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愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
星の試練編
97/136

記者来訪

「何か、ネタ無いの、ネタ、」


「ネタなんか、有りません!」


「・・・もしかして、有るんじゃないの、ネタ、」





 5月8日の錬曜日レィョルヤ、俺がこの世界に来て47日、



 その日の、放課後、珍しく、ローシィが、俺の処に来た。



 ローシィ・レーランド



 公都に有る、小さな魔導新聞社アウル・ジェーラの記者さんで、彼女がルーナちゃんの取材でこの学校に来た時、ひょんな事から俺と知り合いになり、


 俺が、俺の世界の情報を彼女に提供する事と引換に、彼女は、俺に此の世界の情報を教えてくれる、と言う契約を俺は、彼女とした。


 しかし、その後、彼女は忙しく、一回、ルーナちゃんからの、俺へのプレゼントである、魔導本アウル・バーデを持って来てくれた日、以外、彼女とは会っていない、


 何でも、彼女は、ルーナちゃんと、この一月、世界中を回っていたんだとか、


 所謂いわゆる随伴記者ずいはんきしゃって奴だ、


 彼女は、ルーナさんが、各国の首脳と会談した様子等を記事にしていたらしいんだが、俺は、魔導新聞アウル・ジェーゼを読まないから、そこら辺の事情は、俺には、分からない、



 それは、丁度、ハル、ダン、オルが、自主練習で、俺の宿舎に来て、


 ジェミは、趣味の事で、忙しいのと、女性達は、リアちゃんが、母国から、取り寄せた、水着エゥロイを選ぶ為に、リアちゃんの家に行ったらしい、


 じゃ、3人で、空でも飛ぶかってな、冗談を言いながら、バケツの上の水の上を片足で立つ訓練をしていた時、


挿絵(By みてみん)


「ふーん、貴方達、何か、変わった事してんじゃない、」


 と、言って、彼女は、俺の宿舎に現れ、俺は、彼女を見て、


「えーと、誰ですか?」


 と、言ったら、



()()()()()、そう言う、笑えない、冗談は、止めて、やっと、此方に戻って来たのに、」



 彼女は、疲れているのか、冗談に良い顔を、しなかった、


「悪りぃ、ローシィさん、」


 ハルも、ローシィを思い出したのか、


「こんにちは、ローシィさん、」


 と、バケツの水の上に立ちながら、ローシィに挨拶した、


 ローシィは、相変わらずの営業スマイルで、



「こんにちは、ハルチカ君、で、そちらの方は、」



 ハルは、同じように、バケツの水の上に立っている、ダンとオルに向かって、


「えーと、こっちが、クラスリーダの、ダンバード・グラスタ、あっちが、オルダス・ホールスです、」


 ローシィは、ダンに手を差し出しながら、


「私は、公都で、記者をしている、ローシィ・レーランド、宜しくね、」


 ダンは、真面目に、ローシィと握手して、


「ダンです、宜しく、」


 ローシィは、次に、オルに、手を差し出し、


「ローシィよ、宜しく、」


 オルは、ちょっと、考えて、


「公都の記者で、ローシィって、貴女は、もしかして、ディ・プラドゥのローシィさん?」


 ローシィは、嬉しそうに、


「あら、貴方、私、知ってるの、そうよ、私は、ディ・プラドゥのローシィ・レーランド、」


 と、ローシィは自分が本人である事をオルに告げ、オルは相手が本物のローシィだと知って、驚き、直ぐに両手で、ローシィの手を握りながら、


「御会いできて、光栄です、ローシィさん、私は何時も、貴方、の記事、読んでます!」


 何時も冷静な、オルが、珍しく、興奮している、


 そんな、オルを見た彼女は、極上の笑顔で、


「何時も、わたくしの記事を、読んで下さって、どうも、有難う、えーと、」


 オルは、慌てて、


「オルです、ローシィさん、」


「オルさんね、宜しく、」



 ・・・


 俺は、ちょっと驚いた、


 ローシィって、あれで有名人なんだ、



 でも、俺には関係無いけどね、


 俺、彼女の、知ってるし、


 そんな、彼女が、俺の方を向いて、


「で、スグルさん、貴方は何時まで、御客様を、外で、立たせておく気、」


 彼女は、手に持つ、包みを、俺に見せながら、言った。


「はいはい、じゃ、皆、休憩だ、御茶にしよう、」


 彼女は、宜しい、ってな笑顔を、俺に向け、


 

 ・・・



 まぁ、良いか、


 と、俺は諦めて、


 彼女を、俺の宿舎に招待した。




 ローシィは、ベッドとキッチンだけの部屋を見て、


「相変わらず、サッパリしてる部屋ね、」


 と、批評し、俺は、その批評を無視して、


「ちょっと、待って、」


 と言って、ベッドの縁を触って、


 スゥウウウウウンンンン


 ベッドをソファにし、


「どうぞ、座って、ローシィ、後、皆も、」


 ソファベッドを見た、ローシィは、慌てて、俺に、



「ちょっと待てぇ、スグル!其って何よ!!」



「うん?ソファベッドだけど、」



 ローシィは、呆れて、


「ソファに、ベッドって一つの家具に二つの機能、つまりベッドが、ソファになって逆に、ソファがベッドになるって訳ね、でも一体、どう言う、発想よ、此って、あんたの世界じゃ、普通なの?」



