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殺し屋とわたし  作者: gottsu
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第一章 ③:傷だらけの出会い

「これで終わったのか・・・・?」

カンザキに引導を渡したジン。

暫しそのまま、亡骸となったカンザキの顔を眺めていた。

その時だ。

「ん!」

背後に気配を感じたジンは、一気に抜刀して振り返った。


「まぁ慌てるなよ若いの。」

振り返った視線の先にいたのは、白い高級スーツに身を包んだ男だった。

だがそれ以上に驚いたのは、その男の出で立ちだ。

逆立った灰色の毛髪に褐色の肌、顔はまるで鬼か化物といって差し支えない。

さらに体は、大木の様な手足に2mを遥かに超える長身と鎧を着ているかのような分厚い胸板をしていた。


これだけの巨体にも関わらず、ジンであっても寸前まで気配を感じ無かった。

だが実際目の前にすると一気に話しは変わる。

この男から漂う殺気は、さすがのジンでも緊張感を感じざるを得ない。


「アンタ・・・・カシラのワカスギか?」

「ご名答だ。」

そう、この男こそ竜神会内部では会長カンザキに次ぐNo.2、若頭のワカスギであった。

一部の警察関係者でも、ワカスギが現在カンザキに代わって組織を指揮しているとの噂はあった。

だが確証が持てぬ程、この大男は謎に包まれていた存在だったのだ。


「さて。」

そう言って、ワカスギはゆっくりこちらに歩を進める。

ジンにも、多くの部下が死んでいても、何よりも本部に警察が突入しているという状況に対しても、ワカスギからは微塵の焦りも不安も感じ得なかった。

ジンは視線を外さず、剣先を向けたまま一定の距離を保っている。

「死に顔ぐらい拝ませてくれよ。」

横目でジンを見ながら、ワカスギはカンザキの亡骸に近づく。


「オヤジ・・・・」

ワカスギは身を屈めると、優しくカンザキの顔に手を置いた。

「アンタが取り立ててくれなきゃ、俺は今ここにはいない。」

数m離れたジンは生唾を飲み込む。

緊張感は半端ではない。

「しかしまぁ・・・・・・・・

やっと逝ってくれて嬉しいぜクソジジイ。」

そしてスッとワカスギは立ち上がった。

ジンは瞬時に身の危険を感じてグリップを強く握った瞬間だ。


「ふん!!」

ワカスギは懐から拳銃を抜き、ジン目掛けて乱射した。

「くっ!」

咄嗟にかわし、側にあった家具に身を隠すジン。

「ハハハ!!どうした若造!」

ワカスギは狂気の笑みを浮かべながら、本棚に偽装していた武器庫から、代わる代わる銃を撃ちまくる。

「俺の組織をここまで潰した貴様だけは、絶対に許さんぞ。」

語気鋭く捲し立てるワカスギ。

だがジンは冷静に考えていた。

「出てこい!おら!どうした?」

「っるせぇな、出てってやるよ!」

ワカスギが全弾撃ち尽くし、次の銃に手をかけた僅かなタイミングを見計らってジンは飛び出した。

「っらぁ!!」

「ん!?がッああぁ!!」

左肩から右脇腹に、ジンは強烈な斬激を決めた。


手応えは完璧だった。

だが・・・・

「んへへへへ。」

「な!・・・・」

何とワカスギは倒れなかった。

確かにスーツは斬り裂かれ、血が噴き出している。

しかしその尋常でない筋肉が、斬激を受け止めたのだ。

まさに化物としか言い様がない。


「じゃあ・・・・次はこちらの番だ・・・な!」

(速い!・・・・)

ジンに飛び出したワカスギは、その体からは想像もつかないスピードで向かって来た。

「ぐうっ!!!!」

そのままワカスギは肉体を全力でぶつけて来た。

モロに受けたジンは、ガードこそしたものの数m後方まで飛ばされた。

「くっ!・・・・」

何とか空中で体勢を立て直して着地出来た。

だがワカスギの一撃は、確実にジンの肉体にダメージを与えていた。


(早いとこ決めないとな・・・・)

「うらぁぁ!!」

再び向かって来るワカスギ。

(ヤツのあのスピードじゃ逃げられない・・・・)

僅かな時間ながら、ジンは考えていた。

(この勢いを利用して・・・・)

ジンは刀を構える。

だが・・・・

「な!?」

先程同様に突っ込んで来ると思われたワカスギ。

しかし寸前で急ブレーキをかけたのだ。

「ぬぅん!!」

「ぐ!!」

直後にワカスギは右の拳を奮った。

間一髪、バランスを崩しながらも回避したジン。

今しかチャンスは無かった。

「っんん!!」

渾身のフルスイングを、ワカスギの左膝に真横から叩き込んだ。

ビャキッ!!

