ep101 スラッシュ
ユイの言葉に合わせるように、ただならぬ事態の変化を察知して、ロナルドらがユイ達の居る地点へ戻って来る。
「......ぜ、全滅......!ゲアージさんも...!?」
さらにカイソーも同様に、警備副長以下警備隊員を引き連れてやって来た。(銀髪男の攻撃による轟音の時点ですでに事態の異常に気づいていた)
「こ、これは......!ゲアージ!!」
カイソーが叫ぶ。
「おい何だ?やられちゃったのか!?」
警備副長もつづく。
カイソーは、改めてユイ達の方をよく見て、ハッとする。
「あ、貴方は......!」
「ん?お前は確か......お前らんとこの部長かなんかだったっけか?」
銀髪男は興味無さそうに返事する。
「わ、わたしはブラックファイナンスのカイソーです!なぜスラッシュ様がここに!?」
「オレがここにいちゃいけねーのか?」
「い、いえいえそんな!ただ貴方ほどの方が何故と思った次第です」
「えっと、カイソー、だっけ?そこにいんの全員お前らんとこの人間か?」
「いえ!タペストリ警備局の警備隊員も混じっております。わたしのすぐ横にいるのは警備副長です」
「買収したってわけか。ブラックキャットがやりそうなこったな。で、アイツは今どこにいる?」
「しゃ、社長の事ですか?」
「そう。どこ?」
「社長に御用なら、わたしの方から...」
「いやお前とかどうでもいい。ブラックキャットはどこっつってんのよ。オレ、不毛なやり取り嫌いなんだけだなぁ」銀髪男はそれとなく眼をギラリと光らせた。
「た、大変失礼いたしました!社長は本部におります!」
「おっけ。んじゃ今からオレとユイリスちゃんで会いに行くわ」
「私と?」
ユイがびっくりしてスラッシュを見上げた。
「ゆ、勇者と、ですか!?」とカイソー。
「ダメか?」
「だ、駄目も何も......勇者は我々の敵ですが!?いや、そもそも、なぜスラッシュ様は勇者と戦わないのですか!?今の今までそこで何をしていらしたので!?」
「ところで、部長さんよ」
「?」
「警備局を取り込んだのはいいとして......他にもあるだろ?」
「は?い、一体何の話で?」
「ゲアージの連れてたヤツだよ」
「!!」
「わかるだろ?」
「ええと......何の話か、わたしには......」
「まあいい。オレは弱い者いじめは趣味じゃねえ。あとは社長に訊く」
「お、おい!お前!!
ここでしびれを切らしたように突然ロナルドがスラッシュに魔動銃(ゲアージの使用していた魔銃よりやや大きいが威力は劣る)を向けて叫んだ。
「お前は何者だ!?勇者の味方か!?社長に何をする気だ!?答えろ!さもないと撃つ!」
ロナルドに合わせ、四人の警備隊員も魔動銃を構える。
「おーおー威勢がいいねぇ。まっ、アイツらはオレの事知らねーもんな」
スラッシュはニヤリとして全く怯まないどころか、まるで相手を恐怖に駆られて攻撃せざるを得なくさせるかのようにギロッと眼で威圧する。
「ロナルドやめんか!!その方は敵ではない!!」
カイソーは制止しようとする。その声は頗る切実。
「ユ、ユイリスさん!ヤバくないですか!?」
キースが慌ててユイに問いかける。
「ヤバいわね......あいつらが」
ユイは冷静に答える。
「わ、私は見たんですよ!部長!ゲアージさんが従えた者どもがあの男に撃ち滅ぼされたのを!あの男は、きっと我々の事も......!」
「いいから止めんか!!ロナルド!!」
バーン!
引き金が引かれてしまった!
続けざま......
バーン!バーン!バーン!バーン
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