ep32 妖精主の最終手段
何かが、起ころうとしている...?
「なんだ?」
「どうしたんだ?」
「何かが、集まって来ている?」
「おい!魔物だぞ!?」
「こっちもだ!」
「あっちにもいるぞ!」
なんと、レオルドの叫びを合図に、森中の魔物達がゾロゾロと湖の周りに集まって来たのである。
だが、討伐軍に対し攻撃を加える気配は無い。
「何をするつもりだ?」とエヴァンス。
「奴ら、一体どうするつもり...あ、あれは!?」
マイルスは目を見開いた。
突然、死に際で地に伏せていたはずのエルフォレスの躰がむくりと起き上がり、そのまま宙にフワ~っと浮上した。
同時に、今度はレオルドの全身から赤い魔力の光が放射し始める!
「なんだ!?」
「これは......膨大な魔力が!?」
レオルドの全身から迸る赤い魔力は、その光を増幅し、彼の姿は赤い光の波に埋もれた!
やがて赤光が収縮すると、光の影から、元のレオルドの姿ではない、人型の者の姿が現れた。
それは...屈強な赤い魔人の姿だった!
身長は三メートルはあろうか。
炎のような赤みの肌に盛り上がった筋肉で覆われた肉体は、修羅の激闘を想像させる。
熊のような姿の時と同様に、頭からは一本のツノが生えている。
首から上に見えるのは、豪快に暴れ闘う者の猛々しい顔。
コーロは驚愕する。
「レ、レオルドさん!?」
「...おっと、そうか!兄ちゃんにこの事は話していなかったな。これがオレの本来の姿だ。ガッハッハ!」
エヴァンスもその姿には驚きを隠せない。
「貴様!魔人だったのか!?」
レオルドはエルフォレスの姿を見て、何かを決心して号令する。
「御託を並べてる場合じゃねえ。やるぞ!エルフォレス!」
魔人の姿となったレオルドは、再び全身から赤い魔力の光を放ち始めた!
それは、先ほどの彼のものとは比べ物にならないぐらいの膨大なエレルギーを秘めた光だった!
呼応するように、エルフォレスの全身がぼんやりと白い光を放ち始めた。
同時に、他の全ての森の魔物達も同様にぼんやりと白い光を放ち始めた。
「こ、これは!?」
「コーロ様!エルフォレス様とレオルド様は一体何を!?」
コーロとミッチーは、これから何が起ころうとしているのか皆目わからない。
「...妖精主様!?」
ユイリスも何が起ころうとしているのか全く見当がつかない。
エヴァンスもマイルスも討伐軍も皆、何が起ころうとしているのかまるで想像が及ばない。
エルフォレスは、コーロとミッチーの頭の中に直接語りかけた。
『スヤザキ様。ミッチー様。申し訳ありません。本当はこの戦いの後、すぐにでも貴方達にお力添えしたかったのですが。
状況が状況です。これから、わたくしが、森が、閉じてしまう事、どうぞお許しくださいませ。
ただ、それでもわたくしにできる事はあります。わたくしは貴方達の味方です。
そしてこの先、またこうして顔を合わせる事ができるかどうかはスヤザキ様、貴方次第です。そして、ミッ......いえ、トキワ様。貴女も......』
「エルフォレス様!?閉じるって、何ですか!?」
「...ト キ ワ?」
レオルドは、赤い魔力の光を放ちながら両の手を天に向かって高々と掲げた!
「おい!討伐軍ども!残念だがこの戦いはこれでお終いだ!」
レオルドは魔法を唱えた!
『フォースドシャットダウン(強制終了)』
森の大地が、突如として地殻変動が起こったかの如く唸りを上げて激しく揺れ出す!
ゴオンゴオンゴオンゴオン!!!
嵐のような風が吹き荒れる!
ブオオオォォォォォォォォ!!!
この世の終わりの大災害の如き中、白光を帯びた妖精主エルフォレスと森の魔物達は、湖の中へ、ブラックホールに吸い込まれるかのように、空間を歪めるように消えていく...!
周辺一帯は閃光に包まれ、そこにいた者達は皆、巨大な閃光の中に埋もれた!
その光は、空に向かって天に昇るかの如く弾けた!!
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