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導きの暗黒魔導師  作者: 根立真先
異世界の章:第一部 西のキャロル編
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ep98 ユイvsゲアージ2

 ユイは思わずバッと振り向いた。

「えっ?キース?あなた......生きているの?」


 むくりと上半身を起こし、自分で自分の身体を確かめながら、自らも理解できないといった表情のキースがそこにいた。

「は、はい。生きています。気絶していただけみたいで......」


 ゲアージはギョッとして叫んだ。

「オイ!?なんでテメーは生きてやがる!?確かに心臓を撃ち抜いたハズだぞ!?」


 ユイはキースの心臓辺りを見てハッとした。

 血がまったく出ていないのである。どころか、服に穴すら開いていない。


「どういう事なの!?」


 ユイが疑問の声を上げると、その言葉に反応するように、キースの着る(コーロから借りた)濃紫のジャケットの胸あたりがモゾモゾと動き出した。

 と思ったら......


 ビュンッ!


 一冊の本が飛び出した!

「...フッフッフ。皆さん。ワタシの存在、完全に忘れてましたよねぇ??」


「ミッチー!?」


「なんだ!?しゃべる本?魔法か!?」とゲアージ。


「ん?あれは?」と煙草をふかしながら銀髪男。


 ミッチーは、キースの頭上をフワフワ浮かびながら、口からぺッと唾を吐き出すように体からポンッと一発の弾丸を吐き出した。

「まったく、おかげで目が覚めてしまったではないですか!」


「......ミッチー。あなた、寝てたの?」

「良い子は寝る時間です!」


「......逆に凄いわね...いえ、結果良ければ。よくやったわミッチー!」

「えっへん!」


「コーロがこちら側にミッチーを加えたのがまさかこんな形で功を奏すなんて」


「ふっふっふ。ワタシは幸運を呼ぶオンナなのです。ところでユイ様。脚にお怪我をなされていますが?」


「これは奴に撃たれたの」


「そうですか。太腿を撃たれるのは危険ですよ?しっかり止血しないと、やがて失血死してしまいかねません。どれどれ?」


 ミッチーはふわ~とユイに接近する。


「ミッチー?」


「それではワタシが......」

 ミッチーがそう言った次の瞬間、ユイの身体が不思議にボヤけるような透明の光に包まれる。


「こ、これは......?」


 数秒後、光がおさまると......なんと、痛々しい脚の傷口が見事に塞がれていた!

 というよりも、まるでそれがなかった事のようにユイの美しい脚が元通りになっていた。

 さらには背中の傷も、服ごと元通りに戻っている。


「これで大丈夫ですね」

「あ、ありがとうミッチー。えっと、これは何の魔法?治癒魔法なの?」


「ヒ ミ ツ です。えへっ」

 ミッチーは誤魔化すようにおちゃらけた。(いつもおちゃらけとるやないかい!というツッコミはとりあえず置いておこう)


「まあいいわ。とにかく助かった!」


「それとユイ様」

「?」


「敵は飛び道具を使ってくるのですよね?」

「そうだけど?」


「ならワタシを抱えて戦ってください」

「...どういうこと?」


「今、ユイ様はどんな状態ですか?」

「今の私?」


「勇者であるユイ様があの程度の奴に傷つけられるはずがありません。ということは......そうでしょう?」


「......ええ」


「なら、ワタシが弾除けになりますので、ユイ様は心置きなく突っ込んでください」


「!?......いや、考えている暇はない。とにかく、ワタシはあなたを抱えて戦う。それでいいのね?」


「おけまるです」

「あなたを信じるわ、ミッチー」


「それでは......」

 ミッチーはユイの首回りをフワフワ漂ったかと思うと、まるで小虫のように彼女の首元へバッと突っ込んだ。


「ちょっ!?」


 そのままミッチーは服の中に入り込み、もぞもぞと胸元まで進むと、良い具合に収まった。


「な、なぜ、そんなうまい具合に入り込めるの!?それと、あの......動きづらいのだけれど...」


「何せワタシはミッチーですから!それに重さも感じないしょう?」


「確かに!?...今更だけど、ミッチーって本当に何者なの?」


「ワタシはミッチーです」

 ミッチーはブレない。


「そうね...」


「それにしてもユイ様」

「?」


「良いニオイがしますねぇ。むふふ」

「やめてっ!」


 どうしていいかわからないキースは後ろでただ邪魔にならぬようじっとしていた...。

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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