ep135 雷光
一同はまさしく虚を突かれたようにかたまる。
が、コーロだけは内なる闇の直感で、即座に辺りに向け意識を集中した。
ーーーこれは魔物の森でエヴァンスがユイにやったやつに酷似している!もし同じなら何者かがいるはずだ!どこにーーー
コーロは目を瞑りさらに意識を集中する。
ーーーもっと集中しろ!どこだ?どこ......あれはーーー
コーロは、決して視覚では捉えられない、すでに途切れかけた悪意の糸を感知した!
ーーーどこから伸びていた?どこだ?どこ......あそこか!ーーー
「上だ!屋敷の上に何者かがいる!」
コーロの声と同時にスラッシュがバチィィィィ!と電流を走らせてその場から消える!
屋敷の屋根のすぐ上、すでにマイルスは翼の生えたセイウチのような化け物に跨り浮上し始めていた。
バチィィィィ!!
「ん?」
何者かの出現にマイルスが目線を下げて振り向く。
「おい。お前は何者だ?」
一瞬のうちに屋根の上まで辿り着いたスラッシュがマイルスを見上げて問う。
「......貴方こそ何者です?」
マイルスは問い返す。
「不毛なやり取りは嫌なんだがなぁ。じゃあ質問を変えてやる。ブラックキャットを殺ったのはお前か?」
「は?何を訳のわからない事を」
「じゃあこんなとこで何してる?どう考えてもマトモな用件じゃあねーよなぁ」
「私はただの盗賊ですよ。何だかゴタゴタしているんで混乱に乗じて忍び込んだだけです」
不穏に向かい合うスラッシュとマイルス。
そこに、一歩遅れてコーロとユイも上ってくる。
「お前は!」
「マイルス!」
スラッシュが二人に振り向く。
「二人ともコイツ知ってんの?」
ユイが目を座らせて答える。
「その男はヘンドリクス王国副騎士長のマイルス・クランドール。ブラックファイナンスの協力者よ」
「ヘンドリクス......なるほどね。見えてきたな...」
マイルスはスラッシュからユイに視線を移した。
「これは勇者様。やはり生き残られたのですね」
「マイルス......貴方の目的は一体何なの?」
「それはまあ......近い将来わかりますよ」
マイルスは不敵な顔で意味ありげに言い残し、化け物が翼を大きく羽ばたかせる。
「それでは、ごきげんよう」
ビューーーーーン!!
マイルスを乗せた化け物は、ジェット機のように、瞬く間に夜空の彼方へと消え去っていった。
「マイルス!」
ユイは憤まんやるかたない。
「……!」
コーロは何もできないまま憮然と立ち尽くすのみ。
結局、マイルスに場を荒らされるまま、まんまと逃げられた恰好となる。
と思われたのも束の間、
「このまま易々とトンズラされんのも癪だなぁ」
スラッシュがいきなり銃を構えるように右手を前に伸ばした。
ブウゥゥゥン...
彼の手に、銀色のライフルが出現する。
「あれは?」とコーロ。
「...久しぶりに見るわね」とユイ。
銃身には纏わりつくような電流がバリバリと迸っている。
僅かの間を置いて...引き金が引かれる!
『サンダーストラック』
ズギュュァァーーーン!!!
稲妻の如き雷光がピカァッ!と周囲を照らす!
銀色のライフルから放たれた雷撃が夜空に彗星の如く煌めく!
すでに屋敷から数キロ先の空。
化け物に跨り飛翔するマイルスは背後の脅威に気づきバッと振り向く!
「...なっ!!」
バガァーーーーン!!!
彼は雷光に呑み込まれた!
......
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