壮行会
魔導歴2035年5月9日の雷曜日、俺がこの、魔導が支配する世界に来て、48日
この日、第11回放課後自主講座が開催された、第1回が開催されたのが、4月16日の磁曜日、だった、
『星に愛されし民』は、23日で、『星の遺跡・草原』と『密林』を攻略し、『海岸』迄、来た。
『草原』で、彼等は、『星より渡される道具』を手に入れ、
『密林』で、『星の力』の身体強化を覚えた、
そして、『海岸』、今日は、一日だけ、泳ぎ方の練習をし、泳ぎ方を覚える予定だ、
人は、其を、海水浴と、言う。
「何、口の回りにソース付けて、一人言、言ってんのよ、スグル、」
「えっ、ローシィ、どっち、」
「右の端、」
俺は、手でソースを拭いた、
「ソースメン、もっと上品に食べなさいよ、スグル、音を発てて、食べるから、」
ローシィは、俺を非難するが、
ソースメン、
この世界にも、メンが、あった。
洒落じゃない、
今日は、スグルの世界での、土曜日、授業は2時迄、
皆、ボーゲンさんの食事を取らないで、此処に来た、で、昼飯は、ブライが用意してくれていて、運動前なので、各自が軽く取れるように、
テーブルの上には、軽食として五種類のサンドイッチに、
えっ、
パ、パ、パスタ!
「あら、スグル、アル、知らないの、」
トロピカルドリンクのような物を手に持った、ローシィが変な事を言うので、
「いや、パスタが、そこにアルくらい、俺でも分かるって、」
隣で、軽食を、摘まんでる、エミが、
「ローシィさん、スグルの勘違いは、何時もの事です、気にしたら、負けです、」
と、相変わらずの、突っ込み、
ローシィは、約束だから、俺に、メンの事を教えてくれた、
パスタや、うどん、蕎麦、に近い物は、やはり、この世界にもあるらしい、
言っとくが、洒落じゃない、
ただ、この地方に無いだけで、
メンは、北方共和国連合等の寒い国に、メンの木と呼ばれる木に、スグルの世界の柳のように生えるらしい、
其を、切って収穫したのが、メン、ソースを掛けた料理が、直訳するとソースメンと言うんだそうだ、
で、勿論、メンは高価だから、食材が安い学食では、出ない、だから、俺は知らなかった、
ブライは、俺の『星に祝福されし果実』で作ったソースを掛けた、三種類のソースメンを作ってくれた、
俺は、感激して、スグルの世界の蕎麦の食う作法、
ズズズズズズズズズズズズズ、
と、一気にメンを啜ったので、ローシィが、ドン引きした、って、言う訳だ。
軽食後、『星に愛されし民』は、海に泳ぎの練習を始めた、泳ぎなら、別に、俺が教える必要も無く、俺は、浜全体に『星隠し』を張り、更に『星の瞳』で、彼等を監視する事にした、
勿論、日除けの下に設置した、リクライニングチェアに横たわって、
隣では、ローシィが寝ている、
風は、気持ち良く、遠くからは、若者達の、明るい、ハシャギ声が聞こえる、
ハルとエミに、泳ぎを教えているのは、ドーリだ、優しく、楽しく教えている。
ジェミに、泳ぎを教えているのは、リアだ、えっ、お前ら、ちょっとくっつき過ぎじゃねぇの、
あっ、ジェミが、足、滑らした、えっ、リアが慌てて、ジェミに抱き付いた!
離れろ、お前ら!!
「ちょっと、煩い、スグル、」
御免なさい、ローシィ、
俺は、バカらしくなったんで、ダンとオルを見た、
彼等に、泳ぎを教えてるのは、アンリ、えっ、アンリ、スパルタ、過ぎねえか、
ダン、オル、潜ったまま、浮かんで来ねえぞ!
ヤバイ!!
俺は、立ち上がった、瞬間、
バシャン、
二人が、海面に飛び出して来た、
潜水泳法?
