ep131 暗黒魔導師&氷の暗殺者&猫娘vs魔人形軍団
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その頃。
タペストリに向かって東の街を小走りに進む三人がいた。
「あ~なんか行くのめんどくさくなってきちったなぁ」
銀髪の大男がかったるそうに愚痴った。
「ならさっきの約束は無しね」
ユイがピシャリと言い放つ。
「てかユイリスちゃん。もうそこの店入らねーか?」
「行かないわよ」
「あ、あのスラッシュさん」
キースが口を挟む。
「なんだ?」
「ぼ、僕は早くアミを助けたいから、その...」
「そうよスラッシュ。寄り道なんかしている暇ないのよ」
「わーってるよ」
「ところで、本当に奴らのアジトの位置はわかっているのよね?」
「ああ。おかげさまで手に取るぐらいにな」
「...?それならいいけれど...」
「てかこんな感じで進んでてもラチがあかねーな」
スラッシュはそう言うとピタリと足を止めた。
「ちょっとどうしたの?」
ユイも足を止める。
スラッシュはちょいちょいと二人を手招いた。
「なに?」
「な、なんですか?」
スラッシュは手招きを繰り返す。
「もっと近くに来い二人とも」
「?」
「?」
ユイとキースは?となりながら共に左右からスラッシュに接近する。
すると、
ヒョイ
スラッシュは両腕に二人を抱えた。
「ちょっ!なにするの!?」
ユイが女性らしい怒り口調で声を上げる。
「な、何なんですか!?」
戸惑うキース。
その時、キースが纏ったジャケットの懐からミッチーがひょこっと顔を覗かせる。
「なるほど!そういうことですね!」
即座に理解するミッチー。
スラッシュはミッチーを見てニヤッとしながら、
「そーゆーこと...よっ!」
二人を抱えたままピョーンと高々と跳躍して、側の建物の屋根にスタっと着地した。
「ほんじゃ、二人とも暴れんなよ?」
「まさかこれで行くつもり!?」
「えええ??」
「あと喋んなよ?舌噛むぞ」
スラッシュが二人に最後の忠告をすると、彼の足元にバリバリッ!と雷のような電流が迸った。
「行くぞ」
バチィィィィッ!!
夜の街に雷光が走る!
「ん?なんだあれ?」
通りがかった通行人が屋根を見上げて言った。
「一瞬ピカッと光ったが、なんだったんだ?」
光は瞬く間に消える。
すでに三人の姿は遥か遠くに消えていた。
......
ーーーーーー
屋敷前広場。
繰り広げられる戦闘。
『アイスショット』
『ファイアウインドウ』
シュババババ!!!
ゴオォォォォ!!!
「キリがないなぁこれは...」
「なんやねんコイツら!ホンマにゾンビやんか!」
攻撃しても攻撃しても何度でも起き上がりしつこく迫ってくる魔人形ども。
混戦の中、何体かの魔人形が魔銃を構えた。
バーン!バーン!バーン!バーン!
『アイスシールド』
『ダークシールド』
キィン!キィン!キィン!キィン!
氷の盾と闇の盾が一切の弾丸を寄せ付けない。
といっても、すでにこんな攻防は何度も繰り返されていた。
退がった所でひとり戦況を見つめるブラックキャットに視線を向けながら、フロワースがふぅーっと息を吐いた。
「これじゃラチがあかないな。もっと強力な攻撃でたたみかけないと...」
「フロワース。アミーナ」
おもむろにコーロが二人を呼びかける。
「なんだい?」
「おにーちゃん?」
「俺に考えがある。二人とも手伝ってくれないか?」
「どんな考えだい?」
「そ、そっか!プテラスはん使うんやな??」
「いや、今回はプテラスは使わないで俺自身が直接やりたいんだ」
「ほう?」
「ほなどないするんや?」
「二人は、俺に敵を集めるようにしてくれ。アミーナの風魔法と、フロワースの氷魔法で。方法は............」
「......なるほど」
「そ、そんなことやってホンマにだいじょーぶなんか??」
コーロはまるで歴戦の大魔導師のような顔で力強く頷く。
「ああ、大丈夫。俺は暗黒魔導師だからな」
「じゃあ早速始めようか。敵も大人しく待っていちゃくれないしね」
フロワースの言葉につられるように、数体の魔人形どもが彼らに向かい魔銃を構える。
アミーナは、よし!と頷くと両手をかざし風の精霊を呼び出した。
「シルフェはん。よろしゅう頼むでぇ」
無数の風の精霊が白くキラキラと瞬きながら彼女の全身に絡まるように纏わりついた。
アミーナはスッと獣のように四つん這いになる。
「ほな行くで!『キャットストリーム』」
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