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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
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ep99 ユイvsゲアージ3

 ゲアージは、突然の謎の本=ミッチーの登場と彼女の謎の魔法に、まるで虚をつかれたようにかたまっていた。


 彼はマヌケなのか?違う。

 実は、ゲアージは見かけや性格とは裏腹に、慎重な男である。

 本当のところ、魔犬と魔人形を失った事もあり、手負いのユイに対してまだまだ警戒していた。

 また、ユイの力に制限があることも直感的に見抜いてはいたものの確信してはおらず、聖剣の印象も拭いきれないでいる。

(彼のこの慎重さは、闇の社会において、今の今まで彼を生き抜かせて来たのである)


「......一体そいつはなにもんだ?そいつがテメーの傷を治しやがったのか?あの小僧を守りやがったのか?チッ!おもしろくねーことばっかりやりやがって」


 ユイはゲアージに向き合いながら立ち上がり、目で周りを確認した。

「武器が......」


 その言葉に反応したキースがユイの背中に向かって声をかける。

「あ、あの、ユイリスさん」


「なに?」

 ユイは肩越しに振り向いて訊く。


「その、武器、なんですけど、フロワース警部から貰ったこれなら......」

 キースはポケットから、刃の部分を革のケースにはめたナイフを差し出した。


「そうか...!それがあったわね!」

「で、でも、ナイフなんかで大丈夫ですか?」


「いえ、十分よ。いったん間が開いた今なら......武器さえあれば、技ができる!(そう。今の状態の私が放てる、唯一の技......)」



ーーーあれは二年前。


 私が外で稽古をしていると、シェリルがやって来て私にこう言った。

「ねえユイ?少し聖魔力に頼りすぎじゃない?」


「どういう意味?」

 質問の意図がわからず私は訊き返した。


「確かに勇者の行使する聖魔力は唯一無二で強力なもの。でも、もしその力が......そうね、例えば、勇者の聖魔力を封じられた時、あるいは何らかの理由で枯渇してしまった時、ユイはどうやって戦うつもりなの?」


「その時はシェリル達がいるじゃない?」

「そういう意味じゃなくって...」


「私は勇者。だから勇者として常に全力で戦う。それだけよ?」


「......ああもう、この子は。要するに、勇者の聖魔力抜きでも、戦える手段は持っておいた方がいいって事!わかる?」


「......」


「とにかく!ここで待ってて!いい?あの剣術バカを連れて来るから!あいつに技の一つでも教わっておきなさい!」


「......はぁーい(...別に私はこのままでもいいんだけどなぁ...)」


 その日、私は仲間の剣士から一つの技を伝授された。

 それは、一つの剣技の型だったーーー



 ユイはキースからナイフを受け取り刃からすっとケースを外す。

 刃は氷のように冷たく研ぎ澄まされており、それなりの業物にも見える。

 ユイは、特別何かを構えるでもなく、脱力して腕を下げ、目を閉じ、足を肩幅に開き、静かに直立した。


ーーークゾーのように自在にこなす事はできない。私には間が必要。だから使える状況も限られる。けれど、銀雷の処刑人とミッチーのおかげで場がリセットされた今、あの技を放つ千載一遇の時!ーーー


 ゲアージはユイの様子の変化を敏感に察し、警戒して間をあける。

 今この時、彼の慎重さが、彼自身を追い込んでしまっていることをゲアージは気づいていない。


 距離を置いて二人を眺めていた銀髪男が何かに反応する。

「ん?あのナイフは......」


 木のように静かに立つユイ。

 ゲアージは魔銃を構える。

 夜風がひとつ彼女の美しい金髪をハラリとなびかせたかと思うと、呼吸を止めたようにピタッと止む。

 その時、


「ツバキ流剣術『剣の舞』」

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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