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梅田駅34号線

この物語は私が大阪近郊の私鉄沿線に住んでいる夢をよく見ることから、全く架空の現代の大阪の若いカップルが私の現実の初恋の世界に迷い込むというエピソードです。大阪のカップルは100%私の創造ですが地名については実在のものです。阪急梅田駅は行ったことがありますが、他はGoogleマップ、ストリートビューなどを参考にしました。


<ときめきプロファイル>

谷村ひとみ(仮名)

初恋の相手。

大阪に本店がある都市銀行の社宅に大阪から転校してきた。都会育ちということもありクラスの男子は興味がある反面、反発もしていた。家が近いのでノートか何か貸してあげたのになかなか返してくれないので彼女の家まで取りに行った。母親が出てきて彼女には会えなかった。女子にシール集めが流行っていた。彼女は転校してきたばかりでまだみんなになじめていなかった。彼女を喜ばせたくてレアなシールをあげようと、女子にくじ引きで譲ると言って、あたりをこっそり教える手紙を彼女の机に入れておいた。それが他の女子に見つかりクラス中の噂になった。彼女と村上さん(仮名)が『ちょっとエッチなおままごと遊び』の様なことをしたと言っているのが聞こえた。妄想をかき立てられて、自分もそのいけない遊びをしたいと思いなんとかきっかけが作れないか下校する2人についていき3人で一緒に帰る様になった。学校で指示されてもいないのに学級新聞の編集という名目で彼女と村上さんを自宅に呼んだ。ふたりは新聞には関心がなく「おままごと」は言い出せなかった。彼女がカーテンに隠れたので探して中に入ったら村上さんに「そこでふたり隠れて何しよっと?キスしたとだろ?」と言われた。否定したが「キスの真似したら許してあげる。」と言われ、彼女が唇をつけるのはいやと唇を噛み込んで上顎と下顎同士を触れ合った。6年生の時、机の上に立て膝で座っていたので半ズボンの横からはみ出しているのを彼女に見られたらしく、何度もその話しでからかわれた。私が男子トイレで用を足している時、後ろでクスクス笑い声がするので振り返ると女子ふたりが男子トイレの個室に忍び込んでいて後ろからのぞかれていた。掃除時間、彼女が持っていたモップの柄が自分の股間を直撃してかなり痛かった。彼女もすぐにどこに当たったかわかったらしく心配していたが半笑いだった。女の子に見られたり、突つかれたり、その当時は恥ずかしくて彼女との距離は少しずつ遠くなっていった。今、思うと自分が吉田さんと噂になったり、加納さんの事が好きなのも秘めていたはずだが女子達は気づいていて、彼女は他の子と噂がある自分の関心を引こうとわざと私の下半身のことでからかったりしていたかもしれない。出会いから心が離れて行くまでの甘酸っぱいエピソード。これこそ初恋ストーリーかもしれない。


