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はじめに

この短編集を書くきっかけは今から15年前に見た夢でした。

それを遡る7年くらい前、同じ職場だった新入社員でほとんど話したこともなく、すぐに私が部署異動になり、記憶からほとんど消え去っていた女の子の夢でした。


目が覚めて「確か、あの子同じ職場だったけど名前が思い出せない。」としばらく考えていて、降りてきた様な感覚で名前を思い出しました。


その頃、数年前の職場の夢を見ることが多い気がしていたので枕元に手帳を置いて忘れないうちに書きとめておこうと書店の文具売り場で白くて薄いメモ帳を買ってきて「夢日記」として枕元にボールペンと一緒に置いていました。

ちなみに、そのきっかけとなった最初の「夢日記」は次のとおりです。


2007年2月24日

会社地下、細長い端に資料室。新聞切り抜き図書、高級自販機。コーヒー250円。いずみちゃんを誘う。朝までO K。いずみちゃんを抱ける。


この日以降、昔の同級生、職場の後輩の女の子の夢を見たときメモに書きとめ、薄い手帳だったので10年くらいで使い切ってからはスマホの日記アプリに入力しています。


2020年秋に、高校3年の時に同じクラスだったけどおそらく一度も話したことのないくらい印象の薄かった女子の夢を見ました。


この夢をきっかけに小・中・高校の卒業アルバムを開いているうちに、同級生だった女の子たちのほとんど忘れていた想い出が蘇ってきました。


卒業アルバムをスキャナで読み取ってひとり1枚形式の想い出アルバムを42人分作り「ときめきプロファイル」と名づけました。


この短編集は主に「夢日記」と「ときめきプロファイル」をヒントに私の「人生やり直し機」として、衰えていた空想力を蘇らせ、文章を書く力をつけるため、個人的に電子書籍の形にしていたものです。


人に読んでもらいたくて実名を仮名に置き換えて、本文の前にイントロダクションとして、元になった「夢日記」(実際に見た夢)「ときめきプロファイル」(18歳までの実体験)を付け加えました。




<夢日記>

2020年9月22日

高校の時の同級生の女の子に世界史の教科書を貸している。

担任の面談があるので教科書全科目揃えようと返してって頼んだら、終わったらまた貸してねと言われた。


<ときめきプロファイル>

福田とき子(仮名)

