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泥棒猫

<夢日記>

2021年6月4日

まどろみの中で小林りえから小学校卒業直前に告られ、避妊して関係を持ち、彼女が勝ち誇った様に吉田さんに「てしまくんは私がいただきました。」


<ときめきプロファイル>

小林りえ(仮名)

小学校6年間同じクラスだった。その頃は腐れ縁という言葉を知らなかったが一緒に学級委員になったり絡むことは多かった。苦手なタイプだった。冷たくて自分をばかにしている印象があった。ある年の遠足でお弁当の時間に自分が男子のどのグループにも入れてもらえず1人で食べていたら、彼女がおいでよと女子のグループに入れてくれた。忘れ物か何か渡す物があったか彼女の家に行って室内まで招き入れてくれた。自分から電話をかけたり、アポなしで行く事はありえないので平日の夜に電話がかかってきて仕方なく行ったのだろう。意外にも彼女はものすごく歓迎してくれた。学校で見せるのとは全く違う笑顔と女の子らしい雰囲気で親からも歓迎された。帰るときにはなぜかドキドキしていた。それ以来、小学校卒業間際に急に仲良くなった記憶がある。

小林りえとは小学校を通じて同じクラスだった。

男女それぞれで成績がクラス上位だった。

そのためか1学期の学級委員になることが多かった。

例えば「男子は掃除の時間にサボってる。」

などの女子の意見を彼女が代表して僕に言ってくる。

「あなた学級委員でしょう。ちゃんとやらせなさいよ。」

この様なことを言われていたに違いない。

苦手なタイプだった。

彼女の呼びかけで重い障害を持った子どもが療養している施設にクラスの有志で月に一度、日曜日に慰問していた。

僕は当初、慰問に参加しなかった。

彼女がリーダーだったからかもしれない。

そんなある日、なぜか彼女の自宅の国家公務員住宅に呼ばれた。

曜日や時間帯はもちろん、なぜ嫌いな同級生のしかも女子の家に男ひとりで呼ばれたのか全くおぼえていない。

忘れ物か届けるものなら家に行かなくても学校で渡せる。

彼女が無理やり理由を作ったのか乗り気でないし恥ずかしかった。

ところが彼女は学校で見せる冷たく僕を見下している感じは全くなかった。

笑顔が可愛くて、両親にも僕のことをとてもいい人で仲のいい友達と話した。

たいした用件でもなかったはずなのに結構、長い時間、彼女の家に居た。



ふと気づくと彼女も親もいなくなっていた。

妹は元々、不在なのか会っていない。

黙って帰るわけにもいかず、誰もいない部屋の中でじっと待っていた。


何か周りの気配が変わった。

彼女がようやく出て来た。

「てしまくん。ちょっと話があるから私の部屋に来て。」

子供部屋は姉妹二人で使っているので2段ベッドがあって、そこに腰掛け、彼女が話し出した。

「吉田さんとはどうなの?」

 私は吉田みどりが僕のことを好きだと言っているのに態度を曖昧にしているので、友人として吉田みどりの後押しをする意味で聞いてるのだと思った。

「ううん、どうなのってどうでもない。」

「じゃあ、好きじゃないんだ。」

「ごめん、よく分からない。」

 私は彼女に責められるかと思ったが反応は逆だった。

「よかった」

「えっ?」

「私、別にてしまくんの事、好きじゃないけど、てしまくんと吉田さんが両思いだと妬けるの。」

子供だった僕は同じ年齢のこういった女子の心理が理解できなかった。

「小林さんにまた怒られると思ってた。」

「誰か好きな人が居る?」

「加納さんかな。」

「やっぱり、噂は知ってる。で、加納さんはどうなの?」

「分からない。だめだと思う。」

「最初から諦めてんだ。」

沈黙があって、短い間に時空を飛び越えた。

ふたりとも中学2年生くらいになっていた。

「じゃあ、私の事どう思う?」

返事を考える間も与えず彼女が僕に近づいて来た。

驚いてその場に倒れ込んだら彼女が覆いかぶさって来た。

「わたし、吉田さんからてしまくんを奪いたい。」

「えっ?奪うって?」

「吉田さんとはキスしてないんでしょ?だったら私が先にファーストキスの相手になる。そしたら私の勝ち。」

彼女が唇を近づけて来た。

咄嗟に逃げようとしたが彼女が覆いかぶさっている。

体ごと持ち上げられないので両肩を掴んで半回転したら、僕が彼女に覆いかぶさる体勢になった。

そのまま起き上がりベッドから出ようとしたが彼女の両腕でギュッとしがみつかれた。

これで体が密着。

初めて体験する柔らかい女の子の体の感触に彼女に対する感情や恥ずかしさが消え男の本能が現れた。

わけがわからないまま関係を持った。


