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団地の階段

<夢日記>

2020年9月4日

10年以上前に辞めた会社の同窓会に参加している。

その同窓会が中学校の同窓会に変換して加納さんが隣に座ってくれる。

同窓会が自分の家に変換し加納さんと結婚していて子どもがふたりいる。

夕食作りの手伝いをして家族で食事する。

子供たちが食事している間、僕はフライパンで焼き肉を焼いている。

場面が変わり、小学校の卒業式になって小学生の加納さんがいたり、隣に母親になった加納さんがいたり、彼女が何人もいる。


<ときめきプロファイル>

加納ひろ子(仮名)

小学校4〜6年と中学校1年まで同じクラス。自分の心の中で大きな比重を占めていた「好きな女の子」だった。

1歳年下の妹がいたが、妹の方が明るく積極的で学校で妹からも話しかけられた。

卒業アルバムを見て気づいたが自分は彼女のすぐ後ろに立っている。意図的に近くで写るよう並んだかもしれない。小中を通して心に秘めた想いを持ち続けた初恋の相手という印象。

彼女の自宅のちょっと先の県営住宅に友人が住んでいた。彼女の家に近いことから前を通るだけで嬉しくてよく遊びに行った。県営住宅の敷地内は遊ぶところがあったし、団地内の子供達の集まる場所からか小学校高学年なのに缶蹴りが流行だした。近くに住んでいるので彼女も仲間に入った。友人と一緒ならと彼女の家を訪ね誘いに行ったのかもしれない。最初は缶蹴りそのものに熱中していたが少し余裕が出てきて、鬼ではなく彼女の行動を追いかけることにした。何度目かに団地の階段下に逃げていく彼女を追いかけ、薄暗く誰にも見られない空間に2人きりになることに成功した。短時間だったかもしれないが静寂とすぐ近くにいる彼女の気配を感じていた。2度目は下心がばれない様、小さい声で「ここだと絶対見つからないから。」と言い訳した。


楽しい夢を見ていて目が覚めた。もっと夢の続きを見ていたいと余韻に浸りながらうとうとしていると枕元のスマホの着信音が鳴った。

ディスプレイに「加納ひろ子」

「もしもし?」

「てしまくん?あの頃に戻ろう」で切れた。

またまどろみに浸っていて気づいたら大江の県営住宅にいた。

小学校5年生に戻っていた。

この団地に住む友だちとよく遊んだ。

彼には僕が加納さんのことが好きだと言うことを話していた。

彼女の家がすぐ近くだったので、彼女の家まで行って、缶蹴りしようと彼が誘い出してくれた。

僕は最初、普通に鬼から見つからないようにしていたが、そのうち彼女のことが気になって逃げる方向を追いかけた。

彼女がひとり団地の階段の下の死角に走っていった。

僕はふたりきりになれるとそこに入って行った。

誰からも見られない薄暗い狭いところにふたりきりでいる。

そこから出ても声を出しても鬼に見つかってしまう。

静寂と彼女の気配を間近で感じていた。


あたりが暗くなり、缶蹴りをしていた友人たちの気配もない。

時計の針が高速で回り始めたかのように5年くらいの年月が同じ場所で流れて行った。

「僕ら、何をしてるの?」

「待ってるの。」

「何を?」

「・・・やだ・・。」

「加納さん。」

「はい。」

彼女が振り向いた時、顔を近づけた。

彼女は目を閉じ待ち受けていたかの様に見えたが、僕の顔が近づくと反射的に首を横にそらし逃げようとした。

僕は体ごと横に移動し首をそらそうとする彼女の唇を先行して待ち受けてほんの一瞬、唇が重なった。

しばらく、気まずい空気。

「もう暗いから帰ろうか?」と言ったが、否定も肯定もしない。

まだふたりきりで居たいという意思表示?

「ずっと立っていたから、どこか座ろう。」と近くの公園へ行きのベンチに座った。

しばらく沈黙が続いた。

はじめ階段下にいた時は明らかに現実の缶蹴りの小学校高学年だった。

キスした時、僕らは15、6歳になっていた。

気づけば団地から公園へ歩く間にさらに10年くらい時が流れていた。

ベンチの2人は20代半ば。

思い切って聞いてみた。

「さっき、電話してこなかった?」

「えっ?てしまくんがかけてきたよね。」

「ここはどこなんだろう?今、いつ?僕たちいくつ?」

「母が亡くなって遺品の整理に実家に戻って卒業アルバムを見ていて急に眠くなって、気づいたら缶蹴りしてた。」

「ほぼ、同じだ。」

公園のベンチでまた5年くらい時が流れた。

気がつくと2人ともスーパーのレジ袋を持っている。

「お腹すいたね。」

「帰りましょう。」

二人とも体が覚えているのか近くのマンションに入っていく。

部屋を開けると子供たちが出てきた。

「パパもママも遅い!お腹すいたから私がカレー作っちゃった。」

娘がカレーを作っている。

彼女の妹とその娘も来ていた。

狭いマンションのダイニングにカレーと焼肉を並べ5人でにぎやかな食事。

彼女の妹のことを徐々に思い出した。

進学か就職で岐路が分かれていて違う世界の僕は東京か熊本かわからないが小さな会社に就職した。

偶然、同じ職場に彼女の妹が居た。

歳はひとつ下だが短大を出て2年目なので妹が先輩になる。

10年ぶりだけど互いにすぐわかり、仲良くなった。

飲み会の席で少し酔った彼女が

「てしまさんは小学校の先輩です。」

「幼なじみにしては加納さんずいぶんうれしそうだね。憧れの先輩だった?」

「そうです。でも、身近にライバルが居て負けました。姉です。この人が姉のファーストキスの相手です。」

元々明るくておしゃべりだった妹が衝撃発言をしてしまう。

これがきっかけで加納ひろ子と再会することになり妹の後押しもあり、幸せな家庭を作ることになった。

翌日は娘の小学校の卒業式だった。

記念写真を撮る時、僕ら夫婦の横に座る娘が小学校の卒業アルバムの母親にそっくり。

妹も姪も似ている。

これで先日見た、加納ひろ子が何人も出てきて僕の隣に座った夢がこの世界の再現だと理解できた。


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