海水浴
「此方が、スグルさんの、お知り合いで、公都の魔導新聞社、ディ・プラドゥのローシィ・レーランド記者、」
「しかし、スグル、あんたも、隅に置けねぇなぁ、」
「ただの知り合いです、」
5月9日の雷曜日、今日は、スグルの世界で言う、土曜日、普通は、2時迄授業を受け、昼食後、3時から放課後自主講座の開始としていた、
しかし、今日の放課後自主講座は、皆で、『星の遺跡・海岸』で、泳ぎ方の練習をする事になり、
本来、泳ぎは魔導格闘技大会の練習とは、全然、関係無い、
大会の地区予選は、明日の光曜日のベルトリアで開催される、普通だったら、リーダのダンが、そんな事してる場合じゃありません、練習しましょうと、俺に食って掛かってくるんだが、
リアが、そんな提案をしても、ダンは、反対しなかった。
こうして、第11回の放課後自主講座は、泳ぎ方の練習、つまり、海水浴になった。
そして、『星に愛されし民』には、専用の料理作業員、ブライがいる、彼が、海岸で、旨い昼飯を提供する事になり、
『星に愛されし民』は、2時半に、俺の宿舎の前に集まる事になった。
で、また、今回も、
お邪魔な、
一人の女性が、
参加する事になった。
「失礼ね、スグルさん!」
「えっ、俺、声に出した?」
「顔に、出した、」
メルティスト先生が、良いかげんにしなさい、ってな表情で、
「コホン、」
と、一回、咳をした後、
『星に愛されし民』の、皆の前で、
「えーと、此方が、スグルさんの、お知り合いで、公都の魔導新聞社、ディ・プラドゥのローシィ・レーランド記者、」
「えっ!」
ジェミが、思わず、声を出した、
はぁはぁあん、ジェミ、ローシィの事、知ってんな、まぁ、オルも、知ってたから、知って当たり前だけど、
案外、あれで、ジェミの奴、ミーハだから、なんせ、ローラのファン出し、
メルティスト先生が、続ける、
「皆の中には、ローシィさんの事、知ってらっしゃる方も、いると思いますが、今回、彼女から、放課後自主講座を頑張っている、皆さんを、是非、取材させて欲しいとの申し出が有り、」
メルティスト先生が、一旦、ローシィを見て、
「学長と私で、相談した結果、好意的に書いて頂けるなら、学校の評判も上がると思いましたので、取材の許可を出しました、因みにローシィさんは、明日の、魔導格闘技大会も取材します、だから皆さん、大会は、頑張りましょう!」
と、締め括り、紹介されたローシィが、
「ディ・プラドゥのローシィ・レーランドです、今日、明日と、皆様、宜しくお願いします。」
と、挨拶した後、一人、一人、自己紹介を始めた、
彼女と、挨拶を交わした、ブライは、ニヤニヤ、笑いながら、
「スグル、彼女、ベッピンさんだねぇー、」
って、俺に言い、ベッピンさんって、なんて、古い言い方すんだ、お前は、って、思っていると、肘を俺に当てながら、
「しかし、スグル、あんたも、隅に置けねぇなぁ、」
と、耳元で、囁くから、俺は、
「ただの知り合いです、」
と、断言し、ブライは、驚いて、
「えっ、そうなの、悪りぃ、悪りぃ、」
と、俺に謝るのであった。
彼女の事を、知ってるダンが、不安そうに、
「スグルさん、ローシィさん、取材って言ってますよ、其なのに、今日は、魔導格闘技の練習しなくて、良いんですか?」
俺は、真面目なダンを見ながら、
「良いんじゃねぇの、本人も、水遊びしたいって、言ってるし、」
ダンは、不安そうに、
「しかし、」
俺は、ダンの肩を叩きながら、
「大丈夫だよ、彼女も、プロだ、明日の結果も踏まえて、上手く書いてくれるって、」
と、ダンを納得させて、
俺は、早く、魚が食いたいんで、
「じゃ、そろそろ、行きますよ、メルティスト先生、」
先生は、えっ、ってな顔で、
「何時もの、隊列、組まないの、」
俺は、先生に、
「まぁ、今日は、良いんじゃないですか、大きな、『星の門』を開けますから、皆で、行きましょう、先生、」
と、言った瞬間、
ドバーン!!!