 ローシィさん、かなり、地が出てるので、俺も、彼女とは、気安く話す事にして、


「普通じゃ無いけど、まぁ、狭い部屋で、二つの家具が置けない場合に、考えられた家具かな、俺の世界じゃ、そう言う、便利な物は、結構有るよ、」


 ローシィは、ソファに座り、ソファを色々、動かして、座り心地を確かめていた、


 俺は、そんな、ローシィに御茶を入れたカップを渡し、彼女は、カップを受け取りながら、


「有難う、スグル、で、此れ、誰が作製したの、」


 床に、座って、俺から、御茶のカップを受け取った、ハルが、


「あっ、其れ、僕の父さんが作りました、」


 ローシィは、御茶を飲みながら、ハルを見て、


「ハルチカ・コーデル君よね、・・・もしかして、貴方のお父さん、オルチカ・コーデル氏?」


 ハルは、キョトンとして、


「はい、そうですけど、」


 ローシィは、ガッカリした顔で、


「じゃ、この、ソファベッドって奴、記事には、出来ないわね、」


 俺は、ダンとオルに、御茶を入れたカップを渡しながら、


「何でだ、ローシィ、」


 ローシィは、俺を見て、


「スグルは知らないでしょうけど、コーデル氏は、3年先迄、仕事が有る、この国じゃ、有名な家具職人、更に職人協会の副会長も、やってる、偉いさん、」


 ハルも、驚いて、


「えっ、父さんんて、そんな、偉い人だったんですか、」


 俺は、自分の御茶を飲みながら、


「其れが、何で、記事がダメなんだ?ローシィ、」


 ローシィが、首を振りながら、


「私、彼の記事、書いた事有るし、彼、この国の家具の将来を結構、気にしていたから、何らかの形で、協会から、このソファのベッドって奴、世間に発表する筈よ、」


 協会から、発表?


 そんな、大袈裟な事か?


「そうなると、単独、インタビューも同意しないし、スクープも無理ね、かってに記事にして、協会と揉めたくないし、って事、」



 ・・・



 ハルの父ちゃん、かなり、安く作ってくれたから、やっぱり、何か、考えが有るとは、思ってたけど、


 結構、大きな事か、


 まぁ、俺には、関係無い、アイデア出したけど、権利が、俺に有るとは、思ぇねぇし、


 ローシィは、すっかり、ソファの角度変えて、深く座ってくつろいでるし、


「ねぇ、スグル、何か、ネタ無いの、ネタ、」


 ローシィは、子供のように、駄々をコネだした、


「ネタなんか、有りません!」


 俺は、ローシィが、持って来た、お菓子を食べながら、キツく言った、


 ローシィは、不貞腐ふてくされながら、


「ぶぅ、ぶぅ、ケチケチ、スグルのケーチ!!」


 子供かぁ、って、俺が、心の中で、ローシィに突っ込んでいると、


 ハルが、自分の父の所為せいで、ローシィが困ってると、勘違いし、


「あの、ローシィさん、記事になるかどうか、分からないんですけど、明日、僕達、『海』に行くんです。」


 俺は、その瞬間、バカ、ハル、言うな!ってな、顔をしてしまった、


 ローシィは、俺がした、表情を見て、ニヤリってな、笑顔で、


「へぇー、『海』、ねぇ・・・もしかして、有るんじゃないの、ネタ、」

 

 俺は、誤魔化すように、


「たいした、事じゃ、無いんですよ、ローシィさん、ただ、明日は、生徒達と海に行って、泳ぎの練習するだけです。」


 ローシィは、騙されなかった、


「もっと、詳しく話して、()()()()()


 俺は、足掻あがいた、


「ローシィさん、子供が、水遊びするだけですって、ネタなんか、なりませんって、」


 ローシィは、嫌な、笑顔で、


「スグル、()・・・()・・・()・・・()


 俺は、観念した。



 結局、俺は、『星からの使命』以外は、魔導格闘技大会パールドゥアウルトゥオゥロセの事、『星の遺跡』の事、放課後自主講座フォールドコーゼ等、全てを、ローシィに話した。


