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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
154/160

ep148 再会

挿絵(By みてみん)


 魔王領。 

 某所。


 不吉な混沌が抑圧されたような、不気味に佇む静寂。


 そこは城なのか、洞窟なのか。

 気の遠くなるような年月の経過を思わせる石で形造られたその空間に、屈強なる赤き魔人が歩く。


「随分と久しぶりに来たな。変わったのか変わってねえのかもわからねえ」


 魔人がその身長三メートル備える躰を重々しく揺らしてズンズンと進んでいると、彼の前に二人の者が立ち塞がる。


「おい。お前は何者だワン?」

「おい。お前は何者だぴょん?」


「ああ?なんだオメーら?犬と兎か?」


 一人の者は、どこぞの王国の王子のような格好をしている。

 だが、手足はモコモコとした犬のそれで、腰からはフサっと尻尾を携え、首から上はビーグル犬そのもので、二足歩行の完全なる犬人間である。


 もう一人の者は、どこぞの貴族の男爵のような格好をしている。

 だが、手足はモコモコとした兎のそれで、腰からは丸い尻尾を携え、首から上は兎そのもので、二足歩行の完全なる兎人間である。


「ここから先へは行けないワン」

「ここから先へは行けないぴょん」


 滑稽にも見える外観とは裏腹に、両者からは底知れぬ脅威がズズズズ...と静かに滲み出ている。


「あぁ?オレとやろーってのか?殺されてーのか?」

 屈強なる赤き魔人は、さらなる(まが)き脅威をもって凄む。


 だが、相手は怯まない。

 緊迫した空気が走る。

 とその時...


「犬王子!兎男爵!退がれ!お前らではそいつに万が一にも勝てん!」

 何者かの声が響いた。

「それに敵という訳でもない。いいからお前らは退がれ」


「は!」

 犬王子と兎男爵はサッと道を空けた。


「いい判断だ」

 魔人はゆっくりとその間を通り抜け、敷かれた赤絨毯の先、玉座に鎮座する者と向かい合った。


「よお。久しぶりだな。全然変わってねえじゃねーか」


「貴様こそ、変わっておらんな。エルフォレスの処で森の熊さんをやっとったんじゃないのか?」


「事情が変わっちまってな。ところで、今はなんて呼ぶのがいいんだ?」


「さあ?貴様の好きに呼ぶがいい。レオルド」


「史上最高の魔導師?違うな。()()()()()マウルマリー。これが一番馴染むか」


 無造作な紫がかった黒髪ショートボブの頭には黒い獣耳。

 くびれた腰からはしなやかな黒い尻尾が伸びる。

 背丈は小さいが、(なまめ)かしい凹凸のある挑発的な浅黒き身体。

 露出多き黒衣の上に優雅なローブを纏い、足を組んで高慢に座す猫娘。

 自信と傲慢さが溢れ出るつり上がった目と口を見下(みくだ)すようにニイっとさせ、彼女は言う。


「破滅の黒猫マウルマリーに何の用じゃ?古き友、暴虐の魔人レオルドよ」


「ああ。ある魔法について、ちょっとな...」


 ......。




~西のキャロル編~

異世界の章 第一部

[完]

以上をもちまして、

西のキャロル編、完結となります。

そして、今シリーズまでを第一部とします。


まずは、ここまで当作品にお付き合いいただき、誠にありがとうございます。



・全体を通して


さて、この西のキャロル編。

実は、かなりシナリオに悩んだシリーズでした。

もともと、今シリーズで描きたかったテーマは明確にありました。

しかし、そのテーマを描くために、どう展開させようか?悩みに悩みました。

前シリーズ「魔物の森編」と今シリーズは、次期シリーズ以降へ向かうための、主人公の成長と仲間との出会いのためのシリーズです。

作者としましては、少しでも読者の皆様に何かが伝わるものとなっていれば幸いです。



・ブラックキャットについて


今シリーズのキーマンとなる、今シリーズのボスキャラです。

一見シンプルな悪党ですが、書いているうちに、作者自身が予想外に感情移入していったキャラクターでもあります。

なので、彼の最後をどうしようか、相当迷いました。

結果的にご退場願うこととなりましたが、できるなら殺したくなかったです。

一方で、あのような最期を迎えたからこそ、悪として貫き切った彼の生き方を表せたとも言えるかもしれません。

人によったら、そこに魅力を感じた方もいるっしゃるかもしれません。

そして、彼を描いていて一番難しかったのは、彼の能力と戦い方です。

力で捻じ伏せるタイプでもなければ技でどうにかするタイプでもなく、狡賢く戦うタイプの彼にはかなり頭を使わされました(笑)

コーロvsブラックキャットは、ユイvsゲアージに比べて圧倒的に難しかったです。



・ブラックファイナンスについて


裏話として、もっと複雑な設定やストーリーもアイディアとしてはありました。

例えばブラックファイナンスのビジネススキームなど、もっとアダルトな内容もイメージしていました。

しかし、当作品の方向性とは異なってしまう上にわかりづらくなってしまうのと、何より長くなりすぎてしまうので不採用としました。

そういった作風のものは、またいつか別作品で描ければなと思います。

なお、ブラックファイナンスに関して、とにかく書いていて楽しかったのはゲアージです。

彼には本当に助けられました。

勇者との対比もわかりやすいですし、何より「動いてくれるキャラ」でした。

弱体化しているとはいえ、勇者相手にあそこまで戦ったのも立派と言えるでしょう。



・キースについて


まず、ユイと並ぶもう一人のヒロイン、アミーナについては割愛します。(今後もずっと出続けるキャラクターなので)

さて、彼も今シリーズにおいての重要なキャラクターでした。

サブキャラではあるのですが、おそらくコーロはキースに、自分自身を重ねて見たんだと思います。

だから、彼が一歩踏み出す事は、コーロ自身の成長と表裏一体の関係だと言えます。



・最後に


当作品につきまして、次回から番外編六話を投稿した後、いったん筆を置かせていただきます。

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございました。

続きは、今後の当作品の状況次第になります。

コーロ達の冒険はまだ続いています。

またコーロ達と皆様がお会いできる日が来る事を祈って、締めさせていただきます。


なお、現在新作を鋭意準備中でございます。

そちらも是非とも宜しくお願いします。



ネモン

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