俺は、一気に、幅12メータ、高さ4メータの『星の門』を開いた、
ぐっ、
やべえ、結構、『星の力』、持ってかれた、腹が減ってきた、
俺は、気をまぎらわす為に、回りの景色を見た、
目の前に、海が広がり、太陽は、さんさんと輝いていた、波は穏やかで、マジ、今日は、真夏日、本当に、海水浴、日和、
今日は、『星隠し』を広げて無い、更に、全員が制服で、魔導防護服も着ていない、
俺は、一応、『星の瞳』を広げて、安全には注意をするつもりだ。
ローシィは、口を、ぽかーんと開けて、俺の『星の門』に驚愕していた、
「『海』に行くって言うから、どう言う事って思っていたけど、こう言う事だったんだ、」
驚いている、ローシィに俺は、
「あぁ、俺の国の『魔導術』、記事にするのか、ローシィ、」
ローシィは、首を振りながら、
「しないわよ、あんたの事は、ある人から、するなって、言われてるし、」
ある人?
・・・
ルーナちゃん?
ローシィは、笑いながら、
「兎に角、今日は、私は、のんびりするわ、宜しくね、スグルさん、」
そう、言って、ローシィはさっさと歩いて、女子更衣室になっている、宿泊用魔導四輪車に行った。
ジェミは、アウトドアテーブルと椅子を出し、其処に、執事長のエリンさんが、皿やコップ等を運んでセッティングを始めた、
さてと、俺も始めるか、魚取りだ、
方法は『地引き網漁』、
海の沖合に網を張り廻し、網の両端につけた引き綱を引いて、浜辺に引き揚げる事で、魚を漁獲する漁法ではあるが、
俺の場合は、網の代わりに『星の力』を使う、
方法は、簡単、『星の力』を、網状にして、沖に設置する、そして、魚が死なない程度の強さで、『星の力』を調整し、一気に、俺のいる浜辺に引き揚げる、
勿論、『星の力』に反応して、魔魚が集まってしまうので『星の力』の網は、『星隠し』で包む。
じゃ、まず、『星の力』の網を、沖合いに作っか、
えいっ、やぁっ、とぉ、!
ボスン!!
おっ、また結構、『星の力』、持ってかれた、
俺は、テーブルに行き、綺麗に並べてある、サンドイッチを貰う事にした、
「食べて、良いか、ブライ、」
ブライは、料理の合間に、俺の方に来て、
「構わないが、スグル、魚、まだか、」
俺は、腹を擦りながら、
「あぁ、ちょっと、待ってくれ、少し食わないと力が出ない、」
ブライは、悪りぃ、ってな顔で、
「そうか、済まない、じゃ、遠慮なく食ってくれ、足りなきゃ、また、作る、」
俺は、俺が作った、パンの木実と、俺の『星に祝福されし果実』のソースを掛けた、サンドイッチを一つ、口に入れて、
「もぐもぐ、大丈夫、もぐもぐ、此で、」
と、言った後、一気に、網を浜に上げた、
ザァパアアアァァアンンンン!
巨大な、波音共に、
バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、
百匹、近い、魚や貝等が、浜に打ち上げられ、俺は、満足して、『星の力』の網を消した、
「すっ、凄い、」
「流石です、師匠!」
着替えた、エミちゃんとハルが、魚を見に、俺の側に来て、感嘆、していた、
「これ、ブライが、料理するって、」
と、俺、
ダンや、オルも加わり、
「えっ、そうなんですか、」
と、嬉しそうなダン、
「魚って、この、バルセリアじゃ、高級品ですよ、凄い、」
と、冷静なオル、
・・・
二人共、苦学生だし、ろくなもん、食ってないし、
良かったな、ダン、オル、
ブライが、魚が打ち上げられた、場所に来て、
「有難とな、スグル、さて、さっさと、仕訳すっか、」
「仕訳?」
俺は、ブライに聞いた、
「あぁ、スグル、俺は、あんたのような、上級魔導士じゃ、無いけど、特技持ちなんだ、どの魚に毒が有るかどうか、分かる、」
俺は、ちょっと驚いた、
「特技持ちって、なんだ、ブライ、」
ブライは、魚を、仕訳ながら、
「えーと、此は、食える、っと、なんだ、スグル、特技持ち、知らないのか、」
俺は、何時もの言い訳、
「あぁ、俺は、東の辺境の国の出身だから、俺の国には、その、『特技持ち』ってのは、いないんだ、」
ブライは、仕訳の手を止めずに、
