ep126 暗黒魔導師vs氷の暗殺者
コーロはふぅーっとひとつ大きく息を吐き、何かを決断して魔法を唱える。
『ダークシャドウ』
コーロの身体がスズズズッと闇の影となり、瞬く間に霧のようにスーッと消失する。
「懲りない人だ」
まったくもって余裕の表情のフロワース。
彼も魔法を唱える。
『アイシクルデス』
誰もいない空間の地面から氷の尖りがグンと伸びる!
「くっ!『ダークシールド』」
ガキィィィン!
またしても、誰もいないかに見えた空間に闇の盾を発動したコーロが出現する!
「なんでなんだ!?」
コーロが再び疑問の声を上げて迷いを見せると、そのタイミングを見計らったように両手のナイフを冷たく光らせたフロワースが一足飛びに迫る!
「!」
ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!
一斉果敢に攻め入るフロワース。
迷いながらのコーロは彼の攻撃をかわしながらただ退がるのみ。
「く、くそっ!」
「ほらほらどうしたのかな?」
ひたすら退がり続けるコーロと余裕のフロワース。
それは当然に均衡が保たれるものではなく、フロワースのナイフは徐々にコーロの身体をかすめ始める。
ピッ!ピッ!ピッ!
「うっ!」
コーロの頬や手や腕が微かに刻まれる。
ーーーいざというときのダークシャドウが通じないとなると......
でもなぜだ?なぜ通じない?絶対に何かあるはずだ!何かを見落としているんだ!
なんだ?何を見落としている?フロワースと出会ってから俺と奴の間に何があった?
ダメだ!何もわからない!奴のナイフ攻撃が鋭すぎて思考が回らない!
...間違いない。奴はナイフ使いの凄腕暗殺者。相当強い!ブラックキャットどころじゃない!
......ん?ナイフ使い?ナイフ?なんだ?何か引っかかる。何か......あっ!ーーー
攻め続けるフロワース。
退がり続けるコーロ。
「もう打つ手はないのかな?」
「......ならこれをくらえ!『ダークスパイラル(暗黒螺旋)』」
コーロは体勢を崩されながら強引に魔法を唱えた!
グウォングウォングウォン!
危険な闇の螺旋がコーロの周囲を上昇しながら舞う!
「!」
フロワースはすぐさま跳び退がって回避する。
「おいおい、ここでそれをやっちゃっていいのかい?......ん?なんだ?弱い?」
闇の螺旋の渦は明らかに小さかった。
黒き螺旋は天井に当たることもなく、事も無げに収束する。
フロワースが疑念を抱いたのも束の間、コーロはすぐさま次の魔法を唱える。
『ダークシャドウ』
三度闇の影となったコーロはじきに霧散する。
フロワースは半ば呆れたように顔を押さえながら言い棄てた。
「いい加減それがボクに効かない事はわかったろうに。いいよ。じゃあもうトドメを刺してあげるよ」
ナイフをペロッと舐めて暗殺者はゆっくりと歩き出す。
「ん?」
突如、フロワースは違和感を感じピタッと足を止める。
ーーーおかしい......彼の位置がわからない。なぜだ?特別気づいた様子はなかったが、どういうことだ?ーーー
氷漬けの室内を水を打ったような静寂が包む。
フロワースは神経を研ぎ澄まして身構えたまま静止する。
スゥ...
フロワースの背面上空に黒い影がスーッと現れたかと思うと、そこから暗黒魔導師が出現する!
「!」
コーロはフロワースの後頭部に上から強烈な蹴りを放つ!
ガッ!
「チッ!」
暗殺者としての鋭敏な反射神経で反応したフロワースはギリギリ振り向きざま両腕でガードする!
が、その体勢のままザザァーッと後ろに吹っ飛ぶ!
コーロは続けざま魔法を放つ!
『ダークアロー』
彼の両手に出現した暗黒の弓矢から二本の闇矢が放たれる!
フロワースめがけギュウンと飛翔する二本の闇矢!
もはや防御するより他はない!
ところが、フロワースは攻撃魔法を放つ!
『アイスショット(氷刃弾)』
彼がクロスしていた両手をバッと前に振り下ろすと、二本の大きなナイフ状の氷の刃がコーロにめがけて発射された!
「フロワース!!」
「スヤザキ!!」
交錯する闇矢と氷刃!
ズァンッ!!
ズァンッ!!
......!
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