ep122 フロワースの正体
「なっ!?」
突然の氷の世界の到来にコーロは理解が追いつかない!
そんな中、彼はある事に気づく。
「フロワース警部が、消えた!?」
コーロは四方を見渡す。
目に映るのは氷の壁のみ。
聞こえる音は己の呼吸音だけ。
「......一体どういう状況なんだ......ハッ!」
コーロは首元にヌルッと纏わりつくような寒気を感じる!
「!」
彼の首元に、氷の糸で蜘蛛のように天井から逆さ吊りになったフロワースが、背後からナイフをピタリと当て、その頸動脈を切り裂かんとしていた!
フロワースのナイフがサクッと引かれれば、コーロの命は終わる!
「さようなら。スヤザキさん」
フロワースはナイフを持った手を引いた!
かに見えた刹那。
「!」
コーロはその手を両手でグッと掴んで押さえた!
と同時に、そのまま前へ引っこ抜くように、一本背負いのようにブンッ!とフロワースを前方へ投げ飛ばす!
逆さまのまま前方の壁に向かい吹っ飛ぶフロワース。
そこに間髪入れずコーロは魔法を唱える。
『ダークアロー』
一本の闇矢がフロワースめがけギュインと風を切って放たれる!
為す術もないフロワース!
と思いきや...
『アイスシールド』
ガキィィン!
氷の盾で難なく闇矢を弾くと、体勢をくるっと入れ替えて壁にダンッと着地。
そこから三角飛びの要領でコーロに突っ込んだ!
フロワースの両手には鋭いナイフが冷たく光る!
「くっ!」
コーロはサッと側面に飛び退きフロワースの突進をかわした!
そのままフロワースは誰もいない方向へ突っ込んでいくが...
「かかったね。『アイシクルデス(死氷柱)』」
魔法を唱えた!
「!」
コーロの背後の地面から、彼の背中を貫かんと、鋭い氷の尖りが勢いよくグインと伸びる!そう、ブラックキャットを串刺しにしたように!
ガキィィィン!!
『ダークシールド』
間一髪、コーロは背後に闇の盾を発動し、危険な氷の尖りを砕いた。
「マジであぶなかったな......」
コーロは冷や汗まじりに呟くと、バッと振り向いた。
視線の先にはフロワースが立つ!
「......スヤザキさん。貴方やはり只者ではないですね?ここまでボクの攻撃を防ぐとは...」
フロワースは冷然とした表情で、僅かにも呼吸を乱す事なくコーロを見据える。
対峙する二人。
「フロワース!何のつもりだ!?」
コーロが憤激して問う。
「そんなこともうわかるでしょ?貴方を殺すんだよ」
フロワースは微笑して答える。
「お前は一体何者だ!?」
「タペストリ警備局のフロワース警部だけど?」
「違う。いや、そもそもお前の目的は何だ?何のために俺の命を狙う?」
「......まあ、現場判断といったところかな?」
「は?」
「別に貴方を殺す予定はなかったんだけど、貴方はどうも、ボクらの今後の脅威になり得る存在に思えたからね」
「......フロワース。お前...殺し屋か?」
「ほう?なぜそう思う?」
「わからないが......俺の中の、同期されたかつての暗黒魔導師の知識と経験が、そう思わせるんだよ」
「ふーん?まあ、今さら隠すつもりもないからいいよ。どうせ貴方はここで死ぬわけだし。確かにボクは暗殺者だ」
「!」
「といっても、別にボクは殺人鬼ってわけじゃない。快楽で殺しているわけではないからね。だから安心していいよ。貴方のお友達を殺すつもりはないから」
「...なら俺の事も放っておいてもらえないもんかね」
「それを決めるのはボクだよスヤザキさん。
あっ、そうそう、どんなに強力な解除魔法を使ったところでここからはもう出られないよ。物理的に凍らしちゃったからね。
あと、ブラックキャットにやったあの黒い螺旋の魔法?ここであれをやっても貴方ごと地下に埋もれちゃいかねないだろうね」
「...!そうか、だからわざわざこんな所を選んだわけか。さすがは暗殺者ってところか」
「それに貴方はひどく勘が鋭い。それはどうやら貴方の能力によるところのようだが......ただの不意打ちでは確実に殺せそうになかったからね」
「それで抜けられない氷の空間に閉じ込め一対一にしてから殺る、か。
(どうする?ここじゃプテラスはデカ過ぎて使えないし、そもそもコイツ......かなり強い!おそらくブラックキャットよりもずっと...。フェーズチェンジしないとマズいことに...!)」
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