そんな、高度な泳法、教えてんのか、アンリは、
疲れた。
俺は、ブライとメルティスト先生を見た、
二人は、楽しそうに、魚の料理を作ってるし、
なんだかな、
「スグル様、どうぞ、」
俺が、ドタバタしているのを見て、リアちゃんの家の、執事長、エリンさんが気を効かして、トロピカルなドリンクを持って来た、
流石、出来た、執事、
じゃ、一口、ズズ、
えっ、此れ、ちょっと、アルコール、強くね、
zzzzzzzzzz、
!!!
はっ、寝てた、
世界は、オレンジに包まれ、波は、黄金の光に満ち溢れていた、
真っ赤な太陽が、ゆっくりと地平線に沈もうとしている、
夕方だ!
「あら、起きたの、随分、寝てたわね、スグル、」
確かに、寝た、俺は、こんなに、熟睡する事が出来るのか、
今まで、ルーナと別れた時、以来、アルコールを大量に摂取する事は控えてきた、だから、直ぐに、酔ったのか、
ローシィが、心配して、
「大丈夫、酔ったの、少し泳ぐと酔いが醒めるわよ、私も、一泳ぎしてきたし、」
俺は、回りを見た、テーブルは、三つに増え、料理がどんどんセッティングされている、
俺も、折角だから、刺身を作るか、
「有難う、ローシィ、大丈夫だ、目が醒めた、さあーてと、刺身でも作るか、」
ローシィが、?ってな顔で、
「SaSeーMi?」
変な外人さんみたいな、発音になった。
俺は、笑いながら、マグロ擬きが入ってる箱を開けて、マグロ擬きを、テーブルに置いた、
「たぶん、旨い、ぞー、」
と、ローシィに言い、テーブルセッティングをしているエリンさんに、
「テーブル、ちょっと汚しますけど、良いですか、」
エリンさんは、立派な執事だから、笑顔で、
「構いませんよ、スグル様、片付けは、私がしますから、」
「有難う御座います、エリンさん」
と、言いながら、俺は、『星剣』をウロコ取り型にして、ウロコを取り始めた。
『星剣』を作った時、エリンさんは、驚いた顔をしたが、その後、ウロコでテーブルが汚れても、顔色も変えず、
俺は、『星剣』を包丁型に変えて、マグロ擬きの頭を落とし、
次に背ビレに沿わせるように『星剣』をあてて、中骨の上を滑らせるように、浅く刃先を走らせ、
その後、腹の肛門があった側から頭があった場所に向かって、『星剣』を中骨の上を滑らせるように、刃先が中骨ギリギリを通るように走らせて、
再度背側から『星剣』を入れ、背から入れた『星剣』が、中骨を超えて身が中骨から完全に分離したことを確認した後、俺は片側の身を切り離した。
ようは、三枚おろしって奴だ、
反対側も、切り落とせば、魚の身が右の身、左の身、中骨部分の三つに切り分けられる事から、三枚おろしと呼ばれる、
魚料理の最も、ポピュラーな技法だ。
俺は、エリンさんから、皿を貰い、刺身の盛り合わせを作った。
その後、エリンさんは、テーブルを掃除し、三つのテーブルに、一のテーブルには、五種類の魚料理と俺の刺身皿、二のテーブルには、三種類の肉料理と、二種類のソースメン、三つ目のテーブルには、三種類のケーキ、二種類の氷ケーキと飲み物がセッティングされた。
その頃には、日が沈み、魔導灯が、テーブルを照らし、
『星に愛されし民』は、シャワーを浴びて、制服に着替え、テーブルに集まって来た。
エミちゃんが、
「わあ!」
ハルが、
「凄い!」
ドーリが、
「ほぇ!」
ほぇ、って、ドーリちゃん、其が、まんま、素?