高校3年の時、同じクラスにもかかわらず全く印象がない。

卒業から42年後、2020年9月22日の早朝、夢に出てきた。

目覚めた時点で名前が思い出せなかったが高校で一緒だった感じがして卒アル開いたら、全く面影、一緒だった。

夢日記をつけ始めたいずみ。

このときめきプロファイルを作るきっかけとなったひろ子以上に会話した記憶もないし、時代が桁違いに開いている。

もう一つの世界でもっと接点があったのかもしれない。

この世界でもほんの少しの所ですれ違っていて互いに気がつかずに通り過ぎてしまったのかもしれない。

それを空想するだけで青春が甦り幸せな気分になる。



「世界史の教科書」


三連休前の金曜日だった。

普段通り少し残業したので電車は他の曜日の同時間帯ほど混んでいなかった。

始発なので座れる。途中、地下に入り都心の駅ごとにどんどん人が乗ってくる。

そのうち、目の前に立っている女性の視線が僕に注がれていることに気づいた。

チラッと見ると最初は視線を外していたが何回目から視線が合う様になった。

気になることが2つあった。

まず、ものすごい美人。

そしてどこかで見たことがある。

以前、似た様な経験があった。

地下鉄の車内で目の前に誰か思い出せないが芸能人に似ているなと思う美しい女性が立って居た。

僕の隣の席におそらくその人のお姉さんと思われる女性が座っていた。

地下線内だったので騒音で会話するためグッと顔を近づけていた。

彼女が電車を降りてやっと思い出した。

「一青窈だ。本人だ。」


「今日もその類?」

一青窈の時と異なるのは相手が僕を見つめていること。

視線があってもそらさなくなった。

途中、乗換の多い駅で降りる人があって僕の隣が空いた。

彼女がすかさず座った。

電車が地上に出て、車内が静かになった。

彼女が

「あの、すいません。てしまさんですか?熊本の?」と話しかけてきた。

「はい」

僕も思い出した。


数日前、夢に高校時代の彼女が出てきた。

在学中、全く話したことがないのに夢の中で世界史の教科書を貸していた。

面談か何かで全科目揃える必要があったので彼女に返してと頼んだ。

「終わったらまた貸してね」と言われた。

そんな短い夢だった。

目が覚め、すぐは名前が出てこなかったが面影に記憶があった。

架空の人物でないだろうと高校の卒業アルバムを探し出した。

すぐ写真の中から同じ顔を見つけられた。

福田さんと名前もなんとか思い出した。

アルバムを見ながら

「こんなに可愛い子がクラスメイトだったのに何故、意識しなかったのだろう。」

「今はもっときれいになっているだろう。」

と思っていた。

そして奇跡が起き、遥かに美しくなった福田さんが目の前にいた。

それだけでなく向こうから声までかけられた。

「福田さんだよね。」

「憶えていてくれたんだ。」

僕は電車を降りようと席を立ってドアに向かった。

すると彼女が「世界史の教科書」と一言叫んだ。

驚いて、一度ホームに降りたがすぐ飛び乗って、また彼女の隣に座った。

「ごめんなさい。てしまくん見た時、最近、何か不思議なことがあって。でもそれが思い出せなくて。」

「うん。」

「後ろ姿見たら言葉だけ『世界史の教科書』って言っちゃった。」

「へぇ。」

「でも、それが何だか思い出せないの。」

「びっくりだね。」

僕は先日の夢の話をした。

「えっ! 嘘!こんな奇跡ってあるの?」

「思い出した?」

「夢か現実かわからないけど部屋の片付けをしてたの。」

彼女が言うには本棚からなぜか高校の世界史の教科書が出てきて、中を見たら『てしま』とスタンプが押してあるのを見つけたらしい。

「借りたまま返してなかったんだって思ってた。」

話し込んでいるうちに彼女の降りる駅に近づいた。

僕は自分の降りる駅を通り過ぎていたのでこのままひとりで終点まで行って折り返すのもつまらないと思って、思い切り誘ってみた。

「教科書の話、もっと聞かせてよ。」

「そうだね、色々話ししてたらもっと思い出すかもしれないし。」

「食事はまだだよね、駅、降りたら居酒屋でも行こうか?」

「それよりワイン好きですか?」

意外な返事が返ってきた。

「うん、好きというよりハマってる。」

「こないだ良いワインもらったの。」

「どんなワイン?」

「ブルゴーニュの赤。」

「バーガンディーレッド。」

「フルボトル1人じゃ飲みきれないし、とっておくと味落ちるし。」

「ご馳走になっていいの?」

「手伝ってくれる?ほんとに教科書が見つかったら返さないといけないし。」

駅を降り、そのまま彼女のマンションに向かった。

あまりの急展開に妄想を膨らませたりする余裕もなかった。

それでもドラッグストアのサインが見えた時、いざという時のための必需品の調達が頭をよぎった。

他にドラッグストアに入る理由も見つけられず、ドラッグストアの前で立ち止まったら彼女に下心を察知されそうで半ばパニック状態で足早に通り過ぎた。

「お腹空いてる?おつまみは家にあるもんで済ませていいかな?」

「うん、まかせる」

部屋に入り、彼女が着替えてメイクを落とす間、ベランダに出て外を眺めていた。

その時、考えた。高校時代の僕は無口で恥ずかしがり屋で女子とほとんど会話ができなかった。

今でいう「草食系男子」という印象があって部屋に入れてお酒を飲んでも安心だと彼女は誘ってくれたのかもしれない。

信頼されているのなら今日は「草食」を貫き通そうと少し冷静になれた。

ワンルームでベッドのすぐ脇に小さなローテーブルがあるだけ狭い部屋。

ベッドを背もたれにして2人、かなり近づいて並んで飲んでおしゃべりした。

高校時代のこと、進学先や今の仕事のことなどさらりと触れただけで、僕のワインの蘊蓄などで盛り上がり、それがさらにグラスを重ね、ボトルはすぐ空になった。

じっくり時間稼ぎして終電なくなるまでと企んでいたが、ほんの30分で終わり?

「終電、まだ間に合うよ。」でお開きかと思ったら、彼女が

「美味しいね。もう一本開けよう。」

それからは飲むペースは落ちたがほぼ初対面に近い2人なのに次から次に話題が飛んでおしゃべりが止まらず、酔いがまわった。

それから先、記憶が曖昧だ。

彼女が食器類を片付けたのか、彼女が酔い潰れているので僕が片づけたか。

両方の記憶が残っている。

僕は酔いで体が火照って腕まくりし、胸元も少し開けて、ズボンのベルトも緩めていたのだろう。

「シワになるから脱いだほうがいいよ。」と言われた気がする。

いつ頃、どこで、どちらから。

部屋の灯はついていたか暗闇か。

みんなあやふやだ。

ふたりとも酔い潰れていた中、いつの間にか体が近くにあり体重とTシャツごしの柔らかい感触があった。

ふたつのバーガンディーレッドが重なった。

ワインのテースティングと違い柔らかい感触を舌先に感じた。

意識が遠くなり、夜が開けたのだろう。

まどろみの中で背中の後ろに彼女の気配を感じた。

「てしまくん?」

「うん。」

「あ、起こしちゃった?」

「いや、ちょうど目が覚めて、それで体を少しひねちゃった。」

「ずっと、居てくれたんだ。」

背中に伝わる彼女の声がまた寝息に戻った。

体を回して後ろから抱きしめたい衝動と闘いながら、彼女がまた目覚めるまで待っていようと思った。

彼女の寝息が背中と背中で共鳴して、いつしか僕もまた、眠りに落ちた。

そして、今度ははっきりと目が覚めた。

何故なら、酔いは全く残っていないし、そこが僕の家のベッドだったからだ。

もちろんベッドにも室内のどこにも誰もいない。


世界史の教科書を貸し借りするという一瞬の夢を見た。

そして電車の中で再会しワインを飲んで一夜を過ごすという長い夢を見たようだ。

だから僕の家のテーブルにもキッチンにも食器も空き瓶も何もない。

ただ、不思議なことに僕のワイシャツとズボンがきれいにたたんで置かれていた。


福田とき子は普段通りの土曜の朝を迎えていた。

顔を洗いながらちょっと気になってキッチンを見た。

もちろん空き瓶やグラスなど何もない。

「あっ、夢か。」

「リアルでちょっとエッチな夢見ちゃった。」

少しずつ思い出していた。

「そういえばあの男の人、誰だったんだろう?」

アルバムを見てみようと本棚を見たがアルバム類は実家に置いてあるかどこかに仕舞い込んだか思い出せなかった。

ところが何故か最近買ったビジネス書や小説、コミックに混じって高校世界史の教科書があった。

取り出して開いて見たが自分のものか借り物だったかはわからなかった。



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