ep16 勇者ユイリス
場面は移り、ヘンドリクス王国。
~~ヘンドリクス王国:首都イクスペリス~~
ここ、ヘンドリクス王国は、中央大陸の南方に位置する大国である。
中央大陸には他にも、西の経済大国キャロル公国、東の強国デルース、ヘンドリクスからは魔物の森と山脈を挟んで北に位置するコープランドなどがある。
(海を越えてさらに北には魔王領の大陸がある)
魔王が健在の頃以前からも、ヘンドリクス王国は高い水準で発展していた。
特に首都イクスペリスには、舗装された道路、(この世界においての)近代的な建築物、整った法整備もあり、大陸随一の人口を誇っている。
首都の中心には王城が、玉座に鎮座する皇帝のように、誇らしく構えている。
コーロ達がこの世界にやって来てから数日後のある日。
首都王城内の、優に千名以上は収容できるであろう集会場には、討伐軍の兵士達が集められていた。
「今回の任務、魔物の森の魔物共の討伐だっけ?なんか俺、ピンと来ないんだよな~」
「おい!そんな事デカい声で言うなよ!」
「あ!スマンスマン!ついな」
「まあでも確かにお前の言う通りだな。なんか妙に大袈裟というか」
「そりゃ森の妖精主が殺されたのは大事件だぜ?ヘンドリクスにとっても魔物の森は大事は場所ってのもわかる。
でもさ、そもそも遺体も見つかってないんだろ?本当に殺されたのか?
それにもう魔王はいないんだし、まさか魔物達が一斉に国に攻めて来る訳でもないんだしさぁ」
「だよなぁ」
「いったい上は何を考えているんだか。あ、そういえば勇者様はもう来てるのか?」
「来てるみたいだぜ」
「まさかあの勇者様までもがこの任務に同行するとはねぇ」
「一年前、あの魔王を倒した英雄だもんな」
「なんでもあの勇者様は、通常は十歳を過ぎてから行う魔開の儀を六歳でやって、しかもその時、高等魔法である聖魔法を唱えたんだろ?神童の聖騎士なんて呼ばれてさ」
「らしいな。そんな勇者様にご同行いただけるとはな」
「光栄の限りだぜ全く。しかしホントにそんな大層な任務なのかね~」
「だからそれは言うなって!ましてや俺達はまだまだ新米兵士なんだぞ?......お、騎士長のコルトレーン様が来たぞ。ん?横にいるのは......勇者様だぞ!」
集会場に集められた討伐軍の前に、騎士長コルトレーンに伴われ、勇者が現れた。
美しい金色の長髪。
目の上辺りにかかった前髪の下には誠実に光る麗しくも聡明な瞳。
背は特別高くもなく低くもない。
純潔な白い羽織、膝丈ぐらいの白く締まった衣、黒いベルト、青い籠手・肩当て・胸当て・膝当てといった装備を纏う細身の身体からは、騎士の精練さと上品な女性らしさを滲ませる。
この、凛々しさの中にも触れ得ることのない花のように高貴な可憐さを備える若干17歳の少女。
そう。
彼女が、勇者ユイリスである。
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