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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
123/160

ep117 コーロの作戦

 さらに...


 ドガァァァァァァン!


 また別の方向から爆撃音が鳴り響く。


ーーーよし!もういいかーーー

 満を持したコーロはいよいよ動き出し、魔法を唱えた。

『ダークアロー』


 彼の両の手に闇の弓矢が出現する。

 

「!」

ブラックキャットが身構える。


「いけ!」

 闇の矢は彼の意思のみで放たれた!

 ギュイイインと弧を描きうねりながらブラックキャットめがけて飛翔する二本の闇矢!


 ブラックキャットは魔法を唱える。

『トリックラビリンス(偽造迷宮)』


 空間がギュウンと捻じ曲がる!

 と思いきや、先刻と比べ明らかに歪み具合が少ない!

 本来なら歪みと共に彼を自在に移動させていた『トリックラビリンス』が、彼をそうしない!


「くっ!」


 ブスゥッ!

 ブスゥッ!

 

 ブラックキャットは咄嗟に獣の俊敏さでかわそうとしたものの、一本の闇矢に両前足の先、すなわち手先の爪をえぐるように貫かれ、もう一本に後ろ脚片方を無遠慮に射抜かれた!


「うぐぅっ...!」

 苦痛に歪むブラックキャット。


 ガルァァァ!!!


 次の瞬間、主の危機に駆けつけるように凄まじい勢いで猛獣四頭がコーロに向かい四方から飛び掛かる!


 いたって冷静なコーロは、内側にクッと返すように片手を天に向かって上げ、

『ダークスパイラル(暗黒螺旋)』

 魔法を唱えた。


 グウォングウォングウォングウォングウォン!!!

 

 彼を中心とした円形上に、闇の黒波が天に向かい螺旋を描き舞い上がる!


「ギャウウゥゥゥ............!!」


 四頭の猛獣は、闇の螺旋に吸収されるように巻き込まれ、ぐるんぐるんと上昇しながらバラバラと塵となり藻屑となり、まるで昇天していくようにファァァァ...と滅失する!


「ま、魔獣が......」

 ブラックキャットは茫然と闇の螺旋を見上げる。

 

 ...これで残る猛獣は五頭。


 ついに本格的かつ深刻なダメージを負ったブラックキャット。

 武器の一つの獣の爪も失ったといっていい。


 彼は明らかな戦況悪化を認識する。

「......くっ!貴様、まだそんな力を隠していたか!それにあの爆撃......術式を破壊したな!?」


 コーロは自信ありげに答える。

「闇の力は相手と戦況を見極めて適切に行使する。それが先輩の教えなんでね。だから、術式を破壊して目論見通りお前の魔法の効果が弱まってから『ダークスパイラル』を使ったのさ。この魔法は強力だからな」



 アミーナ経由の指示でプテラスを使い、公園内に施された術式を破壊したコーロ。 

 結果は最良だったといえよう。

 実は、この結果の裏には、想定していなかった嬉しい誤算があった。


 もともとのコーロの指示は「テキトーにぶちかませ」だったが、実際に行われたそれは、的確に術式を破壊するものだった。

 なぜそれができたのか?


 それは、アミーナが風の精霊を公園内の四方八方に放ち、その施された術式の位置を的確に把握したからである。

 これは、いわば魔法を使った魔法探知といった類のものなのだが、実は極めて高い技術を要する。

 ましてや、刻一刻と変化する戦場の中でとなれば、高位な魔導師でなお相当な練度が求められる。

 それをアミーナは、いきなりの実践でやってのけてしまった。

 

 元来、アミーナは魔法が得意で、様々な魔法を器用に使いこなしていた。

 それ自体は、非凡なことではあっても特筆すべきことではない。

 大事なのはここからだ。


 これは彼女自身も気づいていないこと。

 実は、風魔法について、アミーナは世界的に見ても超一流の資質と才能を備えている。


 では、彼女の資質と才能を形づくる、その奥に秘めたるものは何なのか。

 それは、彼らの旅が進み、より強大な敵と出会い、彼女の身に最大の危機が迫った時、はじめて我々はその一端を知ることとなるだろう。

 そして、今はまだその時ではない...。

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