其々の思惑
「其で、ダン先輩、ガル先輩との決着、勝っても、負けても、地区予選で、本当につくんですか?」
「ああ、お互い、勝ち上がれば、彼とは、決着がつく、アル、」
「・・・ダン先輩も、色々と大変ですねぇ、」
今日は、5月6日の力曜日、魔導格闘技大会、東地区予選大会が開催されるのは、5月10日の光曜日、
4日後だ、
此の日の為に、私達は、スグルさんにお願いして、魔導格闘技の練習を重ねてきた、
スグルさんには、スグルさんの思惑が有るのかも知れない、
だから、私達の面倒を見てくれている、
私達は、魔導術が不得意な、C組だ、まともに、A組と戦ったら、絶対、勝つ事は出来ない、
だからこそ、私達は、ハルのように、スグルさんの国の魔導術、『星導術』を覚える必要があった。
そして、分かった事は、私達は、魔導術より、『星導術』のほうが、向いているような気がした事だった、
私達は、短期間で、何とか、『星導術』の身体強化迄、マスターする事が出来た、
たぶん、魔導術だったら、例え、身体強化を習ったとしても、其処迄は、上達しないし、強化自体、不可能だったかも知れない、
此で、私達は、何とか、A組の、ガルホール・スターゲスと互角に戦える、そう思いながら、
学校の食堂で、オルと昼食を食べていると、
「此処、良いですか、ダン先輩、」
と、1年の学年、トップ、アルベスト・デューレエードが、私達に声を掛けて来た、
「ああ、構わないよ、アル、」
と、私は答え、アルは、私の前のオルの席の隣に座り、手に持つ昼食をテーブルに置いた後、
「先輩、聞いてますよ、10日の地区予選、出るんですよねぇ、」
と、話題を、振ってきた。
オルが、アルに、
「なぁ、アル、私達が、地区予選に参加する事、なんで知ってんだ、」
アルは、首を竦めながら、
「オル先輩、有名ですよ、地区予選で、ダン先輩と、ガル先輩が、団体戦の学校推薦枠を賭けて、戦うの、」
有名?
私と、ガルが戦うって、
「ガル先輩が、全校生徒に、言い触らしてるんです、推薦の団体戦枠は、本当は、自分達の物だって、其を、予選で証明するって、」
私は、驚いた、
「何故、ガルは、そんな事を、」
「ダン、たぶん、私達が、棄権して逃げないようにする為だ、」
「オル先輩、僕も、そう思いますよ、何せ、ガル先輩の後ろには、3年生もいますから、」
3年?
「3年生が、なんで、関係、有るんだ?」
私は、アルに聞いた、彼は、また首を竦めて、
「A組は、3年から1年迄、連繋が強いんです、将来的にコネとかが、重要になるから、」
アルは、声を小さくして、
「3年の先輩達が、団体戦でC組が選ばれた事に、ブチ切れて、ガル先輩、呼び出されたんですよ、僕も呼び出されましたけど、その席で、ガル先輩、相当、言われましたよ、3年の先輩方に、」
・・・
そうだったのか、
だから、彼は、あんな、申し出を、
「其に、知ってます、3年生は、ダン先輩とガル先輩のどっちが勝つか、賭けてますから、」
えっ、
賭け、
「アル、3年生は、そんなに、私達の事が気になるのか、」
アルは、頷きながら、
「はい、1年生の間でも、先輩達の事は、話題になってますよ、流石に、賭け迄は、なりませんけど、C組なんか、先輩達のファン、多いですし、」
・・・
そうか、
「ちなみに、3年のフェルシェール先輩は、ダン先輩に賭けたって、また、3年は大騒ぎだそうです、」
3年の総代のフェルシェール先輩が、私達に、
「何故、私達に、フェルシェール先輩が、」
アルは、首を振りながら、
「噂です、真偽は分かりません、」
其処で、暫く、沈黙した後、
アルは、心配そうに、
「其で、ダン先輩、ガル先輩との決着、勝っても、負けても、地区予選で、本当につくんですか?」
「ああ、お互い、勝ち上がれば、彼とは、決着がつく、アル、」
そうだ、もう、これ以上は、関係無い、勝てば、正式な、学校の代表であり、
負ければ、
アルは、暫く、私を見た後、
「・・・ダン先輩も、色々と大変ですねぇ、」
と、一言、言った後、食べ終った空の昼食を持ち、立ち上がろうとしながら、
「処で、先輩、先輩達は、何処で、練習してるんですか、」
オルと私は、顔を見合わせて、
オルが、
「スグルさんが、練習場所を用意してくれてる、」
と、簡単に答え、
テーブルから、離れようとしたアルが立ち止まって、
「スグルさん?あぁ、あの学校作業員か、へぇ、知らなかった、あの人、合成魔導術が使えるんだ、」
と、独り言を言いながら、アルは立ち去った。
アルが、去った後、私とオルは、二人共、暫く、沈黙が続き、
最初に、口を開いたのは、オル、
「ダン、もう、皆には、言ったほうが良い、ガルとの試合に、リアが出場、出来ないって事、」
・・・
そうだ、
リアを、出場させるな、
そう、ガルは、私達に言った、
リアは、本当はA組に入る程の実力者、其じゃ、本当のC組の実力じゃあ、無い!
