ep128 警戒の猫娘
屋敷、屋根上。
思考する四つん這いの猫娘。
「ど、どないする?中ではコーロおにーちゃんとフロワースが......
ここでウチがブラックキャットを食い止める?できるか?
アイツはおにーちゃんとの戦いで手負いやし、イケるんかな?でも、それよりも気になるんは......
周りの部下の連中や!なんやようわからんけど、ごっつ嫌な感じする。
なんや胸がざわざわする......」
「ほう?アレがなんだかわかるんですか?猫娘さん」
「!」
背後からの突然の声にアミーナはバッと振り向いた。
アミーナの視線のすぐ先には、黒いローブを羽織り妖しく目を光らした魔族が立っていた。
傀儡魔導師マイルス・クランドールである。
「じ、自分、誰や!?」
「......猫娘ってことは、勇者の仲間ですかね?ということは脱獄したということですか、なるほど」
「ブラックファイナンスなんか!?」
「...ん?私はあの程度の連中とは違いますよ。......ところで猫娘さんはこんな所でのん気にしてていいんですか?」
「?」
「貴女の大切な勇者様が大変な事になってますよ?今の弱体化した勇者ならもう死んでしまっているかもしれませんね?」
「ユイおねーちゃんが!?テキトーなことぬかすな!おねーちゃんはむっちゃ強いで!勇者やで!?」
「...どうやら知らないようですね。まあいいでしょう。で、どうします?」
「ど、どうする?」
「別に私は貴女の行動は止めませんよ。私の邪魔をしない限りはね。でも、亜人の魔人形には興味あるけどねぇ......」
マイルスは薄気味悪い笑みを浮かべた。
アミーナの背筋にゾクッと寒気が走る。
ーーーこ、コイツ。ホンマなんなんや?でも、なんやごっつヤバイ奴な気いするーーー
彼女の額にタラーっと冷や汗が流れる。
勘の鋭い猫娘は、本能的に下手な行動を抑制してかたまった。
マイルスはしばらく黙ってアミーナを見ていたが、急にクルッときびすを返して反対方向へ歩き出す。
「ど、どこ行く気や!?」
アミーナは必死に声を上げる。
マイルスは顔だけ振り向いてニヤッとする。
「無理しないでくださいよ。怖いんでしょう?良い判断ですよ。貴女みたいな者は生きのびる」
そう言い残し、マイルスはスッと視界から消えた。
アミーナは、誰もいなくなった空間を見つめながら、ふぅーっと息を吐いた。
「なんなんやホンマ......ただ強いとか、そんなんともちょっと違う。危険というかなんというか、ごっつい底の暗いもんを......」
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