表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛する星に、願いを込めて  作者: Hs氏
星の試練編
91/136

家族来訪

 5月2日の雷曜日ラィョルヤ、この日、『星に愛されし民(スタラブルラディ)』の、第8回放課後自主講座(フォールドコーゼ)が開催された。


 この日は、ハルの提案で、『星の遺跡・密林』を攻略する事になり、それは、一回切りの挑戦だった。


『星の遺跡・密林』の仕組みは、二段階に分かれていて、第一段階は、数百の魔鼠アウル・ペーコが、彼等に襲い掛かり、


 彼等が、その猛攻をしのいで、ゴールの神殿迄、後、百メータ付近で、第二段階の仕組みが発動し、


 それは、神殿の攻略者の弱点を衝いた、自動人形オートマタを神殿が作り、攻略者にぶつける仕組みだった。



 神殿は、アンリ、ダン、エミに対して、自動人形オートマタをぶつけて来た、


 魔鼠アウル・ペーコの戦いで、疲労していた彼等に、自分達の技量を上回る相手の対処は、過酷で、俺は、この時点で、『星の遺跡・密林』の攻略を中止しようとしたが、


 ハルは、その中止を拒絶し、


 自ら、『右星の扉(ライトスターホール)』を開き、アンリ、ダン、オルに、自動人形オートマタの迎撃を指示した、


 その結果、覚醒した、アンリ、ダン、オルは、自動人形オートマタを撃破して、


星に愛されし民(スタラブルラディ)』は、『星の遺跡・密林』の攻略ポイントである、神殿に到着した。


挿絵(By みてみん)


 此処で、俺は、彼等の疲労が大きい事と、『星の遺跡・密林』は日が沈み、夜になった為、一旦、活動を中止とした。


 アンリも、ダンも、オルも、何時もと変わらない、様子では有るが、疲労は大きく、三人共、地面に座り込み、大量の汗と肩で息をしていた、


 ハルは、ジェミから、あの巨大な魔石アウル・オーダを受け取って、『星の力』を体に取り込み、何とか、立っていられる状態だったので、


 俺は、メルティスト先生のる場所に、『星の門(スターゲート)』を開き、全員をその場所に移動させた。


 彼等の疲労から、考えても、とてもカツレツのサンドイッチ(バンデゥタ)は、食える状態じゃぁ無い、どうやら、俺は、選択ミスをやらかしたようだ、なんせ、俺は、過去の経験でも、調理師、栄養士、等のプロの料理人には、成った事が無い、


 俺は、急いで、宿舎に戻り、昨日、摘んだ、『星に祝福されし果実(スタラブルタゥタァ)』と、そのソースを持って来て、彼等に、出来るだけ摂取するように勧めた。


 勿論、食べれるなら、とカツレツも出したんだが、ハルだけは、なんとか受け取り、口に入れて、他の皆は、果実だけを口にし、


 この状況に対して、メルティスト先生は、俺に、何か言おうとしたが、首を振って、出てくる言葉を噛み殺したようだった。



 彼等が、限界を越えた、疲労に襲われ、動く事も出来ない状態に成った、責任は、全て、彼等を止めなかった俺にある、


 もし、彼等が、この試練で命を、落としたら、俺は、彼等の両親、兄弟、姉妹に、どうやって、謝れば、良いんだ、と、今更ながら、後悔の二文字が、俺の脳裏に浮かび上がり、


 そして、今までの俺だったら、絶対に、この試練を止めてた、何故、俺は、止める事が出来なかったんだ、と、考えるようになった。



 俺が試練を止めなかったのは、



 ハルの力なのか?



 ハルの力とは、一体、何なんだ、



 俺は、初めて、本気で、ハルの力を考え始めた、



 俺は、今まで、ハルは、才能が無い、ただ、単純に、そう思っていた、


「あの、スグル様、」


 しかし、もっと、違った方向から、考えたら、どうだろうか、


 そうだ、スグルの世界で、良く遊んだ、ゲームの設定で、考えたらどうだ、


「スグル様は、そのぅ、あまり、料理、得意じゃ、ありませんよねぇ、」


 例えば、ゲームだと、支援職って言う設定も有る、


「ですから、家から料理人シェフを派遣したいんですけど、如何でしょうか、スグル様、」


 もし、ハルが支援職だったとして、今回、アンリ、ダン、オルに、強化の術、みたいな物を使ったとしたら、あの突然の覚醒は、説明が付くんじゃねぇの、


「スグルさん!リアが、聞いてますよ!!」



 えっ!


 何だ!!


