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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
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ep112 影と鞭

『ダークシャドウ(暗黒影霧)』


 コーロは魔法を唱えた。


 ズズズズズズズズ......


「ん?何だ?奴が黒く、染まっていく......?」


 またたく間にコーロの全身は闇の影に覆われ、次の瞬間、影とともに霧の如くその場からスーッと姿を消した。


「消えた!?どこに行った!?」

 ブラックキャットは素早く辺りを見回す。


「消えやがったぞ?」

「魔法か??」

「一体どこに...」


 部下達がざわめく。


 ......


 騒がしいはずの公園に一瞬の妙な静寂が訪れる。

 

「...逃げたのか?」

 ブラックキャットがそう口走った時...


『ダークアロー:クラスター』


 ババババババババッ!


 ブラックキャットがいち早くハッと気づき上方を見上げると、彼らの上空におびただしい数の闇矢が、今まさに放たれんと浮かんでいた!


「お前らすぐに散れ!!」

 ブラックキャットが危機を叫ぶ。が、


「えっ?」

「あっ」

「うわっ」


 時すでに遅し。

 無数の闇矢は彼らの頭上からスコールの如く激しく降り注ぐ。


 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!


「ぐあっ!」

「うあっ!」

「ぎゃあぁぁっ!!」

「くっ!『トリックアート』」


 ...間もなく豪雨は過ぎ去る。


「...うぅ......」


 ブラックファイナンスは一人残らず戦闘継続不能となり、バタバタと地に伏せて呻いていた。

 ただ一人、なんとか自身の魔法で逃れたブラックキャットを残して。


「......オレ以外全滅だと!?貴様!消えて移動して、そこから攻撃魔法を放ったのか!」

 ブラックキャットが声を上げる。


 彼が声を浴びせた先、場から一歩離れた草木の影から、コーロがスッと現れる。

「ああそうだよ。ブラックキャット、次はお前だ!」


「勇者でもない貴様ごときが偉そうにほざきよって......!」

 

 再び対峙する二人。

 だが、ブラックキャットはコーロにやや気圧されている。

 対してコーロは、何か先ほどとは別人かのような底知れぬ雰囲気を醸している。

ーーー何だろう。闇の魔力を練ると冷たく落ち着いていく感覚はいつものことだけど、フェーズチェンジしたら、それがより深いものにーーー


 ブラックキャットは魔法を唱える。


『トリックラビリンス(偽造迷宮)』


 急に辺りの景色が空間ごと捻じ曲げられたようにぐにゃんと歪み始める!

 

「!」


 景色の歪みとともに、コーロの視界から忽然とブラックキャットの姿が消える!

 ...数秒の間をおいて、コーロの頭上、何もないはずの空間からブラックキャットが逆さまにぬうっと現れ、上から刃を突きつける!

 が...


『ダークシャドウ』


 スカッ


 刃は空を斬る。

 コーロは再び闇の影となり霧散する。


「またか!どこに......ハッ!」


 今度はコーロがブラックキャットの頭上高くに姿を現す!


「上だと!?」


 ブラックキャットは咄嗟にもう片方の手で魔銃を抜いてコーロめがけ発砲する!


 バーン!バーン!バーン!バーン!


「何!?また消えた!?」

 とらえたかに思われた銃弾は霧となった影を通り抜けるのみ!

「どこだ!?」


『ダークウィップ(暗黒の鞭)』


 突如、ブラックキャットの背後から、凄まじい勢いで漆黒の鞭が猛毒を(はら)んだ黒蛇のようにシュルルルッと迫る!

 

「なっ!」


 ビシィッ!

 グルグル

 ギシィィィ......


 漆黒の鞭はまさしく蛇のように、ブラックキャットの首に巻きついた!


 ブラックキャットが首を押さえながら振り向くと、彼の目に、右手から漆黒の鞭を発動させながら歩いてくる暗黒魔導師が映る。


「き、貴様......!?」

「ブラックキャット!観念しろ!」


「...貴様は一体何者なんだ......?」

「アミーナを返せ!それと騙し取った金もだ!」


「......『トリックアート』」

 ブラックキャットは魔法を唱えた。

 が...

「効かない!?」

 ブラックキャットはすぐさま刃で闇の鞭を斬りつけるも、まったくもって切ることができない。


 ならばと次はコーロに向かい魔銃を放った。


 バーン!バーン!バーン!


 ギン!ギン!ギン!

『ダークシールド』

 闇の盾によりあっさりと防がれる。


「さあ早くしろ!このまま締め殺すこともできるぞ!」

 コーロは闇の者たる眸を鋭く光らせる。

 

「お、おい!社長と...あれは侵入者か!!」

「社長!」

「敵だぞ!!」


 ブラックキャットの危機に、まだ残っていた部下達が駆けつける。

 ざっと二十人はいるだろうか。

 皆、コーロに向けて一斉に魔銃を構える。

 その中には、魔銃ではなく、魔導ランチャーを構えている者が三人いた。


「社長大丈夫ですか!?」

「動くな!」

「キサマ!何者だ!?」


 コーロはブラックキャットに漆黒の鞭を巻きつけたまま連中を見回す。

「またぞろぞろと......あの武器はランチャー?あれを撃たれたらさすがに鞭を解かないとマズイか......!」

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