ep113 ブラックキャットの正体
一同が次の行動に出ようとしたその時...
『ファイアウィンド(炎の旋風)』
ゴオォォォォォ!!
炎の旋風がブラックファイナンスを襲う!
「うわっ!」
「ぐわぁ!」
「ぎゃあっ!」
「こ、この魔法?」
思い出したように呟くコーロ。
「コーロおにーちゃん!」
「その声...アミーナか!?」
連中のさらに向こうから豹のようにビュンと四つ足で翔けてきた猫娘が颯爽と現れる!
そのままピョーンと高々と跳び上がり、連中を跳び越しざま、
「まだまだやで!『エアロショック(疾風の衝撃)』」
魔法を唱えた!
今度は風の衝撃波が彼らを襲う。
ブワァァァッ!!
「うわぁ!」
「くっ!」
「あっ!」
残りの連中は一人残らず風の衝撃波で吹っ飛ばされた!
コーロの間近にスタッと着地した猫娘。
アミーナがすっと顔を上げる。
視線を合わせる二人。
「アミ!無事だったんだな!」
「コーロおにーちゃんこそ!」
再会に微笑み合うコーロとアミーナ。
ブラックキャットが漆黒の鞭にギリギリと首を絞められながらアミーナを見て疑問の言葉を吐く。
「なぜ...猫娘が......他に協力者がいるのか?」
コーロはブラックキャットに意識を向けながらアミーナに訊ねる。
「フロワース警部が助けたのか?」
「...う、うん!」
「そうか!でも姿が見えないが?」
「なんや調査する言うて、どっか行ってもうて」
「そうなのか。(警備局としての調査ってことか?)」
「それでコーロおにーちゃん、アイツは...」
「ああ。ブラックキャットだ。アミは退がっててくれ」
「う、ウチも戦うよ!」
「いや、もうその必要もないかもしれない」
「え?」
汗の滲んだブラックキャットの顔は青ざめ始めていた。
巻きついた漆黒の鞭が毒のようにジワリジワリと彼を追い詰めている。
コーロは再度要求する。
「ブラックキャット!もうアミも取り返した!今、まわりには部下もいない!アミーナ達から騙し取った金を返してもらうぞ!」
「ククク......」
「何がおかしい?」
「...お前ごときにやられるオレではない......!」
「この期に及んで何を...」
「...『トランスフォーム』」
グゥングゥングゥン
俄かにブラックキャットの躰が、大きくなったり小さくなったりを繰り返すように蠢きだす。
「なんだ!?」
コーロは謎の異変に目を見開く。
次第に、蠢きとともにブラックキャットの躰がむくむくと一回りも二回りも三回りも四回りも大きくなり、その全身が黒々とした羽毛に覆われた狐の獣へと変化する。
ブチィィンッ!
「!」
暗黒の鞭がちぎれ解かれる!
気がつけば、ブラックキャットは体長三メートルはあろう黒い狐の化け物となった!
「巨大な...キツネ!?」
コーロは目の前の獣に驚愕する。
「......やっぱりやな」
なぜか予想していたかのような口ぶりのアミーナ。
「アミ?わかってたのか?」
「コーロおにーちゃん。アイツが猫人やないのは何となくわかってたんや。たぶんアイツは、狐の亜人と魔族のハーフや!」
「!」
「亜人と魔族のハーフは、先天的にああやって形態を変化させる能力を備える事が多いんや。ちなみに破滅の黒猫様は猫人と魔族のハーフやと言われとる」
「そうなのか......ん?ということは」
「うん。アイツは本物の破滅の黒猫様やない。ただのニセモンや!」
黒き大狐の化身となったブラックキャットが太々しく答える。
「ああそうとも。オレは破滅の黒猫ではない。だが、行方の知れぬあの方の名前をオレが継ごうというだけだ」
「オマエなんかが破滅の黒猫様を名乗るな!」
いきり立つアミーナ。
「あの方は亜人の英雄。お前程度の幼い猫娘如きが語れるものではない」
「お、幼くないわ!もう十六やわ!」
フゥ~ッと怒りに尻尾を太くさせるアミーナを横目に、ブラックキャットはコーロに問う。
「......黒き魔導師。お前は一体何者だ?」
「......俺は、須夜崎行路。暗黒魔導師だ!」
「暗黒魔導師だと!?」
ブラックキャットは驚きの声を上げたが、すぐに腑に落ちたといった様子で落ち着く。
ーーーまさか、人間で暗黒魔法を使う魔導師とは。
だが、それならばここまでの奴の能力にも納得がいく。
なぜオレの偽造魔法を見破ったのかも。
しかし、勇者の従者がまさかの闇の使い手とは......となれば、もうこちらも総力をあげねばならないなーーー




