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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
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ep146 導きの欠片

 コーロはいったんアミーナと顔を見合わすと、すぐにユイの美しい目をじっと見つめて質問する。

「どうしてだ?」


「......昨日、警備局で、新魔王軍の事を話したでしょう?まだその実態はわからないけれど、私は勇者として放っておくことはできない。

 それに、私と一緒にいると、コーロ達を勇者の戦いに巻き込んでしまう。実際、ブラックキャットとの戦いも私が勇者だったから......」

 ユイは静かにうなだれた。


 コーロは少しだけ考えた後、やや体を前に乗り出してユイの手にそっと触れる。


「コーロ?」

 ユイは顔を上げた。

 彼女の目に映る彼の表情は、不思議にとても穏やかなものだった。


「ユイ。その......ユイはどうしたいんだ?」


「私は...勇者だから......」


「うん。で、具体的にどうするつもりなんだ?」


「それは...まだわからないけれど......」


「......ならこういうのはどうだろう?」

 コーロは人差し指を立ててニヤッとして、ユイとアミーナに向かって提案する。


「俺はアミと一緒に導きの欠片を探す。ユイは新魔王軍の事を調べる。それを協力し合うんだ。

 つまり、俺とアミはユイの目的に協力して、ユイも俺達の目的に協力してもらう。これなら気兼ねもないしいいだろ?」


 ユイはふっと目を逸らして、嬉しくありながらも困惑した表情を浮かべる。

「で、でも......」


 ユイが葛藤していると、猫娘と本が叫んだ。

「コーロにぃのアイデア!めっちゃええやんか!!」

「コーロ様!ナイスアイデアです!」


 アミーナも提案する。

「ほんならウチも二人に協力してもらうで!?よう考えたらそうせんと損やからな!ニャハハ!」


「協力?」

「アミに?」

「アミ様?」


 アミーナはニヒヒと笑いながら続ける。

「ウチはコーロにぃとユイねぇを手伝って旅しながら、本物の破滅の黒猫様を探すねん!

 だってここまで来て会えへんの悔しいやん。ほんでコーロにぃとユイねぇにも手伝ってもらうねん!

 どや?オモロいやろ?ヤバ!なんやテンション上がってきたぁ!」


「アミ様!オモロいですね!それでいきましょう!」

 ミッチーも乗っかる。


 イェーイと盛り上がるアミーナとミッチーを見ながら、コーロはユイに、言葉を変えて再び訊く。

「なあユイ。一緒に行かないか?何かあれば、その時はまたみんなで考えよう」

 

 ユイはしばらくもじもじと考えてから、コーロの顔を見て、ほんのり頬を赤く染めてニッコリと笑った。

「......うん。私も行く!私も連れてって!」

 彼女の瞳は朝露に濡れたハナミズキのように潤っていた。 


「イェーイ!にゃはは!」

「イェーイ!」

「おいおい、あんまり騒ぎ過ぎるなよ」

「ふふふ」


 そして......

 コーロはアミーナから導きの欠片を受け取った。


 様々な苦難を乗り越え、やっと、ひとつ目の欠片の回収を果たしたのである。

 いよいよ、コーロの求めていた答えの一端が、ここに明かされるのか!?


「コーロ様。それではワタシのページの間にテキトーに欠片を挟んでみてください」


「こ、こうか?」

 コーロは本を小机に乗せて適当に開く。そこへ導きの欠片をスッと挟んで、パタンと閉じた。

 すると...


 ブウゥゥゥン...


 ミッチーを包むように白い光がぼんやりと輝き、すぐに何事もなかったようにスーッとおさまった。


「とうだミッチー?何か思い出せたか?」期待に胸膨らませてコーロは訊ねた。


「コーロ様」

「なんだミッチー?」


「その......」

「その?」


「......何にも思い出せましぇーーーん!!!」


「は?」

「え?」

「え?」


 シーン


 水を打ったような静寂が部屋を包む。 

 ......

 コーロはおもむろにガタンと立ち上がり、小机の上の本をバシッと掴むと、上に持ち上げ両手で掴んだ。


「コーロ様?」

「コーロ?」

「コーロにぃ?」


 コーロは、力自慢がタウンページを捻って引き裂くように、力いっぱいミッチーをググググッと捻り始めた!


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!ちょちょちょちょっと何するんですかー!??」


「もう許さない!!今度ばかりは許さないぞミッチー!!」


「ととととりあえず落ち着いてくださいコーロ様!!!」


「これが落ち着いてられるか!今までの苦労は何だったんだ!」


 とその時、


「ん?」

 コーロの頭と心にピーンと何かが走り抜けた。 

 それは、絵とも文字とも音ともとれない何かだった。


ーーー何だ?何かが俺の中に?これは何なんだ?何かを示している?よくわからないけど......何かの、暗号なのか?ーーー


 コーロは急にパッと本を手放した。


「うげっ!」

 床に落下するミッチー。


「コーロ?どうしたの?」

「コーロにぃ?」


 コーロは上の空のような目を宙に向けた。

「い、いや、何でもない......」

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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