「ね、ローシィ、全然、記事になんか、成らないだろ、」


 と、最後に、纏めて、この話しを終わらせようとしたんだが、


 ローシィは、チィッ、チィッ、と指を振りながら、


「分かって無いなぁ、スグル、良い、この国で、魔導格闘技アウルトゥオゥロセって言えば、人気スポーツ、」


 ローシィは、ニヤリと笑いながら、


「学生大会だって結構、注目されるし、もしもよ、弱小チームが、全国大会で優勝したら、どうなると思いますか、」



 あっ、



 確かに、



「・・・ニュースになる、」



 ローシィは、勝ち誇った顔で、


「でしょ、特ダネ、独占取材じゃない、スグルさん、」



 嫌、彼等じゃ、優勝は無理だ、



 とは、俺は、口が裂けても言えない、



 ローシィは、ソファで、背を反らし、両腕を伸ばしながら、


「其れにさぁぁあ、スグル!私、本当は、一月、休暇、取って、自由都市の海に行く予定だったのにぃぃい、あんただけ、ずぅうるぅうぃい、だからぁぁあ、私もぉぉおお、海でぇぇええ、遊びぃぃぃたい!!!」



 そっちかい!!!


 俺は、ため息を、つきながら、


「でも、ローシィ、放課後自主講座フォールドコーゼだぜ、幾ら取材って言ったって、責任者のメルティスト先生の許可がいるし、俺じゃ、決められないって、」


 ローシィは、立ち上がって、


「大丈夫、私は、記者よ、交渉と聞き込みは、得意!」


 そう言って、彼女は、俺にウィンクしながら、去っていった。




 次の日の5月9日、雷曜日ラィョルヤ


 その日の朝、今日は、第11回放課後自主講座(フォールドコーゼ)開催日、朝早く、俺の宿舎の前の庭に、3台の魔導四輪車(モーグコルク)が停まった。


 1台目は、ブライが運転する、料理専用魔導四輪車(ベーリ・モーグコルク)である事は、分かる、


 他の2台は、なんだ?


 1台の、魔導四輪車(モーグコルク)の運転席から、アンリが降りてきて、俺は、ちょっと驚いて、


「アンリ、お前、免許、持ってたの、」


 と、つい、聞いてみたんだけど、彼女、


「免許?ですか?」


 あっ、そうか、此方の、自動車の普及率から考えても、スグルの世界の免許制度なんてもん、無いのか、


「どうしました、アンリ、」


 もう、1台の魔導四輪車(モーグコルク)の運転席からは、黒いスーツに、白髪の初老の、品の有るじいさんが降りてきた、


「執事長、」


 えっ、物本の、執事!、初めて見た、


「ん、此れは、スグル様で、いらっしゃいますかな、私は、ロンディーヌ家に使えている、執事のパーダを勤める、エリンデゥナ・ウォルデュースです、エリンとお呼び下さい、」



 俺は、エリンさんと、握手しながら、


「こんにちは、エリンさん、で、今日は、なんで、此処に、」


 俺は、エリンさんに、単刀直入に聞いた。


 エリンさんは、ちょっと、驚いて、


「おや、御嬢様から、聞いておられないと、スグル様は、」


 アンリは、頷きながら、


「御嬢様は、言ってない、」


 エリンさんは、分かったって顔で、


「スグル様、今日は、海水浴をなさると聞きまして、更衣室用に、宿泊用魔導四輪車(ルドン・モーグコルク)を用意しました、」


宿泊用魔導四輪車(ルドン・モーグコルク)?」


 エリンさんは笑顔で、


「はい、男性用、女性用の2台、勿論、シャワー(ドルサァ)も、有ります。」


 更衣室に、シャワー(ドルサァ)って、どれ程、本格的に、楽しむつもりなんだ、って、俺は、呆れた、


 金持の御嬢様のやる事は、徹底してる、本当に、意味が、分からん、


 と、其処に、ブライが、料理専用魔導四輪車(ベーリ・モーグコルク)から降りてきて、


「おっ、スグル、おはよー!、」


 相変わらず、明るく、元気な、ブライに、俺も、


「あぁ、おはよう、ブライ、しかし、すげぇなぁ、ブライ、本格的に、宿泊用魔導四輪車(ルドン・モーグコルク)迄、用意したのか、」


 ブライは、得意そうに、


「当たり前だろ、なんせ、御嬢様は、おっと、いけねぇ、此は、料理長オヤジから、止められてたんだ、」



 ・・・



 こいつ、絶対、喋りたくて、態とやってないか、


 俺は、絶対に聞かない、


 ブライは、俺の方に来て、


「なぁ、スグル、今回は、この、3台を入れてくれ、其れと、あっちで、新鮮な魚、取ってくんないか、」


 新鮮な魚?


 俺が?


「ブライ、なんで、俺が、魚、取るんだ?」


 ブライは、笑いながら、


「だって、スグル、あんた、上級魔導士、魚取りくらい簡単だろ、そうすりゃ、皆に、旨い、魚料理、出せるし、どうだ、食いたいだろ、スグル、」



 ・・・



 まじ、食いてぇ、



 考えてみたら、


 この、一月、肉とパンで、


 魚、食ってねぇ、


 チキショー、


 俺は、食の誘惑に負けて、



「分かった、ブライ、俺、頑張る、」




 と、答えて、しまった、



 情けない、俺であった。

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