また元の小学校6年の僕が公務員宿舎に居た。

彼女も家族も居た。

直前のことは何も覚えていなかった。

最初、いやいや来たが楽しくて、思ったより長居して、夜遅くなっていた。

なぜか、僕の家まで帰る途中、ものすごくドキドキして、とてもいいことがあった妙な感覚に浸っていた。


高校2年の文化祭、僕は模擬店でコーラを売っていた。

県立の女子高の制服を着た生徒が来て、僕に話しかけて来た。

最初、誰だか思い出せなかった。

一度、いなくなった彼女がしばらくして戻って来て、メモを渡した。

「終わったら裏門で待ってます。小林」

それで小学校の同級生、6年間腐れ縁の小林りえだと思い出した。

クラスメイトは名門女子高の生徒が来ただけで大事件の上、わたしに話しかけたり、手紙を渡したり、冷やかすのを通り越して起きてはいけない奇跡を見てしまった雰囲気だった。

そんな子と裏門で待ち合わせ彼女が乗って来た自転車を押しながら、並んで歩くというありえないシーン。

僕は小学校の卒業アルバムの住所録を見て彼女が引っ越していたのを知った。小学校を卒業してからは楠中学に通っていたものだと思い込んでいた。

別れ際に彼女が「今度、八景水谷公園に行かない?」と言い出した。

慰問で熊本電鉄によく乗ったがその途中でいつも通り過ぎていた公園に小学校卒業の春休みにクラスで遊びに行った思い出がある。

それから彼女との交際が始まった。

ある日「今度の金曜日、うちにおいでよ」と言われた。

彼女の父親は国家公務員とはいえ地元採用なので転勤はないと郊外に家を建てていた。

ところが、宮崎県庁に出向になり、単身赴任の習慣やリロケーションの制度がない時代。

名門の公立高校に入っ彼女は宮崎に編入せず、妹はちょうど高校入学前だったので受験に備え転校していて彼女が平日はひとりで自宅に住んでいるとのことだった。

家族不在の女子の家に夜、行くとなるとそれだけで興奮は最高潮に達し、自動販売機で6個入りを準備して出かけた

高校に入ってからは試験終わりの打ち上げに結構、外泊していたから僕の親には心配いらなかった。

さすがにいつもの公園デートとは彼女の雰囲気が違っていた。

でも、やっぱり怒っている。

「どうして中学も一緒だったのに何も覚えてないの?」

「クラスが全然別だったじゃない。」

「でも、あんなことあったのよ。それも覚えてないの」

彼女が少し涙声になった。

「わたし、てしまくんにあげたのよ。あげたのに捨てるの?忘れるの?」

「えっ?何のこと?何か大事なものをもらった?」

「女の子の一番大切なもの!」

山口百恵の『ひと夏の経験』がヒットしたのは3年前のこと。

歌のヒットも彼女が言っている出来事も同じ年。

ようやく意味が理解できたが身に覚えがない。

彼女の怒りは頂点に達しそうだった。

何でもいいから何か思い出そうとした。

思い出せるのは小学校のとき、なぜか彼女の家にひとりで行ったこと。

その帰りなぜかドキドキしていた。

だんだん思い出して来た。

「話がある」って呼ばれた。

あれって、小学校のあの時?

そうだ中学では彼女とは全く会っていない。

引っ越して公務員住宅には住んでいないはず。

ふたり時空の破れ目から別の世界に飛び込んだ。

僕の口から自然とこんな言葉が出て来た。

「泣かないで。今日が初めてでなければ君も僕もわかるはず。あれは事実だったと。」

夜が明けた。目を覚ました彼女がこんな話を始めた。

「わたしたちふたり、前世で夫婦だったの。」

「わたしが口うるさくて喧嘩ばかりしていて、それで別れちゃった。」

「生まれ変わったら、仲良く幸せに暮らしたいって思ってたのかな。」

「生まれ変わって、小学校から互いの前世を知らずに同じクラスになって、学級委員とか一緒にやらされ、それで喧嘩したりして。」

「前世の自分が前世の元カレに好きな人ができると嫉妬したんだと思う。」

「中学のときは確かにてしまくんとは一度も話してないわ。」

「前世の私は泥棒猫の生まれ変わりだったんだって。」

「前世のふたりがまだ学生の頃、別の女性と噂になっている男の子を自分のものにしたくて好きでもなかったのに奪い取っちゃたんだって。」

「これは、どっちなんだろう、生まれ変わりの世界?それとも前世にワープしてるの?」

「どっちでもいい。ただ、生まれ変わりだとしたら前世のわたしが願っていた様に喧嘩しないで仲良くしようね。幸せになろうね。あなたも浮気なんかしちゃダメだからね。」

「ほら、また口うるさい小林りえに戻ってる。」

「はは、そうだね。また喧嘩になっちゃうね。」



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