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殺し屋とわたし  作者: gottsu
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第一章 ②:血戦

マンホールに入ったジン。

そのまま下水道を移動し、ある場所までやって来た。

上まで梯子が伸びており、ジンはその梯子を軽快に駆け上がる。

そして頂上までつくと、ゆっくりと蓋を押し上げた。

鼻から上だけを出し、目線だけで回りを確認する。

人気が無いとわかると、ジンはマンホールから飛び出した。


ジンが地上に出た場所、そこは本部ビルの裏側の敷地だった。

何台もの黒塗りの高級車が並んでいる。

駐車スペースとしている箇所なのだろう、ジンは闇夜とそれらの車両に紛れながらビルに近づいた。

そして目線の先、そこにはいかにもヤクザの事務所らしい小さな金属製のドアがあった。


そのドアの向こう側、そこは裏口兼若手組員の待機部屋となっていた。

「いいか!ヤツらが乗り込んできたら構わずブッ放せ!絶対オヤジに近づかせるな!」

「おう!!」

中には5人の若手組員がいた、全員拳銃やショットガンを手にし臨戦態勢だ。

「ん?」

すると、1人の組員がある事に気付いた。

ドアの外側には、駐車スペースを写し出す2台の監視カメラがあり、室内のモニター2つにその映像が常時映し出されていた。

だがその中の1台が映像を映さなくなった。


「おい!おかしいぞ!誰か見てこい!」

モニターの異変に気付いた組員が、恐る恐るドアへ向かう。

他の4人は銃を構える。

そしてゆっくりドアを開け、半開きのドアから体を軟体動物の様に外に出した。

「ただの故障か・・・・?」

組員がその視線を右側に向けた直後だった。

「よっ。」


その組員にとっては、1秒にも満たない時間だった。

壁際に見知らぬ若い男が薄ら笑っていた。

何か眼前に銀色に光る物があるとわかったが、それが人生最後の光景だった。

ドッ!!

「っぶ!!」

ジンは刀を真正面に突き出した。

それは組員の眉間から後頭部を容易に貫いた。


その勢いのまま、ジンは室内に飛び込む。

最初の組員が串刺しになったまま、ドアの正面にいた組員の喉元を貫く。

「あああぁ!!!!」

驚き叫ぶ組員達。

ジンは素早く刀を抜いて串刺しの2名を振り払うと、銃を両手で構えた隣の組員の腕を下からの斬り上げで切断、さらに身を回転させて4人目の心臓を一突き、最後の組員はフルスイングで首をはねた。

僅か数秒の出来事だった。


「ふぅ。」

まるで舞踊を舞うかの如き斬撃。

室内にはただ屍から溢れ出す血液の音だけが微かに響いていた。


その後のジンの行動は速かった。

部屋を飛び出し、出合う組員を立て続けに斬り伏せていく。

彼の目指す場所は最上階の20階。

会長のカンザキがいると思われる所だ。

今回の任務、それはカンザキの暗殺だ。

オオガミ曰く、反マフィア法制定以降、警察も逮捕して裁判にかけるなどという流れは毛頭無いのだそうだ。

どのみち会長筆頭に幹部連中は全員死刑が宣告されるだろう。

ならばその手間を省いてしまえという事だ。


そしてジンの動きと同時に、正面からは警察・特殊部隊が突入を開始した。

上階へ駆け上がるジンにも、下階からの銃声とたくさんの人間の怒号や罵声が耳に届いた。


だが気をつけなくてはいけない事がある。

それは他の警官や隊員に姿を極力見られない事だ。

斬殺死体はそのままでも構わない。

警官達もそこまで気にしている余裕は無いし、後処理は何とでも出来る。

だが姿だけは別だ。

現状、ジンの存在を知る警察関係者はオオガミとマツサカの2人だけだ。


「はぁ・・・・はぁ・・・・」

さすがに20階分もの階段をハイペースで駆け上がり、さらに道中で戦闘もこなせば息が上がった。

だが上階へ上がれば上がる程、組員の数は減っていった。

大半が1階付近へ駆け降り、そこで警官隊と交戦していたからだ。


そしてたどり着いた最上階の20階。

それまでのフロアと違い、廊下一面に絨毯が敷かれ、まるで高級ホテルの様な雰囲気だ。

会長カンザキは大豪邸を所有していたが、この本部ビルにも居住スペースを設けていた。

恐らくこのフロア全てが、カンザキ以下限られた人間しか立ち入れぬ聖域なのだろう。

その奥の部屋。

数段ある階段を登った大きな扉が見えた。


ジンは足音を立てずに扉に近づく。

扉に耳を当て、気配を感じ取る。

そしてゆっくり扉を開けると、一気に刀を抜いて身構えた。

「ん?」

ジンの目に飛び込んで来たのは、豪勢ながらも殺風景な室内に置かれたベッドだった。

まるで映画に出てくる金持ちが使っていそうな特大のベッドだ。

四隅に柱があり、天井もある。

そして四方は白いレースで覆われていた。


するとジンは刀を鞘に納め、ベッドに歩みを進めた。

一定のペースで機械音が聞こえる。

恐らくは心拍数だ。

そしてレースを捲ると、不釣り合いな程巨大なベッドに男が寝かされていた。

下半身には布団が被せられていたが、その男は骨と皮しかないぐらいに痩せ細った老人だった。

「なるほどな・・・・」

ポツリと呟いたジンは、携帯端末を手にする。

(もしもし?どんな状況だ?)

相手はオオガミだ。

「やっぱりだ。会長のカンザキは生きた屍だったぜ。」

(やはりそうか・・・・)


ベッドに寝かされていたのは、紛れもない竜神会会長のカンザキであった。

ジンも以前、写真を見てカンザキの顔と成りは把握していた。

前頭部こそ流石に薄いが、力強い白髪と髭を蓄え、パッと見は金持ちのご隠居という感じだが、その目付きだけは堅気のそれではない風体をした人物だった。

だが現在目の前にいるカンザキは、生命維持装置に繋がれた、文字通り生きる屍だったのだ。


「誰か下の連中が、この動けねぇ爺さんの威光を利用してたんだな。恐らくは10年前から・・・・」

ジンもオオガミも、カンザキの意志があるならば、竜神会がここまで巨悪化などしなかったと践んでいたが、見立通りだったのだ。

(やはりカンザキ以外の人間がマフィア化の原因か・・・・

しかしまぁ、やる事はやってくれ。)

「あぁ。」

そしてジンは電話を切ると、その手を装置のスイッチにかけた。

スイッチを切ると、一定のリズムの機械音はピーという音へ変わった。


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