よく夢に出てくる景色がある。

私鉄の駅前でしかも東京近辺ではない。

行ったことがないのに大阪近郊の京阪か近鉄・阪急の小さな駅で商店街があり、そこからちょっと入った所に住んでいる。

谷村ひとみが熊本に転校しないで大阪に住み続けていて、僕もその近くに生まれていたら。そんな妄想の世界に飛び込んでみた。



僕は大阪で生まれ育ち大学を出て、地元で就職し家の近くの営業所に異動になりもうすぐ三十歳になる。

その年の春、新入社員の女の子が営業所に配属されてきた。

グループが違ったので仕事でからむこともなく、職場で話すこともなかった。

歓迎会もグループ単位でやったので互いによく知らなかったが、何となく彼女の視線を感じることがあった。

手帳か何か忘れ物をして取り違えた。

「イニシャル、同じですね」それが最初の会話だった。

ある日、昼休みにひとりで近くのうどん屋にいたら、彼女が入ってきた。

混んだ店内で隣にだけ空席があったので

「ここ、空いてるで」と声をかけてあげたら、うれしそうに隣に座った。

食べ終わり、彼女の分も一緒に支払った。

「すいません。おごってもらって。」

「先輩やから、当然やろ。」

「てしまさんって何年目ですか?」

「7年目。」

「え?そんな。」

「すまんな。若いイケメンやなくて。」

「違います。昔、どこかで会った気がして、同級生か少し上くらいかな思てました。」

「7つ違うと小学校から大学まで一個も被らんしなぁ。」

そう言っているうちに職場に着いてしまった。

ただ、僕も彼女と昔、どこかで会った様な気がしていた。

そういう意味で気になる存在だった。


会社で大きなパーティーがあった。

ビンゴで、ものすごく大きな賞品が彼女に当たった。

おそらく実際にビンゴになったカードを誰かが新人の彼女に譲ったのだろう。

二次会は同期たちとはぐれてしまい、入社直後本社で一緒だった先輩が誘ってくれたのでついて行った。

彼女のビンゴの賞品が大きくて代わりに持ってあげていたので彼女も二次会についてきた。

新入社員なので彼女の所に代わる代わる他の先輩が来て話しかけてくる。

ひと段落したら、彼女が僕に話しかけてきた。

「てしまさん。前世とか生まれ変わりってあると思います?」

「そこまで信じてないけど、デジャヴていうの?どこかで見た景色とか初めてのはずなのに同じ事をしたことがあった様な奇妙な感覚とかよくある。」

「ですよね。こないだお昼ご馳走してもらったとき、ちょっと話したでしょ。てしまさんとは子供の頃、会った気がするって。」

「うん、おぼえてる。あの時、七つも違うからそんなわけないやろって言ったけど。実は俺も谷村さんと子供の頃、会った様な気がする。」

「うち、子供の頃、九州に住んでたって夢をよう見るんです。でも転校した覚えはないし、親に聞いてもアルバム見ても大阪から離れたことなくて、やっぱり夢かと思ってました。でも、最近、九州に居る夢を見ることが増えて。」

「てしまって福岡に多い名字で、先祖は福岡らしいけど、自分は大阪生まれで九州に住んだことない。」

「空想してみたんです。小学校の時、うちが宇宙の迷子になって。」

「宇宙の迷子?」

「聞いてください、あくまでも空想ですから。」

「はい。」

「親が九州に転勤になって転校したんらしいんです。社宅の近くに同じクラスの男の子がいて、転校してきてばかりで友達もいなくて寂しかったとき、ノート貸してくれたり、学校から一緒に帰ったり。」

「七年間九州に住んでいたら急に宇宙の迷子から元に戻ってきて、しかも全然、歳をとってなくて。それでてしまさんと年齢差ができたんかなぁって。」

「矛盾がある。俺もずっと大阪で生まれ育った。もし同じように宇宙の迷子になって九州に行ってたら、自分も元の時代に戻るはずやから七つの年の差はおかしい。」

「あ、そうか、残念。」

「でも、ありがとな。俺のこと幼馴染の生まれ変わりて思ってくれてるなんて。」

(この雰囲気はもしかしてお持ち帰りオーケーのサインかな。

ただこの子と同じくらいの大きさの熊のぬいぐるみも一緒にお持ち帰りせないかん。)

