊どもの前に、白いスーツに黒いYシャツをはだけさせた、いかにもガラの悪そうなチンピラ風の男が現れた。
背は高くもなく低くもない。
オールバックの金髪、眉なし、あからさまに悪い目付き。
口には斜めに煙草を咥え、ポケットに手を突っ込んでガニ股でゆっくりと近づいて来た。
「誰がおまえだ?ああ?ゴミのクズどもが何偉そうにイキってんだ?ああ?借りたもん返さねえゴミが悪いんだろーがゴミが!」
「ゲ、ゲアージさん!」
「こんなところまで...!」
「こんなところまでじゃねーよゴミが!オメーらが返すもん返さねーで逃げっからだろゴミが!」
「い、いや、でもあんな利息じゃ返せないですよ!」
「それでもいいからって借りたのはテメーらだろーが?ゴミが!」
「で、でもそれは......」
「で、金は返せんのか?こちとら黙って返してくれりゃーなんも文句はねーよ?」
盗賊どもは下を向いて沈黙した。
「ああ!?結局ねーのか!?ああ!?」
「い、いや、もう少しだけ待ってくれ!あと少し待ってくれれば......!」
「返せるってか?そのセリフ何度聞かされたかねえ?」
「今度こそ...あと、もう少しだけ待ってくれ!」
「オーケーオーケー!わかったわかった」
「じゃ、じゃあ、待ってもらえる...」
「ほんじゃあおまえら処刑な」
「え?」
男は懐から小さな銃を出すと、盗賊どもの一人の頭部に目がけて何の躊躇もなく引き金を引いた。
バーン!
「っっっ!!!」
枝葉の影からバサバサッ!と鳥達が一斉に飛び立った。
弾丸は後ろの木をも優に貫き、空いた穴から向こうの草原が覗いた。
小さい銃身に見合わない残虐な威力。
目の前の血の惨劇に盗賊どもは半狂乱に震え上がった!
「ひ、ひいぃぃぃ!!」
「こ、殺される......!!」
「助けてくれ!助けてくれ!」
男は実につまらなそうに吐き棄てる。
「借りたもん返さねーオメーらが悪いんだぞ?ったくこんなとこまで駆り出されたオレの身にもなってみろよ?あーめんどくせえゴミが!!」
バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!
......
澄み渡る空の下、乾いた銃声の音が鳴り響く。
断末魔の叫び声と共に。......。
「この魔銃、悪かねーな。あーでもこっからまたキャロルに戻んのかよ?マジめんどくせえ。ったくブラックキャット様も人使い荒いぜまったく」
この男は何者か。
ブラックファイナンス
取り立て屋、ゲアージである。
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