ep20 作戦会議
「エルフォレス様。やはり南正面から来る可能性が高いのでしょうか?」
「すでにご説明申したとおり、地形的に、北側からは不可能、そして東西の山脈付近にはそれぞれ山を住処とする魔物もいます。
それは軍にとって非常に厄介でしょう。
そして、へンドリスク王国の軍は伝統的に正攻法を好み、それは彼らの強さでもありますから。しかし真の問題はやはり...」
「黒幕ですか...」
「わたくしを暗殺しようとした者とその黒幕の存在です。ですがこればかりはどうしようもありません。
わたくしの方でも......いや、そんなことよりも、我々も作戦通り本格的に準備に入りましょう」
「いよいよか......」
「コーロ様。大丈夫ですか?」
「大丈夫も何も...俺はこういうのは素人だし、作戦通りやるしかないよな。一応魔法も覚えたわけだし」
正直な所、コーロは未だにモヤモヤとした思いが晴れてはいなかった。
だが、自身でも不思議なぐらい現状を受け入れてもいた。
元の世界で手酷く裏切られ散々な思いをし、それから訳もわからず異世界転移して矢継ぎ早に今に至る訳である。
納得し難いのが普通であろう。
しかし、この世界で最初に出会った(ミッチー以外の)意思疎通できる相手が人間ではなく、神秘的な妖精主エルフォレスや守護獣レオルドだったのが、彼にとっては良かったのかもしれない。
魔物の森の魔物達、レオルド、コーロ、ミッチーは、神殿の前に集まった。
エルフォレスから一連の作戦が改めて告げられた。
一連の作戦とはいっても、エルフォレス、レオルド、そしてコーロの暗黒魔法を中心としたものだ。
実は、魔物の森にはレオルド以外に強い魔物はいなかった。
そもそも、魔王から逃れた弱い魔物達を守るために、かつてのダークウィザードとエルフォレスが作り上げたのが魔物の森なのである。
「......ということです。それでは皆さん。心して態勢を整えておいてください。
レオルド、特に貴方には負担をかけるかもしれませんが、よろしくお願いしますね」
「なあに!オレは全然問題ないぜ!!それに兄ちゃん達もいるんだしよ!?」
「いよいよワタシ、ミッチーも本気を出す時ですね...!」
「...おまえ何ができるんだ?」
「コーロ様がヘタレないようにセコンドで檄を飛ばします!......立て!立つんだ!ジョーロ!!」
「ジョーロって誰だよ!?おまえは段平のおっつぁんなのか!?てゆーかちゃんとやるよ!」
「ガッハッハ!!期待してるぜ!」
そして......
遂に、その日はやって来る。
嵐の前の静けさとはまさにこのことか。
澄み渡った晴空は、何かを待つように、どこまでも静かに広がっていた...。
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