二次会もお開きとなり、淀屋橋から帰ろうかとも思ったが、荷物が大きいし彼女もお持ち帰りするにはタクシーを使った方がいいと思った。

「梅田から阪急電車乗って、そこからタクシーで帰ろか。大きな荷物あるから送って行ってやる。」

阪急梅田駅のだだっ広いホームで急に酔いが回ってきた。

でっかいビンゴの賞品を持っているので息が切れて酔いが回る。前がよく見えない。

しかも、彼女が一人でさっさと前を行く。

京都線と違うのではないかとも思ったが彼女を見失うわけにもいかず、彼女について電車に乗った。

荷物があるので座れるように各駅に乗ったのだろう、外の景色は全くわからなかった。

意外に早く突然彼女が席を立ち電車を降りた。

あわてて自分もついていき、タクシーに乗った。

頭の中がこれからのシミュレーションでいっぱいでどこで降りたか意識になかった。

それで運転手に行き先をどう言おうか迷っていた。

「てしまさん、どこ行く?」と彼女が聞いた様な気がした。

多分、空耳だった。

しかし、異常にテンパっていて何故か「まかせる」と口に出た。

運転手が勘違いしたのか「はい」と言って車を出した。

タクシーの中で急に眠くなった。

「いかんいかん、寝たら、酔うたらお持ち帰りできん。」

睡魔と戦っていたが車が止まった時に意識が戻った。

「ここで、いいです。」

彼女の声がした。

しまったと思った。

とにかくタクシー代を払おうと財布を探しているうちにドアが閉まり、運転手から

「お客さんはどこまで?」と聞かれた。

逃げられたと観念し、家に帰ろうと、

「陸橋越えて駅の反対側のファミマの先で。」と答えたら、

「どこの?」と聞き返された。

「170号をマツダの角で曲がって下さい。香里園です。」

「寝屋川ですか?遠いなぁ。名神乗ってもいいですか?」

「え?僕らどこから乗りました?」

「服部天神ですよ。ここ豊中ですけど。」

「あかん、やっぱり梅田で乗り間違えとる。僕らどこまでって頼みました?」

「まかせるて言わはったんでこの時刻やし、これからデートかなって豊中インターまで行こうとしてたら、お連れさんが途中で『ここでいいです』て。まかせるって聞き間違えでご自分の家で降りたんかなて思ってました。」

「あいつ、どこ行ったんや。酔うとるな。」

「すんません、おろしてください。豊中から家までタクシーなんかよう乗らん。」

駅から離れていない所だったらしくタクシー代は千円位だった。

お釣りをもらいながら、

「忘れ物に気いつけて」と言われた。

「あぁぁ!!熊さん忘れとる!月曜、会社に忘れもんですよってこれ背負っていくんかい。追いかけな。」

豊中はほとんど来たことが無いし真夜中だが、何となく景色が変だ。

大阪近郊だから、豊中だろうが寝屋川だろうが似た景色のはずなのに匂いというか空気感が違う。

時代も違うような。

深夜にしても真っ暗で昭和にタイムスリップした様な感覚がした。

少し広い道に出た弁当屋の前に彼女が立っていた。

「ここにおったんかいな。何や腹減ったんか?」

「ここ、ほっともっとやったっけ?」

「知らんわ。俺は初めて来たし。お前、豊中に住んどったん?」

「違う。ずっと枚方で大学は京都。ここ豊中なん?うちも豊中来たことないけどタクシー乗ってて、見覚えのある景色になったんで降ろしてもろた。なんか小さい頃、ここの近くに住んでいた気がする。ねぇ、ここって昔、てしまくんちじゃなかった?」

僕はいつの間にか彼女を「谷村さん」ではなく「お前」と呼んでいたが、彼女は僕を君づけで呼んでいた。

それが、不自然じゃ無いほど違う世界に入り込んでしまった感覚だった。

その弁当屋は初めて見るが周りの景色には何故か見覚えがあった。


自分ではない誰かの記憶が飛び込んできた。

この先の信号を右に曲がると奥にホテルがあったはずだ。

「あっち行ってみよう。」

信号の方に連れて行った。

横断歩道を渡ろうと信号を待っていたら、彼女が左に曲がり歩き出した。

「ちゃう、あっちやホ・・・」

危うく自分の目的地を口にしかけた。

不思議なことに左に折れた真っ暗な道にも見覚えがある。

数メートル先の四階建てのいかにも昭和の社宅といった建物の前で彼女が止まった。

「なつかしい。」

「やっぱり、昔は豊中に住んどった?」

「違う。ハリーポッター。」

「はっ?ここ豊中やで。U S Jがどこにあるか知らんの?」

「ハリーポッターってロンドンの大きな駅の存在しないホームから魔法の国行きの列車が出るでしょう。梅田にもあったのよ。34号線ホーム。私たち二人、子どもの頃の世界に迷い込んだのよ。」

