ep97 ユイvsゲアージ
「ん?つーか、明らかにユイリスちゃんとやり合ってたよなぁ?何?お前ら、勇者と揉めてんの?」
「...そ、そうっすよダンナ!この勇者が、おれたちの邪魔しやがるんすよ!?ダンナも手貸してくださいよ?」
男はゲアージには答えず、ユイに質問する。
「てことは、ユイリスちゃん。もう新魔王軍の事嗅ぎつけちゃったわけ?」
「...新魔王軍!?」
「あれ?ちげーの?」
「新魔王軍ってなに!?ねえ!?」
「やべ......今のは聞かなかったことにしてくれ」
「ねえちょっと!?新魔王軍って何なの!?」
「......まあ、じきに知るだろうよ。なんせ、今ユイリスちゃんが揉めてる相手もそれだからな。まっ、俺から言えるのはそれだけだ」
「まさか、ブラックファイナンスが!?」
「ちょっとちょっとダンナ!なにそのオンナに教えてんすか!?」
「まっ、一応、顔見知りだからな。どの道知ることにもなるだろーし」
「ダ、ダンナは、おれらの味方っすよね?」
「そうなんのか?あっ、そういえばあの薄気味悪い奴ら、お前の部下だったか?わりーなぁ、殺っちまって」
「そ、そうっすよ!マジでカンベンしてくださいよ!」
「ところで、あんな奴ら、お前らの部下にいたか?」
「えっ」
「あれ、どこで誰から手に入れた?」
「...いや、えっと、その、おれもよく知らないんすよ!」
「なるほどねぇ。確かにお前じゃ知らねーよなぁ」
「そ、そうっすよダンナ!」
「そんじゃ社長に直接聞いてみっか」
「えっ、あ、そうっすよねぇ...ハハハ(......いいのか?これで?)」
「......」
男は読めない表情で沈黙する。
ゲアージとの間に妙な緊張感が走る。(明らかにゲアージの方が気圧されている)
ユイは彼らの様子を見ながら、湧き上がる疑問をいったん頭の隅に置き、現状の打開に思考を切り替えた。
「...銀雷の処刑人。理由はどうあれ、助けてもらった事実は変わらない。感謝するわ」
「だからそのダサい呼び方やめてくれ......」
「ひとつ、お願いしていいかしら?」
「......改まった女の願いってのは、どうもなぁ」
「私はゲアージと決着をつけなければならない。だから、貴方は手を出さないで欲しいの」
「別に、好きにすれば?てか、ユイリスちゃん怪我してるよな?どうも変に思ってたんだが、勇者が苦戦するような相手だったか?あれ」
「......私にも色々と事情があるのよ」
「事情......ね。まっ、今はお互いあんまり深く知らない方が身のためだな」
「......」
「つーことで、ゲアージ。あとは頑張ってくれや」
「は、はあ」
男は数メートルほど離れていくと、ガサガサと煙草をふかしだして言った。
「でもまあせっかくなんで、久しぶりの勇者の戦いだけ拝ませてもらうわ(......事情とやらの一端がわかるかもしれないしな)」
遂に一対一となったユイとゲアージ。
荒涼たる夜の大地に対峙する二人。
両者の間にびゅうっと冷たい夜風が吹き抜ける。
「ゲアージ......お前だけは絶対に許さない!」
「あぁ?誰が誰を許さないだオイ?」
「なぜ......キースを殺した」
「なぜだぁ?そんなもんアイツが弱かっただけだろ?」
「......外道め!」
「あ、あの......」
「?」
「あ?」
緊迫した二人の会話に知った声が割って入る。
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