ep102 決着
警備隊員四人も発砲する。
が......
「ん?終わりか?」
スラッシュは何事も無かったかのように微動だにしていない。
五発の弾丸はというと、彼の体に届く事なく消失している。
ただスラッシュの周りに、僅かにビリビリと電流のようなものが走っているのだけが確認できる。
「な、何だ!?どうなっているんだ!?」
ロナルドは理解できない。
「それじゃあ、もらったもんは返すのが礼儀ってもんだからな」
スラッシュは手で銃をなぞらえるように人差しを立てて言った。
「ちょっと、無駄な殺生はやめなさいよね」
ユイが戒める。
「え、先に殺そうとしてきたのあっちなんだけど」
「そうだけど!警備局の人達もいるわ」
「買収されてんだろ?なら一緒だろ」
「それでも!」
「......なあ、ユイリスちゃん。オレ、キミを助けたんだよねぇ?」
「そうよ。だから言う通りにしてくれたら朝まででも付き合うわ」
「マジか。そんならしゃーないわな」
二人のやり取りを黙って見ていたキースは、オロオロしながら小声でユイに訊ねる。
「い、いいんですか?あんなこと約束しちゃって。スヤザキさんも...」
「大丈夫。私に考えがあるの」
ユイも小声で返す。
「なにコソコソ話してる?」
「な、なんでもないわ」
スラッシュは、連中の様子を見ながら面倒臭そうに一歩前に出て忠告する。
「お前ら。黙ってこの場から立ち去ればオレは何もしねえ。だが、また手を出そうってんなら、ちょいとばかし痛い目に遭ってもらう。痛い目見たくなかったらさっさと去りな」
「お、お前は、どの立場でものを言っている!?」
ロナルドは問うた。その表情は恐怖の色に染まっている。
「だからさぁ。オレ、不毛なやり取り嫌いなのよ。だからさっさとどっか行ってくんない?」
「...くっ!お前は一体なんなんだ!?」
ロナルドは引き金に手をかける。
「いい加減もうやめろ!!ロナルドォ!!」
切迫して叫ぶカイソー。
バーン!
バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!
ロナルドの発砲を皮切りに、スラッシュに集中砲火が浴びせられる。
が......
「ったく、人がせっかく忠告してやったのにな」
弾丸はスラッシュにかすりもせず、彼の体の周りに走る電流のようなものにひとつ残らずぶつかってもれなく消滅した。
「じゃあお前らもういいわ」
スラッシュはそう言い放つと、クイっと指で軽く捻るようなジェスチャーを見せる。
刹那...
「ぎゃあ!!」
バチバチバチィィッ!と連中に落雷のような電流が走り、彼らは気を失ってバタバタバタっと倒れた。
瞬きする間もなかった。
「おいお前!何をした!?」
今度はカイソー達に連れ立っていた警備隊員達がスラッシュに向かい銃口を向けて叫んだ。
「お前らまで止めろ!!副長も止めさせてくれ!!」
カイソーは必死に制止を叫ぶ。
ところが、警備副長もスラッシュに銃口を向けていた。
警備副長が声を上げる。
「全員撃てぇ!!」
バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!バーン!
またしても集中砲火。
だが結果は変わらない。
銃弾はすべてスラッシュに届く事なく消滅する。彼の体の周りにはチリチリと電流が流れている。
スラッシュは、言わんこっちゃないと軽く溜息をついてから、再びクイっと指のジェスチャーを見せる。
「ぎゃあ!!」
......終わった。
カイソー以外全滅である。
ブラックファイナンスも警備隊員も、カイソー以外ひとり残らず。
奇しくも、ユイ達にとっては理想的な結果となった。
この銀髪男によって...。
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