なんとなくこの社宅に見覚えがある。

自分とは違う誰かの記憶はもっと鮮明になって、僕に乗り移ってしまった。

ここに転校してきた女の子がいた。

僕の初恋の相手だ。

その子のことが気になり始めていて、転校してきたばかりでノートか教材か何か貸してあげた。

何日たっても返してくれないので催促すると家に忘れてきたと言う。

翌日でも構わないのに「帰ってから家まで取りに行っていい?」

それを口実にその日、社宅を訪ねて家の中に入れてもらえないかワクワクしながら四階まで上がった。

玄関で母親が出てきた。

本人に会えなかった。

翌日、学校で

「昨日ありがとう。お母さんから勉強ができる人とともだちになりなさいって言われてたからよかった」と言われた。

今、思えば引っ越していきなり男の子が娘を訪ねてきた。

娘のボーイフレンドとして相応しいか母親として審査したのだろう。

「わたし、ここに住んでた。行ってみよう。」

社宅は人が住んでいる気配がないが廃墟のようでもない。

階段を四階まで上がったがやはり人が住んでいる気配がない。

彼女は自分の家と信じているのか、ためらうことなくチャイムも押さずドアノブに手をかけた。鍵はかかっていなく自然に開いた。

人の気配はなく真っ暗だが彼女がごく自然に部屋の明かりを点けた。

室内そのものも生活感はないがウィークリーマンションの様に必要最低限の家具・電化製品はある。

不思議な空間だ。

「あ!見つけた。」

「何?何?」

つい最近引っ越して行ったような部屋の柱に女の子らしいシールが貼ってあった。

「お前が貼ったんか?」

「それは覚えてないけど、シール。4年生の時、女子にシール集めが流行ったでしょう。」

「みんな友達と交換したり男子からもらったりしてた。」

「朝、学校行ったら机の引き出しに手紙が入っていて。『くじは3があたり』て書いてあった。」

「そしたらてしまくんが女子たちに『すごいシール手に入れたからくじで当てた人にあげる』て。手紙の通り3を引いてシールをもらった。」

「うれしかったけどちょっと恥ずかしかった。そしたら、朝、手紙を机に入れるとこ見てた子がいて、『谷村さんがてしまくんからラブレターもらったらしいよ。』ってクラス中の噂になった。」

「あぁ、あの時のシールか。そんなことあったなぁ。」

「痛っ。」

突然、彼女が左胸を押さえた。

「どうした?」

「心臓が、なんか変なの。」

「やばい、救急車呼ぶか?」

「大丈夫、そんな病気でなくて、ドキドキがすごくて。」

それでも心配になってそばによると腕を掴まれた。

「ほら、心臓が、踊ってるみたい。それでチクチク痛い。」

彼女の心臓に手を当てさせられ、その上から右手で抑えられた。

思ったより彼女の胸は小さくて、子供のようだ。

「ほんとに大丈夫か?」

「うん、でも少し休みたいから布団敷いてくれる。」

押し入れを開けたら布団とタオルケットがあった。

柄が女の子っぽいし、大人でなく少女の匂いがした。

「てしまくん、こっち来て。」

呼ばれて、近くにいくと「こっち」と何度も言うので添い寝のようになった。

「ごめんね。いじわるとか、恥ずかしいこと言ったり、したりばっかりで。」

「てしまくんと最初は仲良かったのに、私も友達も増えて、他の男子とふざけたりするのが楽しくなって。」

「てしまくんは噂のある子ができたし、好きな子が他にもいるって言うし。悔しくて意地悪したくなって。でも本心は気をひこうとしたのかな、のぞいたり、つついたり。興味あったの、てしまくんにもあそこにも。」

少女のような瞳と声で告白っぽいことも言っているけど下ネタも混じっている。

半ズボンで片膝で座っていたので、

「はみ出しているのが見えた」と彼女に何度も言われた。

見られたのも恥ずかしいが、「見えた」と直接本人に言うか、女の子のくせに。

「のぞいたり」とはそのこととして

「つついた」ってあの事か?