生々しい乾いた音。

膝の骨が砕けた音だ。

「ぐあああ!!」

普通の人間なら、一発で両足切断だ。

だがワカスギの頑強過ぎる肉体にはこれが限界だ。


「ぐぬう・・・・」

しかしながら、これにはさすがのワカスギも膝を着いた。

「うぐ!・・・・がああ!!」

だが2秒も経たぬ間、ワカスギは立ち上がり、まるで化物の如くにジンに飛びかかる。

「がら空きだよ・・・・おっさん!!」

「んず!!!!・・・・」

ジンの高速の突きが、ワカスギの分厚い胸板を貫通した。

直後、時間が止まった。

まるで強制的に電源を落としたように、ワカスギは沈黙した。


「はぁ・・・・はぁ・・・・」

歴戦のジンにとっても、かつて無い強敵だった。

ドスッと両膝が落ち、動かないワカスギから刀を抜こうとする。

しかし!

「んぬん!!」

「なっ!!?ぐ!・・・・」

なんとワカスギは息を吹き替えし、その太い両腕でジンの胴を正面からロックした。

しかもまだ刀が刺さったままだ。


「これで終わったとでも思ったか小僧?」

「うっ!ぐ・・・・あぁ!!」

ワカスギはジンの体をギリギリと締め上げる。

プロレス技で言うベアハッグというヤツだ。

ジンの腰骨や肋骨が悲鳴を挙げる。

「クソ!・・・・何で死なねえんだよ!・・・・」

ジンは何度も何度も、ワカスギの顔面に拳を撃ち込む。

だがワカスギの力は緩まない。


「貴様こそくたばれ。ふん!」

「ぐはあ!!」

ワカスギはそのままジンを壁に押し込んだ。

固い壁に叩きつけられるジン。


「もう一発か?そのまま外までブチ破ってやろう。」

そう言って、ワカスギはジンを抱き抱えたまま後方へ下がる。

「ぐう・・・・」

さすがにヤバい。

ワカスギが再度勢いをつけようとした寸前、ジンが動いた。

「離・・・・せ!気持ち悪いんだよ!!」

「んがあああ!!」

咄嗟に指でワカスギの両目を突いた。


「うおぁ!!」

「なっ!?あぁ!!」

激痛に苦しむワカスギは、闇雲にジンを後方へ投げ捨てた。


「ぐはあ!!がは・・・・」

投げられたジンの体は部屋の扉を破り、廊下を挟んだ向かいの部屋の扉まで叩きつけられた。


「おお・・・・うがあ・・・・」

ワカスギは両手で顔を押さえて踞る。

それを朦朧とする意識の中で見つめるジン。

「クソ・・・・メチャクチャしやがってアイツ・・・・」

ジンは向かいの部屋の扉に頭だけもたれかかって倒れていた。


「うく・・・・!あぁ!!」

激痛を堪えながら、何とか立ち上がろうとしたジン。

だが衝撃で半開きになった扉が開き、後方へ再度倒れこんでしまった。


「うう・・・・はっ!」

再び立ち上がろうとした時、ジンはある事に気付いた。

その部屋はカンザキの部屋と同じように、広くて高級な感じのする応接室だった。

だがその部屋の片隅に、若い女がいたのだ。

しかし、口には布を噛ませられ、手錠をかけられた状態で天井から吊るされているという異様な姿だ。

「んん!!ん!ん~ん!」

女は身をよじり、恐怖ともパニックともとれるうめき声を上げていた。


だがそれに気を取られていたジン。

その僅かな間に、ワカスギが回復している事に気付かなかった。

「が!うう・・・・」

ワカスギは片手でジンの胸ぐらを掴み上げた。

ワカスギは両目から血を滴らせ、化物染みた顔に拍車が掛かっている。

「よそ見はイカンな小僧。」

そう言って、左手で自らの胸を貫通している刀を引き抜いた。

そして足元の床に突き刺す。

「これが無ければ、貴様は無能なガキだ。ううん!!」

「ぐはあ!!あがはあ!!」

ワカスギは片手でジンを放り投げた。

まるで木葉の様に宙を舞い、カンザキの部屋の床に叩きつけられるジン。


「はぁ・・・・く!・・・・はぁ・・・・」

起き上がる事の出来ないジンに、ワカスギはゆっくりと近づく。

「じゃあ今からじっくりと楽しませともらうとするか。」

ワカスギはニヤリと笑った。

「なぶり殺しだ。」

「く!・・・・」

するとジンは、目の前に落ちていた拳銃を咄嗟に手にした。

先程乱射された際、ワカスギの使った銃のいくつかに残弾がある事を知っていたのだ。

「ほう。」

ワカスギに向けて銃を構えるジン。

「そうだ撃て。撃ってみろ。」

ワカスギは両手広げてみせる。

そして・・・・


乾いた音が室内に響いた。

だがワカスギは倒れない。

弾はワカスギの顔を掠め、天井に命中していた。

「おいおい、この距離で外すか普通?」

だがジンは冷静だった。

「ふっ。」

軽く笑うジン。

「ん?」

その様子に、ワカスギも眉を潜める。


「外してねえよ・・・・」

「何?」

慌てて振り返ったワカスギ。

彼の眼前には、天井に吊るされていた巨大なシャンデリアが迫っていた。

そう、ジンは初めからシャンデリアの鎖を撃っていたのだ。

「うごあぁ!!!!」

轟音と共にシャンデリアに潰されたワカスギ。

いくら巨大な男でも、それより巨大なシャンデリアの下敷きになれば一溜りもない。


地響きが止むと、室内は静寂に包まれた。

砕けたガラス片の間から、ワカスギの血がゆっくりと流れ出していた。


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