「えっ?ジェミ?リアが聞いてる?」



 ジェミは、呆れながら、


「スグルさん、リアの話し、聞いてなかったんですか、」



「聞いてるって、聞いてるよ、料理の事だろ、オッケ、オッケ、良いって、」



 リアは、嬉しそうに、


「じゃ、直ぐに、準備します、」



 ジェミは、疑わしそうに、


「本当に良いんですか、スグルさん」


 俺は、頷きながら、


「うん、構わないって、俺も旨いもん食いたいし、」


 どうせ、また、ジェミ、お前が、リアん家から、旨い物、運んでくんだろ、良いじゃん、


 俺は、直ぐに、またハルの事を考えた、


 じゃ、ハルの力は、チームワークとは、関係無いのか、


 そうとも、思えないんだが、


 支援職ってのは、チームに取って、重要、だよなぁ、でも、ゲームに取っては、いないゲームも有るし、


 本当に、ただの支援だけが、ハルの力なのか?


 分からない、


 俺は、結局、考えに行き詰まった。


 

 その後、全員が俺の宿舎の前に戻り、クールダウンが出来る程、体力が快復した後、彼等は、初めて、『星の遺跡・密林』を攻略した事を実感して、騒ぎ始めた、


 ダンとオルが、お互い、肩を叩きながら、今日の戦いを語り、リアはアンリを、沢山、賞賛して、ハルとエミ、ジェミは、取り敢えず、攻略した事を喜んでいた、


 そして、メルティスト先生は、一言、


めるべきです!」


 そう、俺に言った。



 俺も、一言、



「済みません、」



 と、謝った。



 その日は、其で、『星に愛されし民(スタラブルラディ)』は、解散となり、リアとアンリは、近くの自宅に、ハル以外は、寄宿舎に、ハルは、自宅に帰った。



 そして、次の日、


 5月3日の光曜日コゥョルヤ、五月に入っての初めての休日、今日は、俺と遊びたくて、ケティも、出掛けようとはしない、


 ボーゲンさんの朝飯を食った後、ちょっくら、ケティと、『星の遺跡・密林』の神殿を見てみっか、と思い、じゃ、弁当でも作っか、って考えて、


 野鳥コルゥコゥの卵と、星のソースを混ぜて、マヨネーズっぽいソースに野菜とベーコンを挟んだ、サンドイッチ(バンデゥタ)をケティと俺の分を沢山、用意した時、


 時刻は、11時半、



 ドン、ドン、



「師匠、起きてますかぁ、」



 起きてるって、


 ケティは、ビクッ、としたが、


「大丈夫、ハル、だ、」


 ハルと言う言葉に、安心したのか、ケティは、ゴロッと、床に寝そべりながら、此方を見てる、


 早く出ろ、ってか、はい、はい、


 俺は、玄関に行き、戸を開けると、



「いやぁ、スグルさん、息子が大変、世話になって、」


 体の大きい、髭もじゃのおっさんが、俺に抱き付いてきた、


 えーと、息子って、ハルの事?



「貴方、急に、抱き付くから、スグルさん、ビックリしてますよ、」


 上品な、背の高い、御婦人が、この、熊のような、おっさんを叱ってる、


「兄貴が、格好いいって言ってるから、期待してたのに、うぅぅぅ、」


 直弩球ちょどきゅうな事、言う、小ちゃい、小まっしゃくれた、ハル似の女の子がいるし、


「ファルン、師匠は、格好いいんだって、」


「ファちゃん、ハルは、スグルさん信者だから、何、言っても無駄よ、」


 って、おい、エミちゃんまで、いるって、一体、何が、あったんだ?



「えぇーと、ハル君の、ご両親ですよね、今日は、一体、何の御用で、此方に、・・あっ、そうか、ハル、今日は、寄宿舎に引越しか、」



 ハルの両親が、顔を見合わせて、


「貴方、言ってなかったの、」


 熊のようなおっさんが、頭を掻きながら、


「・・・忘れてた、」


 そして、改めて、手を差し出しながら、


「私は、オルチカ・コーデル、スグルさんが、私に依頼した、寝具になる椅子を、今日は届けに来ました。」


 俺も、握手をしながら、思い出した、



 そうだ、先月、確かに、頼んだ、



 10万RG(リージェン)の、



 ソファベッド!



 ハルも、嬉しそうに、


「今日から、寮に入る予定で、出掛けようとしたら、父が、学校の関係者に届け物が有るって言うから、聞いたら、師匠だったんで、皆で、師匠の処に来ました、」



 皆で、来るって、


 まぁ、今日から、固い床で寝なくて済むのは、助かるんだけど、


 御婦人が、俺に手を差し伸べて、


「ハルヒメ・コーデルです、息子が大変、お世話になって、感謝しています、スグルさん、」


「いぇ、此方こそ、」


 ハルのお母さんと、握手した後、チッコイのが、


「私は、ファルン・コーデル、宜しくね、」


「あぁ、宜しく、」


 と、チッコイのとも、握手をした、


 その後、ソファベッドが、宿舎に運ばれ、寝ているケティに、ハル、エミ、以外は驚き、俺は、リナが魔導本アウル・バーデに加えた許可書を見せて、


 ケティが、安全である事を説明し、


 皆は、納得して、


 配達屋ローダ・アルパが、ソファベッドを、設置した。



 ハルもエミちゃんも、俺が許可書を持っている事に驚いていたが、敢えて、詳しい事を俺から、聞こうとはしなかった。



 ソファベッドは、豪華な、革製で、俺が、考えた、背が倒れるって言うより、縁を触ると全体がスライドして、完全なベッドになる、ってな感じで、


 本当に素晴らしい出来で、俺は、ちょっと驚いた。


 

