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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 魔物の森編
13/160

ep13 須夜崎行路の過去①

コーロの心の傷とは...。

ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー中小企業に勤めるごく平凡なサラリーマンの俺は、毎日のようにサービス残業に追われていた。


 俺がいた不動産会社の営業部は、今どき珍しいぐらいのパワハラ体質な職場で、日々怒号の飛び交う戦場だった。

 入社したての頃こそ「これが社会人なんだ!」などと意気込み、必死に仕事を覚え、必死に目の前の仕事にくらいついていた。


 しかし、五年目にもなると、理不尽な上司から日々浴びせられる心無い言葉、助け合う気持ちなど皆無の自分の事しか考えない同僚、毎日のように終電間際で帰る日々、そのすべてに、俺の心は完全に擦り切れてしまっていた......。

 

 俺は会社を辞めた。

 このままじゃまずいと思ったからだ。

 変わろうと、思った。 

 環境を変え、自分を変えようと...。


 ...俺は、相手に嫌われたくないと思うあまり、いつも自分の思っていることがうまく言えなかった。

 いつも痛々しいまでに空気を読んでばかりいた。

 病的なまでに余計な気遣いばかりしていた。

 それでも、うまくいってさえいれば、それで良かった。

 人間関係が、うまくいってさえいれば。


 だけど、疲れてしまった。

 もう、いい加減、こんな自分が嫌だった。

 こんな自分を変えたかったんだ...。


 会社を辞めた俺は、起業でもしてみようかなどとぼんやり考えていた。

 サービス残業に明け暮れ休日は力尽きて家でぐったり、そんな日々の繰り返しで余計な無駄遣いができなかった分、こんな俺でも多少の貯金が貯まっていた。

 時間もある。

 それから俺は、起業に関する本から自己啓発本からブログから何から読み漁りながら、様々なセミナーやら交流会やらに足を運んでいた。


 そんなある日。

 ある交流会で、俺は一人の女性と出会う。

 とても明るくて人当たりも良い、爽やかで可憐な彼女。

 俺が近づいて行くと、彼女も俺の存在を認識した。

 近づいた二人は、どちらともなく話始めた。

 ......彼女と話した瞬間から、俺はもう、すべてを持っていかれた。

 

 俺と彼女は、瞬く間に意気投合し、仲良くなり、親しくなった。


 ほどなくして、二人は付き合うことになった。

 高校生の頃、付き合って一か月で別れてしまった、初めての彼女以来の恋愛...。


 それから俺は、彼女と共同で起業することになった。

 彼女は、元々起業するのを目標にしていたらしい。

 俺みたいになんとなくぼんやりと考えていた訳ではなく、具体的に考え準備していたようだ。

 そんな彼女に半ば引っ張られる形で、一緒に起業することとなったのだ。


 彼女と過ごす時間は、俺にとってはすべてが新鮮で、たまらなく充実したものだった。


 俺は、以前の内向きな自分がまるで嘘であったかのように変化していた。

 自然な人間関係、自然なコミュニケーションを得て、思いのままにすっかり明るくなっていた。

 それはすべて、彼女のおかげだった。

 だから、彼女と一緒に歩んでいけば、幸せな未来へ進んでいけると、そう思っていた。

 その時は......。


 そして、あれよあれよと言う間に、俺と彼女は互いに出資し合い、彼女のツテを使って融資も受け、会社を立ち上げた。

 といっても、そんな大げさなものでもない、マンションの一室をオフィスにした美容関係のEC事業だった。

 彼女のおかげで全てがスムーズに、ここまでこじつけることができた。

 不安がなかったと言えば嘘になるが、彼女とのこの船出に、俺の心は希望に満ち溢れていた。


 そうだ。

 この頃だった。

 今に思えば。

 彼女が妙によそよそしくなり始めたのは......。

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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