リア、アンリは、驚かず、ジェミは、
「流石、ブライさん、美味しそう、」
ダンは黙り、オルは、
「全部で、16種類、何処から、攻略するかだ、」
と、冷静に分析してる、
俺は、ダンに、
「ダン、どうした、」
ダンは、ちょっと、暗い顔で、
「昔、家で開いた、パーティを、思い出して、」
俺は、彼の肩を叩きながら、
「まぁ、今日は、頑張ってきた、皆の為に、ブライが、明日の大会への壮行会として、作ってくれたんだ、だから、最後迄、楽しめ、ダン、」
ダンは、驚いて、
「ブライさんが、私達の為に、」
俺は、笑いながら、
「そうだ、」
ブライが、本当に、壮行会として、作ってくれたのかは、俺は知らない、
だが、パーティと呼べる程の料理だ、
だったら、壮行会、としても、良いんじゃねぇの、
俺は、そう思った。
そして、その時、ローシィが、グラスを俺達に配り、
「さぁ、皆、早く、乾杯、乾杯、」
エリンさんが、子供達にジュースの入った『月の雫の銀杯』を渡して、メルティスト先生は、俺やローシィに酒をついで回った、
俺は、グラスを受け取り、子供達に、
「皆、良く頑張った!明日は、大会だ、だが、この試練を乗り越えて来た、君達なら、絶対、良い結果を出す事が出来る、皆、自分自身を信じろ、だからこそ、君達の未来を祝して、乾杯!!!」
「乾杯!!!!!!!!!!」
その瞬間、
ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、ドドォン、
全員が、驚いて、夜空を見上げた、
「此れは、俺の世界で、祝いの時、する花火って奴だ、」
俺は、数百の『星剣』を纏めて夜空に打ち上げ、ドドォンと言う音を出しながら、『星剣』が光輝く球形の花のように、開くように、放った、
其は、まさしく、花火、
俺は、幾度も、『星剣』の花火を、打ち上げた、
その美しさに、皆、見とれ、
ローシィは、
「流石ね、スグル、綺麗、」
と、俺を誉めながら、ぐいぐいと、酒を美味しそうに飲んでいる、
「はーぁ、本当に、最高!今日の取材は最高!!」
と、大喜びしていた。
『星に愛されし民』の子供達も、食べたり、飲んだり、ジュースだけどね、花火が綺麗な夜空を見たり、大忙し、
「此れ、本当に、おいすぅい、」
ドーリが、頬を押さえながら、感激している、
おいすぅい、か、
「くぅいれだす、」
更に、口一杯にしているから、
綺麗が、くぅいれい、に、なってるし、
綺麗か、
俺も、ブライに作って貰った、辛、しょっぱい、ソースを刺身に付けて、その刺身を食べながら、夜空の花火を見ていた、
スグルの世界、
思い出す、
荒れていた会社、経営陣との対立、過酷な労働、そんな中、皆で、社屋の屋上で、花火を見た、あの頃、
もう、労働争議は、引けない処迄、追い詰められていた、俺と仲間達、
その日、見た、花火は美しかった、
あの時も、俺の横には、
確か、
誰かがいた、
何処の部所の娘か、知らない、
ショートカットで、黒い髪、淡い紫の瞳、
名前も、知らない、
「ねぇ、スグル、あんた、今さぁ、とある人のこと、思い出してない、」
えっ、
ローシィ、知ってるのか、
ローシィは、酔った真っ赤な顔で、
「ほら、貴方に、魔導本をくれた方、」
魔導本?
あぁ、ルーナちゃんか、
びっくりした、
「ねぇ、スグル、貴方、この世界が、好き、」
この、世界が、
好きか?
俺が、
俺は、夜空の、『星剣』の花火を、もう一度、見上げた、
俺は、この世界が好きなのか?
好き、なのかも、
「まぁ、ローシィ、嫌いじゃあ、無い事は、確かだ、」
ローシィは、頷くように、
「そう、なら良かった、其なら、きっと、叶うわ、貴方の思い、」
「えっ、其って、どう言う意味だ、ローシィ、」
ローシィは、笑いながら、
「貴方は、モテるって事よ、スグル、」
そう言って、酔ったローシィは、更に、飲む為に、俺から離れて行った。
・・・
まぁ、『星の力』が有る、俺が、この世界でモテるのは、分かる、
だから、俺は、何時も、『星隠し』を張るようにしている、
勿論、ハルにも、『星隠し』を張るように勧めているし、
だが、モテる事と、俺の願い事が叶うのとは、どう言う関係が有るんだ?
分からん、
俺は、夜空を見上げながら、
ため息を付いた。