 オルチカ氏が、ベッドの事で、俺に説明してくれたんだが、


「生地は、丁度、上級野牛バ・コルゥモウの革が入手出来たんで、其を利用し、動く仕組みは、魔導技術者として、有名な、ミゲール・トレコロフ氏に依頼して、骨格を、彼に製作して貰いました、どうです、良い動きでしょ、スグルさん、」


 確かに、動きは良い、


 スムーズに、ソファからベッドになるし、逆も、スムーズだ、


 更に、上級野牛バ・コルゥモウの革、


 確か、以前、ルナちゃん達と丸焼き、食ったよな、


 あの時の牛?


 まさかなぁ、

 


「素晴らしいです、本当に、有難う御座います、コーデルさん」


 俺は、素直に御礼を言った。


 しかし、ミゲール・トレコロフって、確か、『お洒落亭(ブータレゲール)』の親父だよなぁ、


 彼奴あいつ、技術者として、有名なのか?


 見えん、


 でも、確かに、


 便利な、親父には違い無い、



 俺は、感心した。



 ハルのお父ちゃんが、俺の部屋を見渡して、


「しかし、スグルさん、見たところ、家具が少ないようですけど、」


 うん、家具職人からしたら、俺の部屋は、確かに、家具は少ないって言うより、無い、キッチンは、家具じゃねぇし、


「まぁ、此処は、学校から借りていて、俺は寝るだけなんで、何も要らないし、後、必要なのは、小さいテーブルだけかなぁ、と、思っています、ただ、生徒を、この部屋に招待すると、大きなテーブルが欲しいし、大きいと邪魔になるし、実は、迷ってます、」


 オルチカ氏は、身を乗り出して、


「ふむふむ、大きさが変わるテーブルが欲しいと、ヤッパリ、スグルさんは変わっていらっしゃる、貴方が要望とする家具は、魔導工学技術が必要な家具だ、実に、興味深い、」


 奥さんが、心配して、


「貴方、」



 俺も、慌てて、


「嫌、大丈夫ですよ、そんな、不可能な物、依頼しませんから、」



 奥さんは、ほっとした顔をした、


 たぶん、あの表情だと、この、ソファベッド、10万じゃ、無理だったんじゃねぇのか、悪い事をしたな、


 ハルのお父ちゃん、芸術家肌だから、気に入ったら、採算度外視で仕事するタイプと見た、


 母ちゃん、あの父ちゃんだから、苦労してんじゃねぇの、


「でも、ママ、此は、チャンスなんだよ、こう言う、発想の家具を、我が国で、作る事が出来たら、ポワジューレのような機能だけの安い家具に、勝てるかも知れないんだ、」



 へぇ、付加価値って訳だ、この熊のようなおっさんも、見掛けに寄らず、色々と考えている、


 俺は、また、感心した。



 しかし、これ以上、ハルのお父ちゃんと、家具の話しをしてると、たぶん、また、スグルの世界に有ったとんでもない、家具を頼んじゃいそうになりそうなので、


 そうなると、ハルのお母さんが、大変だから、俺は話題を変える事にして、


「なぁ、ハル、寄宿舎の手続きは、済んだのか、」


「はい、マーキさんから、鍵も、貰いました。」


 そうか、今日は、エルさんじゃ無く、マーキが出てんのか、


「じゃ、メシ、食ってかないか、今日は、出掛けるつもりで、サンドイッチ(バンデゥタ)を沢山、作ったんだ、」


 ハルは、嬉しそうに、


「えっ、良いんですか、」


 俺は、頷きながら、


「あぁ、皆さんも、一緒にどうですか、」


 と、ハルのご両親、ファルンちゃんにも、勧めた、何せ、ワンパターンのサンドイッチ(バンデゥタ)だが、味には、自信が有る。



 こうして、午後、俺は、ハルと、ハルのご両親、ファルンちゃん、ちゃっかりとエミ、そしてケティも含めて、


 庭に有る、テーブルで、皆で、俺の作った、サンドイッチ(バンデゥタ)を食べた。






 食事をしながらの、楽しい、一時が過ぎ、


 ご両親も、ファルンちゃんも帰る時刻となり、

 


 ハルのご両親は、帰る際に、ハルを頼みます、と深く、俺に頭を下げ、


 俺は、一言、



「分かりました、」


 と、だけ、答えた。



 たぶん、ご両親は本能的に、息子が、何かとてつもない事に、挑戦している事を知ってんのかも、知れない、


 そして、其に、俺が、関わっている事も、



 大きな不安を、殺して、二人は、俺に頭を下げた、



 頼むと、



 俺は、



 二人の信頼に、答える、



 そう、心の中で、



 彼等に、答えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