ep142 妖精の使い
「!」
コーロとアミーナは驚倒する。
しかし、ユイは冷静に答える。
「はい...本当です」
「!」
今度はコリンズ局長とキースが驚愕する。
「勇者様が!?」
「ユイリスさんが!?」
アミーナがガタッと飛び上がるように立ち上がる。
「そ、それは真実とはちゃいます!ユイおねーちゃんは濡れ衣を着せられとるだけです!ユイおねーちゃんは...」
「アミーナ」
コーロがアミーナを阻むように口を挟む。
「ガブリエル公爵。勇者ユイリスが妖精主殺しの犯人として国を追われた事は事実です。
しかし、ユイは仲間に裏切られ利用されたというのが真実です。敵の真意はわかりませんが。
それに、そもそも妖精主様は生きています。おそらくヘンドリクスにそれを知っている人間はいないと思いますが。証拠もあります」
コーロはポケットから一枚の羽根を取り出してテーブルの上に置いた。
「これは?」とガブリエル公爵。
「これは、森の妖精主エルフォレス様と交信できるフェアリーデバイスというものです。これを使えばエルフォレス様本人から存命を確認できます」
コーロはそう説明すると、フェアリーデバイスをいじり始め、ハッとした。
ーーーあれ?これ...こっちから連絡するにはどうすればいいんだ?そういえば今までは向こうから来た連絡を受けるだけだったよな......ええっと、ええっと、ええっとぉぉ!ーーー
コーロは、まるで初めてスマホを持った老人のように不慣れにぎこちなくいじくり続け、何することもできずそっと羽根を置いた。
「...ああ~その~ええっと~あははは......」
冷や汗ダラダラ苦笑いでごまかすコーロ。
シーン
沈黙に場が包まれた時、ガブリエル公爵が「ん?」と目を見開き、何かを思い出したように口を開く。
「それは......妖精の使いの羽根では!?」
「え?」
「相当に古い文献で読んだ事があるのだが、妖精の使いの者は、妖精の羽根を持ち、世界の深淵に通じる事ができるとされていてね。その文献に描かれていた羽根の絵にそっくりなんですよ」
「妖精の使い?」
コーロとユイとアミーナは顔を見合わせる。
ガブリエル公爵は軽く頷き言葉を加える。
「その文献では、世界の核心には妖精が関わっているとされていてね。
それを『深淵の妖精』という。
そして『深淵の妖精』に通じる事ができる者が『妖精の使い』と記されていたと記憶している」
一同は、ガブリエル公爵の話があまりにも壮大で、信じる信じないにかかわらず話す言葉を失ってしまった。
ガブリエル公爵は、テーブルにある羽根をそっと手に取ると、ふいにユイに視線を向ける。
「......勇者様。実は、はじめから私は貴女が犯人だとは思ってはいないんですよ」
「ガブリエル公爵?」
「私には様々に情報網がありましてね。件の事件についても色々と調べているんですよ。
といっても、今のところはまだよくわからないですけどね。
とはいえ、私にはどうも貴女がそのような事を行うとは到底思えません。
これは何か裏があるのではないか?とまずは直感的に思ったのです。
そして今、このような形で貴女と再会し、その直感がいよいよ正しいという思いが強くなりましたよ」
コーロとアミーナとキースは、ホッと安堵して微笑み合った。
「ありがとうございます。ガブリエル公爵」
ユイは深々と頭を下げた。
それから顔を上げるとユイは、
「ガブリエル公爵。実は......」
魔物の森で起きた事の真相を語った。
「......なんと!そんな事が...」
「これは驚いたな...」
ユイの話に思わず面食らう公爵と警備局長。
さらにユイは、
「......これは、コーロとアミにもまだ言ってなかった事もあるのだけれど......」
ヘンドリクス王国副騎士長のマイルスがブラックファイナンスに関わっていた事に加え、『新魔王軍』なるものが存在することを語った。
......
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