ep14 須夜崎行路の過去②
三か月後。
業績は芳しくなかった。
でも、そんなに最初から上り調子に行く訳はないだろうと思っていた。
一応、前職での営業経験もあるので、まだまだ冷静だった。
言ってもまだたったの三か月。
結果が出始めるのはこれからだ。
これからどうにでもなる。
そんなある時、彼女からある提案を受けた。
彼女のツテで、コンサルを依頼できそうなので、それを利用しないか?と。
そのコンサルタントは、とても優秀で信頼できる人間で、良い機会だからお願いしよう?と。
彼女が言うならと、俺は二つ返事で賛同した。
コンサルタントは、資金調達から何からトータルでサポートする経営コンサルで、他にも金融投資から不動産まで幅広くカバーしているとのこと。
俺は、なんだかうっすらと不安がよぎった。
だが、何より彼女を信頼していたので、彼女に任せるがままに、そのコンサルを利用することにした。
着手金は100万円。
諸々ひっくるめた額とのこと。
え?と思ったが、内容からすれば相場よりも安いぐらいだと彼女は言った。
結局、ツテを使って何かと動き回ってくれた彼女のおかげで実現できたこと、彼女の折り入っての頼みということを鑑み、今回は俺が全額負担することになった。
そのかわり、成功報酬分の何割かは、彼女が私費で負担してくれるという事だ。
俺は、これで全てうまくいくのだろうと思い込んだ。
そう、思い込んでいた......。
そうして…急に異変が起こり始める。
それは突然だった。
ある日、彼女から「もう別れよう。さよなら」とメッセージが来た。
俺は「え?何で?」となった。
彼女がよそよそしくなっていたのには気づいていたが、あまりにも唐突だった。
すぐ電話をかけたが、繋がらない。
メッセージを送っても、返事はない。
以降、彼女とまったく連絡も取れなくなる。
完全に音信不通となった。
俺は訳がわからなくなった。
え?
じゃあ事業は?
会社は?
オフィスは?
二人の恋愛のこともそうだけど、会社やオフィスやお金のことだってある。
このままじゃマズイだろ?
そう思い、俺は意を決して、彼女の家に押しかけた。
すると、そこはもぬけの殻だった。
......俺は呆然と立ち尽くした。
共通の知人や例のコンサルにも連絡をしたが、誰一人として連絡が取れなかった。
オフィスに行くと、俺の私物以外の物はほとんど無くなっていた。
彼女の物は一切無くなっていた。
俺はまさかと思い、すぐにネットで会社の口座の残高を確認すると、そこにあるはずのお金も全て無くなっていた。
結局、俺に残ったのは、ほとんど空っぽになったオフィスと、負債だけだった。
俺は全てを悟った。
そうだ。
俺は騙されたんだ。
彼女に、裏切られたんだ。と......。
窓の外には、どんよりとした曇り空が重々しく広がっていた。
室内には、降りしきる雨の音だけが静かに響き渡っていた......ーーー
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