ep147 恋のダークナイト
夜になり......
就寝前。
皆、各々の部屋に戻り、それぞれの時間を過ごしていた。
コーロは、スピ~スピ~とすでに爆睡しているミッチーを横に、寝間着でベッドでくつろいでいた。
そんな時、ふいに部屋の扉がコンコンと鳴った。
「ん?」
彼はすっと立ち上がると、入口に向かいドアをガチャッと開ける。
「アミ?」
「コーロにぃ」
そこには寝間着の猫娘が立っていた。
「どうしたんだ?」
「...ちょっと、入ってええ?」
「...?いいけど?」
アミーナはコーロの部屋に入ると、ベッドの上にちょこんと座る。
「どうしたんだ?」
コーロが訊ねると、アミは手でベットをトントンと叩いた。
「横に座れってこと?」
アミーナは無言でコクンと頷く。
コーロはアミーナの隣りに座る。
「えっと...何か話があるのか?」
「......あんな?ウチな?コーロにぃとユイねぇに助けてもらったお礼がしたくてな?」
「そんなの別にいいんだけどな」
「それじゃウチの気持ちがおさまらへん」
「そうか」
「うん。ほんで、コーロにぃにはこれがええと思うて」
「これ?」
「その......ほら、前にコーロにぃがウチの耳と尻尾触りたい言うてたやろ?せやから...」
「えっ」
「せやから......思いっきり触ってもええよ!!」
アミーナは顔を真っ赤にして叫んだ。
コーロはびっくりしながらも猫好きの血が騒ぎ、横にしおらしく座るアミーナの獣耳と尻尾をまじまじと見た。
「......い、いいのか?アミ」
「......え、ええよ。せやけど、優しく...な?」
「わ、わかった...」
コーロは猫娘の獣耳と尻尾を凝視しながら、そっと手を伸ばす。
が......
「......ハッ!」
付近に殺気を感じ、パッと入口に振り向いた。
「ゆ、ユイ!?」
そこには、寝間着姿のユイが、悪魔のような眼をギラリと鋭く光らせて立っていた!
「......ねぇコーロ。一体何をしているの?」
彼女の形相は、勇者というより魔王に近かった!
コーロは伸ばした手をサッと引っ込めて、浮気現場を押さえられた夫のようにあたふたとし始める。
「え、えっと...いつ入って来たんだ?」
「私の質問に答えて」
有無を言わさぬユイの声。
コーロはなぜか自分が悪い事をしたような心持ちになり、拍車をかけて狼狽える。
「い、いや、その、これは、違うんだ!そういうのじゃなくて!その...」
「そういうのって...なんのこと?」
「いや、だから、その......
(それ答えたら絶対ダメな地雷質問だろ!どうする?そうだ!話を逸らそう!)
...てゆーか、ユイさんは何しに来たのかな~??」
「わ、私は、その、寝る前に、ちょっと話がしたくて......じゃなくて!質問してるのは私よ!」
「あっ、そ、そうですね~!アハハハ...」
「ユイねぇ!これはただのお礼やねん!」
アミーナが口を挟んだ。
「お礼?お礼で何をするのコーロ?」
ユイは止まらない。
「えっと、その、あの......ああ、もうこうなったら...『ダークナイト』!!」
闇が一気に辺りを包む!
部屋は漆黒に覆われた!
「ちょっとコーロ!?」
「コーロにぃ??」
コーロは闇に紛れて修羅場からトンズラする!
「コーロ!待って!」
「コーロにぃ!」
「スピ~スピ~」
コーロのただ一つの救いは、もっともこの手の事件が大好物そうなミッチーが、ひたすら爆睡ブッこいてくれていた事だろう。
さて......
新たな仲間を加え、新たな旅立ちを迎えることとなった主人公・須夜崎行路。
だが、彼らの旅はまだ始まったばかり。
やがて、世界に渦巻く大いなる陰謀が、否が応にも彼らを巻き込んでいくことになる。
彼らに待つ運命、宿命は、果たしてどのようなものなのか。
異世界に導かれし暗黒魔導師の本当の闘いは、これから、始まる......。
いよいよ次回、
西のキャロル編、完結...!




