ep110 トリックアート
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コーロは駆ける!
屋敷を抜け、庭を抜け、邸外まで抜ける!
邸内を出て(湖となっていた場所を出て)、公園部分のエリアまで抜け出すと、彼は停止する。
「どうした?観念したか?」
ブラックキャットもコーロを追って同エリアに至る。
「お、おい!あそこに社長と......あれは侵入者か!!」
部下達も二人に気づき、ゾロゾロと集まって来る。
先刻と同様、コーロは再び敵に囲まれた。
対角線にはブラックキャット、そこから両サイドへ円形に広がる魔銃を構えた部下達。
だが、彼の表情には先ほどと違い余裕が見える。
「ここなら、お前の魔法もさっきのようにはいかないだろう」
ブラックキャットは彼以上に余裕を見せる。
「そう...思うか。お前ら!撃て!」
バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!
魔銃による集中砲火!
『ダークシールド』
キィンキィンキィンキィンキィン!
コーロは闇の盾で全弾を完璧に防御した!
「終わりか?じゃあ今度はこっちの......!?」
コーロは気づく。
対角線にいたはずのブラックキャットの存在が忽然と消えていることに!
「死ぬがいい」
「!!」
なんと、今度はコーロの後ろの地面から突然、刃を持ったブラックキャットがぬっと出てきて、彼を殺めんとする!
『ダークシールド』
ガキィィィン!!
間一髪、コーロは背後に闇の盾を発動し防御する!が...
『トリックアート』
バリィィィン
なんと、ブラックキャットの魔法『トリックアート(偽造創作)』で、闇の盾が砕かれてしまった!
「!?」
思わずコーロは跳び退がる。
「なんだ!?お前何をした!」
「ククク。我が『トリックアート』は触れた物にトリック(偽造)を施し、さらには触れた魔法をトリック(まやかし)にかえてしまう事もできるのだ」
「!!」
「あと、お前は屋敷から出れば我がトリックラビリンスから逃れられると思ったようだが、それも無理だ。なぜならこの公園内全体に術式が施されているからな。結局お前はオレの掌の上だ」
「...くっ!」
「さあ、観念するか?そうだな?お前は珍しい力を持っているからな。大人しくすれば牢獄にぶち込んでやってもいいぞ?そこからどうなるかは......お楽しみだが...クク」
すぐ目の前には変幻自在のブラックキャット。
周囲には彼を取り囲むブラックファイナンス。
コーロよ、どうする!?
その時...
「スヤザキ様!」
羽根から声が響く。
「エルフォレス様?」
「スヤザキ様!大丈夫ですか?」
コーロはポケットにしまった羽根の方へ向け現状報告する。
「......結構、ピンチです」
「なんだ?通信魔法か?」
ブラックキャットがギロリと睨む。
「そうですか!実はスヤザキ様!そちらの魔導環境の影響なのか、通信状況が著しく悪化して、もうこの通信が切れてしまいそうなんです!」
「マジですか!?」
「ですので今の内にお伝えしておきたい事を申します!先ほどから、音からだけでも何となくそちらの状況がわかります!ブラックキャットは手強い、そういうことでしょう?」
「...はい」
「であるならスヤザキ様!『フェーズチェンジ』しましょう!」
「やっぱり......そうですよね」
「今のスヤザキ様ならフェーズを上げても問題ないはずです!すでに闇の力は覚醒しています!闇の力に充分馴染んでもいるはずです!」
「......はい!」
「スヤザキ様はダークウィザード、闇を操る者です!さあ、その闇の力で敵を打ち砕いてください!......」
プツン
通信が途切れる。
ーーーあとは俺次第か......よし!俺はこの闇の力を使ってーーー




