ep12 理由
その理由とは...?
「理由...ですか?」
「実は三百年前、わたくしと共に魔物の森を作ったダークウィザード様がこう仰っていたのです。
いつかこの森に危機が訪れる時、その時代の暗黒魔導師が救ってくれるだろうと。
そして、わたくしはフェアリーネットワークに潜っている時、御二人がいらっしゃるという啓示を受け、今こうしてわたくしの目の前にダークウィザード様、スヤザキ様がいる。
これは大いなる導きのままの...事なのだろうと...!」
やにわに感極まったようなエルフォレスはいったん言葉を止め、ふぅっと軽く息を吐いてから、話を続ける。
「とはいえ、御二人にわたくし達を助ける義理がないというのも御尤もです。
そこで......これならどうでしょう?
御二人がわたくし達にお力添えをしていただく対価として、わたくしの力でスヤザキ様の潜在する闇の魔導を解放して差し上げます。
スヤザキ様方はこの世界でこれから生きていかねばならないのでしょう?それなら、決して損はございません。
それともうひとつ。
ミッチー様の失われた欠片です。
その導きの欠片を探すお手伝いを、森の妖精主の力を使ってして差し上げます」
その言葉を聞いたコーロは驚きを表す。
「失われた欠片を見つける!?...ということは...つまり、この本の破れ落ちたものを取り戻せるってことですか!?」
「そのとおりです」
「おいっ!ミッチー!破れ落ちたページを取り戻せるってさ!?」
「はい!コーロ様!取り戻す事ができたなら...」
「俺がこの世界に来た理由も、元の世界に戻る方法も、全てわかるってことだよな!!」
「そうですね!!やりましたねコーロ様!」
はしゃぐコーロとミッチー。
喜ぶ二人を見てエルフォレスはフフフと微笑みながら確認する。
「では、取引成立ということで、よろしいですね?」
「は、はい!」
「ところで、エルフォレス様」
「何でしょう?ミッチー様」
「ワタシの導きの欠片は...誰かに奪われたのですか?」
「そこまではわかりません。ただ、貴女方がこちらの世界に転移する際に何らかの干渉を受けた可能性は高いと思います」
「干渉?」
「現時点でわたくしに言えるのはここまでです。それと、導きの欠片は消滅したりするものではありませんから、たとえ奪われていたとしても取り戻す事さえできれば...」
「消滅したりはしない?ミッチー、一体どういうことなんだ?」
「コーロ様。導きの書は、物理的に燃やしたりビリビリに破いたり、そういうことは出来ません。なぜなら、そういった物理現象の理から外れた物だからです」
「そう...なのか...よくわからないが。でも、じゃあなんで破れ落ちたんだ?...まさか魔法?」
「それはワタシもわかりません。いずれにしても、取り戻しさえすれば良いのですよコーロ様!」
「ま、まあそうだな!そのためにも、まずはエルフォレス様達に協力して魔物の森を守らなきゃだな!て、本当に俺にそんな事できんのか!?」
「ご心配ありませんよスヤザキ様。先程わたくし、申しましたよね?スヤザキ様の潜在する闇の魔導を解放すると」
「あの、それって一体...」
コーロが言いかけると、エルフォレスはその美しい肢体を嫋やかに動かし、寝台から立ち上がり、コーロに近づいて彼の胸にそっと手を当てる。
コーロはエルフォレスの突然の接近に、至近距離にいるその絵画のように美しい妖精にどきまぎして、言いかけた言葉を飲み込んだ。
エルフォレスは優しく誠実な目で、コーロをじっと見つめて訊く。
「スヤザキ様。貴方はまだ、我々を信用していませんね?」
「え?あの...」
「スヤザキ様。貴方の心には暗い闇が見えます」
「そ、それは......」
......
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