ずるく無いか!!
そう、言って、ガルは、リアの出場を、認めなかった、
これは、AとCの、プライドを賭けた、戦いだ、
そう、ガルは喚いていた、
あの時は、彼が言ってる、本当の意味が分からなかった、
今なら、分かる、
そう言う事か、ガル、
私は、頷きながら、
「分かってる、今日、クラスの皆に話す、」
そう答えた後、私達も、食堂のテーブルから立ち上がった。
「皆、聞いてくれ!」
放課後、帰ろうとした、クラスの皆を引き留める為に、私は、授業が終わると、直ぐに、席から、立ち上がって、皆に向かって、言った、
私は、教壇に移動しながら、言葉を続けた、
「皆、聞いてくれ、皆も、知ってると思うが、私達は、4日後のベルトリアの街で開催される、魔導格闘技の地区予選に出場する、」
私は、教壇の前に立ち、
「私は、A組のリーダ、ガルホール・スターゲスと、地区予選で、上位に行った方に、此の学校の団体戦の推薦枠を譲る約束をした、」
私は、此処で、言葉を止めて、皆の様子を見回した、皆は、別に、私の発言でも、驚いた様子は無かった、
たぶん、皆、色んな、噂を聞いて、知ってたのかも知れない、
私は、話を、続ける事にした、
「其で、ガルと、一つ約束をしたんだ、もし、A組と対戦した時、上級魔導士のリアさんは選手として、出場させないと、」
エエエエエエエエ!!!!
クラス中が、騒然となった、
やはり、皆も、リアの力が有るなら、大丈夫だと、思っていたのか、だが、リアは練習中でも、上級魔導士の実力を出して無い、だから、彼女は、大会でも実力を出すとは、思えない、
「何で、そんな約束したんだよ!」
「リアさんだって、C組じゃないかよ!」
クラス中が騒いでるが、
私は、話を続けた、
「ガルは、C組の本当の実力で勝負しろと言ってきた、C組が代表に選ばれたのは、卑怯にも、リアさんがいるからだと、」
上級魔導士のリアさんがいるから、
確かに、学校中が、そう思っているのかも知れない、
あの、選抜試験の時の、C組の強さは、異常だった。
皆が、同じように、思い、
全員が黙った、
私は、皆に、話す、あの時の事を、
「そうじゃない、と、ガルに言っても、彼には聞いて貰えなかった、彼は、だったら大会にリアさんを出さないで証明しろって言って、其も、条件だと付け加えたんだ、」
・・・
クラスは、完全に沈黙し、
誰も、私を非難しなかった、
「其で、リアさんの代わりに、女子の選手を一人、選らばなくてはならない、皆、協力してくれ!!」
クラスは、完全に沈黙した、
誰も、発言しなかった、
出たい、と言う女子は、いなかった、
・・・
私が、誰かを指名しなくては、ダメか、誰が良い、
私は、女子を見た、
皆、私と、目を合わせないようにしている、
「ドリス、貴方が出るのよ!」
エミリアが、立ち上がって、一人の女子を指名した、
ドリス、
ドリス・ウェルチカ、
彼女、確か、郊外の牧場の娘で、実力はB組に匹敵するらしいけど、性格が奥手で、大人しく、何時も、実技で上がって、実力を出せないって言われている、女子、
ドリスは、急に、自分の名前を言われて、
「えっ?えっ?エエエエ!わ、わ、私!」
エミリアは、指を、ドリスに向けながら、
「ドーリ、貴女が、リアを除くと、一番、実力が有るんだから、出るの!!」
ドリスは、慌てて、顔を真っ赤にしながら、
「で、でも、わ、わ、私、エミー、む、む、無理ィィィ、」
私も、心を、決めた、
「ドリス、頼む、試合は、出てくれるだけで、良い、後は私達で、何とかする、頼む、」
私は、ドリスに深く頭を下げた、
「エエエエエエエエ!!!」
ドリスは、え、を連発しながら、ええ、良いよ、って言った事に、どさくさにされて、ちょっと、無理矢理、協力して貰う事になった。
こうして、リアは、地区予選は、控え選手になってもらい、地区大会から出場する、地区予選は、ドリスが選手として参加する事が決まった。
時刻は、4時、他のクラスメートは、帰宅し、今は、『星に愛されし民』だけ、勿論、ドリスも残っている、
