ep100 ユイvsゲアージ4
ユイは何かの舞いのようにゆらりと揺れ始める。
まるで遠い異国のオリエンタルな踊りのような、激しくはない慎ましくも滑らかな動き。
「なんだ?あの動きは?」
ゲアージは魔銃を構えながら警戒する。
ユイはゆったりと舞いながら、倒れ込むような姿勢になったかと思うと、そこからガッと地を蹴り、唸るような動きで敵に向かい突進した!
「あぁ?結局突っ込むだけか!?芸がねえな!」
バーン!バーン!バーン!
ゲアージは向かって来るユイに魔銃を立て続けに発射する!
弾丸はユイを的確に捉えた!
「あぁ!?弾が!?どうなってやがる!?」
...が、ユイの全身に透明の膜のような物が覆い、弾丸はその幕に飲み込まれて消失する!
ユイはそのままゲアージの懐めがけ突進する!
「さあ!今です!ユイ様」
ミッチーが胸元から叫ぶ!
「はっ!!」
ズバッ!ズバッ!ズバッ!
「......お、ぐ、ぐあぁっ......!!」
唸りながら肉薄してナイフの三連撃!
二撃はゲアージの胸を切り裂き、一撃は彼の右手ごと魔銃を真っ二つにした!
「......チ、チクショウが......クソッ......」
ゲアージは左手で胸を押さえながら力無く膝をつく。
その左手の指の間から滲み出るように血が零れる。
ダランと下がった右手からはボタボタと無遠慮に血を滴らせながら、間もなく彼はドサッとうつ伏せに沈んだ。
「......や、やった...!やった!ユイリスさん!」
キースが歓喜の声を上げる。
「......なんとかなった...!シェリルとミッチーのおかげね。......きゃあっ!!」
技を撃ち終わり敵を仕留めた途端、ユイはまたまたズベンとすっ転んだ。
「ユイリスさん!?」
キースがバタバタと駆け寄る。
「だ、大丈夫よ...!」
「ユイ様!やりましたね!さすが勇者様です!」
ミッチーはユイの首元から飛び出して宙に舞い歓喜する。
「ミッチーこそ、本当に助かったわ。......これはすべて仲間達のおかげ。今になって、あの時シェリルの言っていた事が理解できた......私は甘かったのね」
「ユイ様?」
「いえ、何でもないわ!......これで後は、カイソー達とロナルド達だけね」
何とか戦いに勝利しワイワイするユイ達。
ユイとゲアージの果たし合いを遠目から見ていた銀髪男もユイ達の元へ寄ってきて声をかける。
「まっ、勇者があの程度に負けるわけねーわな。だが、なんで聖魔力を使わねえんだ?聖剣はどうした?手加減にも程があるだろ?」
「事情があるって言ったでしょ?」
「それを訊いてんだけどな......じゃあ弾丸を防いだアレは何だ?あんな力持ってたか?」
「あら?詮索はしないんじゃなかったの?それに貴方の前で手の内を明かすほど私は馬鹿じゃないわ」
「確かにそうだ、ちげーねえ。そんじゃそのナイフは......」
「じゃあ貴方は何しにここへ?」
「わかったわかった、わかったよ。不毛なだけだ。ったく、助けたのに冷た過ぎるねぇホント」
「......このナイフはタペストリの警部から預かった物よ。それが?」
「なるほどね」
「?」
「あと、これは訊かずにはいられねぇから訊かせてもらう...。その喋る本は何だ??」
「あ、それは...」
「ワタシはミッチーです!」
ミッチーは銀髪男に向かいどうだと言わんばかりに胸を張って名乗った。
「......はあ。で、おたく何者?」
「だからミッチーです!」
ミッチーはブレない。
「......あ、そう」
「なんですかそのリアクションは!」
怒るミッチー。
「......なんか絡んじゃいけないヤツっぽいな...」
あ~あ失敗したという表情を見せた銀髪男だったが、すぐに気を取り直し、現況においての本題となるべき話題に切り替える。
「で、ユイリスちゃんはこれからどうすんだ?ブラックキャット達と揉めてんだろ?ヤツらのアジトにでも行く気なのか?」
「そうね。そうしたいところだけれど、まだ他の奴等が残っているのよね」
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