男冥利
掲載日:2021/09/08
妻は僕を愛していた。
学生時代からの付き合いの僕らは、そのまま恋愛結婚をした。結婚をしてからも妻の愛は変わることはなく、毎日つくしてくれている。子供にも恵まれ、お前は月並みの幸せを手に入れた、と人からは良く言われる。
そんな月並みの幸せも長くは続かなかった。子供が車に轢かれ、帰らぬ人となったのだ。
妻は電気もつけずに暗い部屋に座っていた。遅く帰ってきた僕に、妻は何か言いたそうなそぶりを見せたが、すぐに諦めたようで肩を落とした。
僕は妻を誘って寝室へいった。一晩中抱き続け、夜明け前に妻の耳元でそっと囁いた。
「僕のかわりに、自首してくれるかい?」
妻は僕を愛している。それも、自分の子殺しを引き受けてくれるくらい。




