ep130 魔人形
「......そうだ、コイツら...!」
コーロは思い出したように声を上げる。
「何か知ってるのかい?」
「コーロおにーちゃん?」
「......前に似たようなのを見たことがある」
「で、アレは一体何なんだい?見た感じはただのブラックファイナンスの連中だけど」
「よくわからない。ただ、アレはたぶんさっきまでのブラックファイナンスの連中とはわけが違う」
「じゃあ結局なんやねん......ハッ!」
アミーナは獣の耳をピクッとして、後ろにバッと振り向いた。
「他にも...いる!!」
彼らの後ろから、同じようなぬらりとしたブラックファイナンスの者どもがワラワラと十体ばかり迫って来ていた。
「アミーナ!フロワース!」
コーロは二人を呼び寄せ、三人でかたまる。
そこへ...
「まだいるのか!?」
さらに屋敷庭両サイドから十体ずつぬらりとした部下どもがゾロゾロと集まって来た。
彼らはほぼ四方を敵に囲まれてしまった。
すぐさま三人は互いに背中合わせとなる。
「......どうも嫌な感じがする連中だな」
「彼らは......そうか。何か妙な感じがしていたが」
「なんや?なんかわかったんか?」
「フロワース?」
「彼らからは感じないんだよ......生気が」
「なんやって!?」
「アイツらはゾンビってことなのか?」
「ボクは暗殺者だからね。そういうのには敏感なのさ。アレは生きた人間とは違う」
「......ほう。さすがはあの男の部下だけはある。そうだ。コレはいわば屍体人形。正確には魔人形だが、つまりは屍体兵士だ」
ブラックキャットが淀んだ眼をさらに鈍く光らせた。
フロワースは冷たい目を座らせて質問する。
「なるほどね。ではお前のその体は何なのかい?なぜその状態で動ける?」
氷の尖りに突き刺されたままのブラックキャットは沈黙のまま薄ら笑いを浮かべる。
フロワースは氷のような目をさらに冷たくさせる。
「おそらく、その屍体人形とやらの提供者だろうね。それがお前の協力者なんだろう?」
「......」
「その協力者はどこにいる?」
「......」
「まあいいだろう。ボクはお前を捕獲できればそれでいい」
「協力者?......はっ!それってもしかして...」とアミーナ。
「...?猫娘さんは何か知ってるのかい?」
「ブラックキャット」
ここでコーロが勃然と彼の名を呼ぶ。
その声には何か、他を寄せつけぬ響きがある。
「?」
「?」
フロワースとアミーナが肩越しにコーロを見る。
ブラックキャットが答える。
「......なんだ」
コーロは静かに目を燃え上がらせる。
「......その屍体人形は......お前の部下達じゃないのか?」
「...それがどうした?」
「お前は...自ら部下達にトドメを刺して屍体人形にしたのか?」
「ほ、ホンマか!?エグすぎるやろ!?」
憤慨の声を上げるアミーナ。
ブラックキャットはさも当然のごとく落ち着いている。
「...それがなんだと言うのだ」
「...お前、いくら悪党でも、超えちゃならない一線ってもんがあるんじゃないのか?」
「......いいかキサマ......オレは奪われない。そのためなら何だってやってやる。
甘い考えではこの世界では生き残ってはいけない。それはオレが経験した事実。
オレは奪われない。キサマからも奪ってやる!!(おいマイルス!やれ!!)」
『承知』
魔人形化した部下どもが不気味にゆらゆらと動き始める。
フロワースは両手にナイフを構えた。
アミーナは魔力を練り始めた。
コーロは突き刺すような視線をブラックキャットに放つ。
ババババババババッ!!!
魔人形どもは一斉に襲いかかった!
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