ep30 予想外の事態
戦闘の行方は...。
コーロはエルフォレスに向かって求める。
「あの、エルフォレス様。俺は一体どうすれば!?」
エルフォレスは考える。
ーーーどうすべきか。今のわたくしがすべき事、それはこの森と魔物達を守る事。それはあの人との約束でもある。
しかし今、目の前のこの状況で最も優先すべきは、スヤザキ様と勇者様をお護りすること!
あのお二人は世界にとって必要な存在!どちらが欠けてもいけない!|
今の状態のわたくしにできることは限られている。それならばーーー
「スヤザキ様。レオルドは大丈夫です。それに、彼の戦いに下手に手を出すと巻き込まれてしまいます。ですのでわたくし達は勇者様を援護します!
勇者様は敵ではありません!(スヤザキ様を護りながら勇者様を援護し、あの不気味な者を押さえる。三人がかりならば...!)」
ユイリスは相変わらず防戦一方だった。
ガキィィンッ!!
アレの激しい剣撃が勇者を襲う。
勇者は再び防御の構えのままザザーッと後ろに吹き飛ばされた!
「ま、まずいわ。このままでは...」
ユイリスが敗北を想像しかけた時、エルフォレスとコーロが彼女と敵の間に割って入った!
ユイリスを守るように、彼女を背にして二人が敵に向かって立ち塞がったのだ!
「妖精主様...!それに貴方も...!」
その様子をレオルドとの戦いの最中、エヴァンスは横目でチラっと確認した。
レオルドが叫ぶ。
「なんだてめえ!?どこ見てやがる!」
『今がチャンスだ!アレを退げろ!やるぞ!』
『承知!』
エヴァンスは防戦一方の体制から突如、攻撃魔法を唱える!
『エアロショック(疾風の衝撃)』
エヴァンスの掌からレオルドに向かい風の衝撃波が放たれた!
「なに!?」
レオルドは風の衝撃でブワァァンと後方に吹き飛ばされた!
だが、大したダメージはない。
二人の距離が再度開く。
レオルドはいきり立つ。
「おいてめえ!あの攻防の最中にさらっと魔法唱えんのは大したもんだが、なんだこの屁みてえな攻撃は!?」
「一旦離れてもらいたくってね」
エヴァンスが不敵に笑うと、森の影から数十人の兵士達がぞろぞろと現れる。
「あ、おい!エヴァンス様だぞ?」
「あれは守護獣!」
「あれは...妖精主じゃないのか!?」
「あの男は誰だ!?」
「後ろに勇者様もいるぞ!」
「ん?あの騎士?アレは誰だ!?」
一歩遅れて、副騎士長マイルスも現れた。(笛を懐にしまいながら...)
彼らの姿を目にしてユイリスが声を上げる。
「無事な者達もいたのね!それにマイルス殿も!」
レオルドは彼らを見て肩をそびやかす。
「チッ!さすがにいくらかは眠りから逃れやがったか!」
ここで突然、人ならざる者の妖気を醸す騎士の姿をしたアレが、その場から逃げるようにサァッと俊敏に森の影に飛び込んでいった。
面食らうエルフォレスとコーロ。
「え?」
「逃げた??」
次の瞬間だった。
誰も予想し得なかった事態が起こる。
その光景にレオルドは凍りついた。
理解し難い目の前の事象にコーロは声を失った。
兵士達も皆、ただその現実に棒のように固まった。
勇者が背後から、その剣でエルフォレスの体をザクッと貫いたのである!
白い衣が赤く滲む。
ズルっと剣が引き抜かれると、貫かれたエルフォレスの身体からドプッと血が溢れ出した。
エルフォレスは身体を震わせ、頭だけ後ろに振り向き、口から赤い液体を滴らせながら絞るような声を漏らす。
「ゆ、勇者様......?」
当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。
感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。
気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。