ドリスは、場違いな雰囲気に、おろおろしている、
「エミ、エミ、わ、わ、私、」
エミは、ドリスを安心させるように、
「大丈夫よ、ドーリ、ダンが、此れからの事、貴女に説明するだけよ、」
確かに、ドリスには、私達の事は、説明しなくちゃならないけど、その前に、私が、説明を聞きたい、
此の学校で起きている事を、勿論、オルは頭が良いし、色んな事を良く知ってる、しかし、学校の事、世間の事、全ての事を知ってる、彼には及ばない、
「私が説明するより、ガルが、何故、こんな無茶な事を、私達に言ってきたか、私達に説明してくれ、ジェミ!」
ハルが、
「えっ、ジェミ?」
全員が、ジェミを見た、
「知ってたんだろ、ジェミ、3年生が絡んでいる事を、」
ジェミとリアを除いた、全員が、
「3年生?」
と、驚いた、
ジェミは、諦めた顔で、
「まぁ、知ってだけど、」
私は、ジェミに詰め寄った、
「何故、言ってくれ無かったんだ、」
ジェミは、首を振りながら、
「ダメだよ、ダン、はっきり言うけど、真偽が確認されて無い、情報は、デマの可能性が有り、其を、無秩序に流せば、悪意に変貌するんだ、」
・・・
悪意!
「なぁ、ダン、君の、今までの情況で、3年の話をしたら、君は、情報を悪意と取る、その時、君はどうなるんだ、ダン、たぶん、君の心は、折れちゃうんじゃないの?」
ハルが、慌てて、
「ジェミ、言い過ぎだ、」
・・・
私の心が、
折れる、
オルが、私に話し掛けてきた、
「ダン、私も、ジェミが、正しいと思う、今までの君は、責任感で潰れる、そう思える程、切迫していた、」
私が、追い詰められていた、
私が、
オルが、続ける、
「アルが、今日、私達に話し掛けてきたのも、ダン、君の様子が変わったからだ、」
私の様子が、変わった、
其は、
『星の遺跡・密林』を攻略出来たから、
私達が、身体強化を、マスターしたからか、
ふぅ、
「済まない、ジェミ、そうだな、今までの私なら、君の話を信じなかった、」
ジェミは、笑いながら、
「3年生達は、僕達が考えているより、この学校の事を気にしてるよ、何せ、自分達の将来が、賭かってるからね、今、僕達の学校は、世間から結構注目されてる、」
注目、
されてる?
「学長は、魔導皇で、殿下と和解したし、魔導新聞にも取り上げられたし、更に、学校を有名にする為に、先輩達は、全学年で、公都での優勝を狙ってる、」
全学年、
優勝!!
「だから、ガルが、呼び出されたんだ、先輩達、僕達じゃ、優勝、出来ないって思っていたから、」
優勝、出来ない、
「まぁ、ガルも、必死だよね、」
しかし、3年の中には、私達が代表にふさわしいと言う人もいる、
フェルシェール先輩、
「だが、3年生は、今度の、地区予選で、私達が選ばれると、信じている人もいるんだ、ジェミ!」
ジェミは、
「フェルシェール先輩だよね、」
やはり、知ってるのか、ジェミは、
私は、彼に、聞いた、
「ジェミ、君は、知ってるんだな、今度の事で、3年生が賭けをしている事も、」
ジェミは、困ったって顔で、
「知ってるよ、フェルシェール先輩、あれで、やり手だから、何せ、公国の四割の企業を持つレェーベン家のお嬢様だし、僕達の事を庇うにも、ああ言うやり方するんだよね、」
庇う、
先輩が、私達の事、
えっ、待ってくれ、
「ジェミ、君は、フェルシェール先輩と仲が良いのか?」
仲が良いに、リアが反応し、
「ジェミ、フェルシェールと、どう言う仲か聞きたい、」
ジェミが、慌てて、
「リア、先輩とは、趣味の事で知り合っただけだって、ずぅーっと、言ってるよね、」
・・・
オルが、私の肩を叩きながら、
「なぁ、ダン、皆、悪意でしてる事じゃ無い、ガルも、自分達が、代表にふさわしいと思って、行動している、だから、もう、気にするのは、止めよう、」
「・・・分かった、オル、」
ジェミは、リアを宥めながら、
「あっ、其とね、ダン、B組も、トーネルをリーダにして、予選に出るから、」
えっ!
・・・
ジェミは、本当に、
サラリと、
重要な事を、
言う、
本当に、