「谷村さん、僕のどこつついた?」

「たま」

さっきの下ネタが今度はさらに直球で来た。

「いつ?」

「6年の掃除時間。モップの柄でちょっといたずらしようと思って。モップなら直接でないし、偶然当たったフリすればと思って。そしたら、力が入りすぎたのか、たまたまてしまくんが動いたのか、真ん中を直撃したみたいで。痛かったでしょう? ごめんなさい。」

「あれ、ワザとだったの?僕は偶然ぶつかったと思ってた。」

掃除の時、モップの柄が直撃してものすごく痛かった。

そのころは半ズボンのはみ出しやトイレを覗かれたり、からかわれたりして、彼女から心が離れていた。

クラスに別に好きな子がいた。

でもかつて好きだった女の子に間接的とはいえ、いじられた。

ドMの素養がその頃からあったとみえて、涙が出ているに少しうれしかった。

ここって女の子にイタズラされると痛いけど気持ちいいんだと不思議な感覚だった。

「私、てしまくんがものすごく痛がってるんでびっくりして。」

『どこにあたった?潰れた?どうしよう、潰れたらどうなるの?』

て言ったら、周りの男子が冗談で、

『潰れたら、一生結婚できなくなんだぜ』って言われて。

『てしまくん、ごめんね。もし結婚できなくなったらおわびに私が代わりにしてあげるから。』

って言ったら、男子たちに大笑いされて。」

「そんなこと、言ってたの?あまりに痛くて後半、おぼえてない。」

話題が下半身に行ってしまったので、少し軌道修正しようと、今度は僕から切り出した。

「おぼえてる?キスの真似させられたの。」

「あ、あれ」

やっぱり、おぼているんだ。

「僕んちに学級新聞作りとか嘘ついて村上さんとふたり呼んで遊んでた時。君がカーテンの影に隠れたから何してんだろうって入って行ったら、すぐでてきた。でも村上さんが『ふたり、そこで隠れてキスしてたでしょう。』って騒いで。」

「うん、そうだった。」

「二人とも必死で否定するのに村上さんが納得しなくて。それでどうしてか、キスの真似をしたら許すみたいな話になってさ。」

「あの時もそうだし、教室でも、てしまくんをからかおうと『キスしていいよ』て言ったら顔近づけてきたんで、すぐしゃがんで『ばーか』て言いながら逃げたり。そんなことしょっちゅうしてた気がする。」

「でも、ほんとに二人きりだったらちゃんとキスしてたと思うんだけど。」


「ふーん。今なら誰もいないよ。」



目が醒めた。

ホテルに居た。

ベッドの横に彼女がいる

「おはよう。」

「心臓ようなったか?」

「えっ?」

左胸に手を当てようとしたら、

「やめて!くすぐったい。」

表に出たら豊中ではなく茨木の近くだった。

電車に乗り間違えてはいなかった。

「楽しかったね、色々。」

「色々?」

彼女の顔を覗き込んだが意味ありげに微笑んでいるだけでそれ以上、話さない。

「週刊文春おらんやろな?」

「撮られたらどうしよう?」

「あほ、芸能人とちゃうわ。」



<十年後>

その後、僕らは短い交際期間ののち結婚し、すぐ女の子が生まれた。

この春4年生になる。

会社で上司に呼ばれた。

「内示やけど、おめでとう出世やな。」

「は?」

「支店長」

「どこの?」

「熊本」


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