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第4話

東京都内 某所


私服姿の神保は牛丼屋「すき野家」の前にいた。東京都以外にも全国に店舗を展開している大手外食チェーンストアだ。


「いらっしゃいませー」

神保が店に入り、店員の声が店内に響く。サラリーマン、学生、家族連れなどで店内が賑わっていて、神保が店の中を見渡していると、手招きしているアメリカ人を見つけた。

「ヘイ、ジンボ!こっちだ」

神保が手招きしたアメリカ人の座る二人用のテーブル席に座る。

「パトリック、ここは居酒屋じゃないんだ。大声を出すなよ」

「相変わらずだなお前も」

パトリックと呼ばれたアメリカ人、パトリック・スミスはDIA(アメリカ国防情報局)に所属する大佐で、在日アメリカ大使館の駐在武官の調整も兼ねて来日していた。

店員が注文を聞きに来て、パトリックが「牛丼並盛、サラダセットで2つ」と流暢な日本語で注文する。神保が「こっちは生卵付きで」と追加する。

「ジンボ、最近調子はどうだ?」

「まあ、色々と忙しいけどな。元気にはしてるよ」

「韓国空軍戦闘機の“誤射”は大変だったな。こっちとしてもイーグルがそんな形で使われてしまっていい迷惑だ」

「パトリック、友情を利用して情報を聞き出そうとしているのか?」

「そんなことする訳がないだろ。日本とアメリカは同盟国だ」

「同盟国でも建前と本音が違うのが国家ってものだろ。つくづく国家公務員って嫌だと思うよ」

「そう身構えるなよ。友人として食事に誘っただけだ。俺との世間話は全部スパイしてることになるのか?」

「いいだろう。世間話を続けよう」

セルフサービスの水を一口飲む。

「韓国の竹島での演習、どう思う?」

パトリックが神保に聞く。

「今までのと比べて明らかに異常だ。何か他に意図があるのかと思うよ」

「鋭いな、ジンボ。実はな、韓国の国防部長官の周りで不穏な動きがある」

「国防部長官?」

「数年前からラングレーが彼の内偵調査をしていてな。どうやら、何か関係しているらしい」

ラングレーとはCIA(中央情報局)のことであり、所在地のラングレーに因んでそう呼ばれている。

「確かなのか?」

「ラングレーの友人から聞いた。信用できる奴だよ」

パトリックが一枚の封筒を神保に渡す。

「それは?」

「お前にやるよ。役に立つだろう」

注文した牛丼並盛サラダセットが運ばれてきた。

「さあ、世間話はおしまいだ。食べようぜ」

割り箸を手に取り、パトリックは牛丼に紅しょうがをたっぷり乗せて七味をかける。

「パトリック、アメリカ人ならステーキがいいんじゃないのか?ステーキ専門店が近くにもあるだろう」

「ステーキなんて俺の国にいくらでもある。けどこの牛丼は日本でしか食べれない。日本でやる牛丼屋のセカンドライフも悪くないな」

「変わった奴だなお前は」

そう言って神保は生卵を溶いて牛丼にかけた。

「俺から見たら卵を生で食べるのが変わっているよ。普通はスクランブルエッグとかで焼くだろ」

「アメリカ人ならそうだろうが、日本じゃこれが通の食べ方だよ。牛丼が好きならお前も騙されたと思って食べてみろよ」

「いや、さすがに遠慮しとくよ」

二人は牛丼をそれぞれの食べ方で食べた。


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