「此は、食えない、そうか、『特技持ち』、っうのは、この国じゃ、魔導術は不得意でも、一芸に非でた、才能の有る奴の事を言うんだ、俺の場合、小さい頃から、『磁』『雷』『光』の合成魔導術が使えた、」
ブライは、俺の方を振り向いて、
「俺の特技の特徴は、物の、味覚、甘さ、辛さ、しょっぱさ、酸っぱさ、更に、毒かどうかが、分かるんだ、」
俺は、感心した、
「ブライ、だから、お前、料理人に、」
ブライは、立ち上がりながら、
「よし、仕訳終了、まぁ、最初は、防魔省、毒薬部隊に行くつもりだったんだが、人殺しより、料理人の方が幸せかなって思ってな、」
・・・
毒薬部隊って、あんのか、
結構、怖い、世界、
「なぁ、スグル、あの、メルティスト先生も、たぶん、俺と同じような気がするんだが、何か、知らないか、」
俺は、知ってても、ブライには、教えない事にした、
「まぁ、人の、プライバシーだから、人の性格や個性の話は、人、其々だし、ある人には、誉め言葉が、別の人には、悪口になる、やっぱ、自分で、本人に聞いた方が良い、」
ブライは、納得したようで、
「そうだな、スグル、あんたが正しい、やっぱ、自分で聞くわ、有難とな、スグル、」
結局、残ったのは、魚や貝が、30匹程、結構、食えないようだ、その中で、見た目、マグロっぽい魚を一匹、掴んで、
「じゃ、此れ、一匹、俺にくれないか、」
ブライは、驚いて、
「えっ、良いけど、どうすんだ?」
「勿論、食うのさ、俺の国のやり方でな、」
俺は、まず、小型の『星剣』を出し、マグロの脳絞めをし、
更に、背骨の下側と尻尾の下を切り血抜きをしながら、
続いて鼻から細くした『星剣』を背骨上の神経に通し神経絞めをし、神経を潰す。
ブライは、其を見て、
「へぇ、面白い事、するな、」
エラと内臓を取り海水で洗いながら、
「こうすると、魚の肉が、生で食えるんだ、」
ブライは、驚いて、
「生、生で食うのか、其は凄い、俺にも、その生肉って奴、食わしてくれ、スグル、」
等と、ブライと俺とで、食談義をしていると、ジェミと、リア、アンリ、ドーリが、此方に来て、
「ブライさん、言われた野菜は、料理専用魔導四輪車に置いときました、」
ブライは、ジェミの方を向いて、
「おっ、ジェミ、有難う、じゃ、済まないが、この魚も、収納してくれると助かるんだが、」
ジェミは、頷いて、
「はい、大丈夫ですよ、ブライさん、」
と、言って、魚の方に、右手を向けた、瞬間、
シューッ
えっ、
ジェミ、お前、収納する、量、増えてない、
「なぁ、ジェミ、俺の気のせいかも、知んないかも、知れないけど、収納する量、増えてない、」
ジェミは、また、再び、頷いて、
「そうなんですよ、スグルさん、何か、あの遺跡を攻略した後、収納が、大きくなったような、感じで、」
えっ、
収納が、拡張したの!
確かに、昔、天皇星の大賢者が、俺に言った事が有る、星の秘蔵庫は、持ち手が成長すると、収納量が上がるって、
と、言う事は、ジェミは、成長したって事か、
しかし、ジェミは、あんまり、戦ってない、其なのに、成長した、
成長の定義って、戦いと関係無いのか?
・・・
分からん、
ジェミは、リアを見ながら、
「其で、リアから、ブライさんが、いちいち、食材の調達、大変だから、って、言われて、収納すると鮮度も保てるから、皆の、一月分の食材を、僕の収納に仕舞ってるんです。」
・・・
完全に、尻に敷かれてる、
ブライも、嬉しそうに、
「そうなんだよ、本当に、ジェミ君の特技は、助かるぜ、流石、御嬢様のお気に入りだ、」
リアが、真っ赤な顔で、
「ブライ!」
「あっ、いけねえ、仕事、仕事、」
と、ブライは、急いで、逃げた、
ジェミは、やれやれってな顔で、
「そうだ、スグルさん、その魚も仕舞いましょうか、」
俺は、首を振りながら、
「いや、こいつは、少し熟成させるから、氷と箱を探して、そんなかに入れておくつもり、」
ジェミは、分かった、ってな表情で、
「じゃ、仕舞える、箱と氷を出しますね、」
えっ、
そんなのも、持ってるの!
俺は、どんどん、便利になるジェミに、
ただ、呆れるだけだった。