チーム
4月30日の磁曜日に第7回の放課後自主講座が開催された、
此の日、俺は、本格的に、『星に愛されし民』が、『星の力』を使いこなす、訓練を始めた、
其は、彼等が、俺が、宿舎の前の森に張ったロープを登り、天辺にいる俺の元に来る事だった。
彼等が、登って来る途中、俺は、俺が作った数百の『星珠』を、彼等にぶつけて、彼等が登るのを邪魔する、
彼等は、その『星珠』を避けたり、弾く事が出来ず、『星珠』に弾き飛ばされて、次々とロープから、落下して、
森の地面に這いつくばった。
彼等は、挑戦する事、三回、その度に地面に這いつくばり、
そして、時間は、17時半、此処で、ロープ登りを中止し、俺も、ロープの天辺から降りて、
「よし、今日は、此処まで、皆、クールダウンした後、解散、で、次回、明後日の放課後自主講座は、今日の続きだ、皆が、出来る迄、此の、『ロープの森』で特訓する、」
オルが俺に、
「特訓?ですか、」
俺は、頷き、
「ああ、特別な、訓練って言う意味だ。」
ダンが噛み締めるように、右手を握り締めながら、
「特別な訓練、特訓!」
ふぅ、
特訓は、ずぅーっと、ダンが望んでいた事だし、まぁ、彼にとっては、納得の事か、
その後、皆は、解散となり、俺は、ハルに、『星のソース』を掛けた、『星に祝福されし食物』のサンドイッチを渡し、
「遅くなるから、帰る途中で、食え、腹へってんだろ、ハル、」
ハルは、嬉しそうに、
「はい、師匠!」
何時もの、明るい、ハルの返事を聞いて、俺達は別れた。
「此のままじゃ、だめだ、ダン、」
練習の終盤、私は、ダンに話し掛けた、
ダンは、期待のこもった瞳で、私を見ながら、
「オル、何か手があるのか、」
「うーん、有ると言えば、有る、まぁ、私の話を聞いてくれ、ダン、」
私は、ダンと話をした、チームとは、チームワークとは何かを、
私達は、魔導格闘技大会の団体戦に出る、個人戦じゃ無い、皆で、相手のチームの王を攻略しなくては、ならない、
今回の、スグルさんの特訓とやらで、私達、個人での頑張りだけでは、どうにもならない事が分かった、
やはり、作戦が必要だ、
今までの考え方では、ダメだ、
ダンは、私に聞いてきた、
「で、一体、どうする気なんだ、オル、」
その後、直ぐに私達は、帰り際の、アンリを追い掛けて、話が有るからと、引き止めた、
「私に、朝の練習に出ろと、オルダス・ホールス?」
彼女は、リアの家の使用人の関係者なのか、言葉は丁寧だし、リアをお嬢様と呼んでいる、
「ああ、オルで良い、其れで、アンリ、明日、朝、ダンと私と、君で、ちょっと、試したい事が有るんだ、だから、出来たら、朝の5時、此の場所に来てくれないか、」
アンリは、リアを見ながら、
「お嬢様、」
リアは、頷きながら、
「うん、良いんじゃない、付き合ってあげたら、私の事は、心配しないで、一人でも大丈夫だから、」
アンリは、暫く考えた後、
「では、5時に、来ます、オル、」
私は、アンリの手を握りながら、
「有難う、アンリ、」
アンリは、顔を赤くして、
「えっ!」
・・・
アンリって、結構、奥手なのか?
リアは、そんなアンリを見て、笑ってるし、
5月1日の錬曜日、俺が此の世界に来て、2度目の月が変わった、
その日、俺は4時に起きて、ダンを待っていた、
俺は、てっきり、今日も、ダンが、一人、自主練習に来ると思っていたんだが、今日は、オルにアンリ迄、来た、
三人とも、魔導防護服を着込んで、やる気満々だし、
「スグルさん、やはり、私達の自主練習に付き合ってくれるんですね!」
オルが、嬉しそうに、俺に言って来る、
俺は、ちょっとカッコ付けて、
「熱心な生徒を、見捨てるってのは、学校作業員としては、失格だろ、」
此の言葉で、ダンは、俺を尊敬している、目で見てる、
実際の、俺は、星が、俺に託した、使命で、動いているだけなんだが、
「じゃ、軽く、ストレッチしてから、始めようか、」
「私が先頭ですか?オル」
「ああ、アンリ、私が君の援護をするから、先頭を行ってくれ、」
私達は、ストレッチを15分する間に、作戦を話し合った、
昨日、私はダンを説得し、アンリを先頭、後方をダンと私に決め、ダンは私の護衛、私は、アンリの援護に専念する事を決めた、
冷静に考えて、今のダンの実力では、スグルさんの、あの猛攻には耐えられない、
元々、スタイルが違う、ダンは一本の剣を確実に振り、相手を一匹ずつ、払うタイプだ、しかし、アンリは、二本の剣を素早く振り、手数を重視するタイプ、
だから、ダンの場合、一回の攻撃の破壊力が重要だが、其に比べてアンリは、破壊力は少ない代わりに、スピードが重要になる、
ならば、もし、私が、アンリを援護したなら、どうだろか、アンリなら、より、前に進む事が出来る、
そして、撃ち洩らした、スグルさんが言う、『星珠』を、ダンが確実に処理して行けば、
昨日よりは、確実に、私達は、進める筈だ、
ストレッチの間、お互いの役割とフォーメーションを確認した後、
私達は、アンリを先頭に、ロープに登った!
成る程、そうきたか、
俺は、百発近い『星珠』を投げながら、彼等のフォーメーションに感心した。
ダンが考えたのか、嫌、彼はそう言う事を考えるのは、たぶん、得意そうには見えない、となると、オルか?
俺が、『ロープの森』の天辺で待機すると、ダン、オル、アンリの三人は、何時もなら、ダンを先頭に、横並びにロープを登って来るのに、
今日は、アンリを先頭に、縦に並んで、ロープを登り始めた、
俺は、最初から、数百発の『星珠』を彼等に投げつけたが、
縦で並んで登るから、先頭のアンリには、後ろからは『星珠』はこない、アンリは、前だけ集中して、弾く事に専念していた、
更に、後方のオルが、ダンを援護するのでは無く、アンリを援護しているので、アンリはより多くの、『星珠』に対処する事が出来る、
そのオルは、左右の手から水矢をまるで二挺拳銃のように、撃ちまくって、アンリの援護と、後方から来る、『星珠』の対処をしていた、
真ん中のダンは、左右上下の『星珠』を対処するだけだから、数は、アンリより圧倒的に少ないので、彼は、確実に『星珠』を破壊し、後ろのオルに『星珠』を行かないようにしている。
チーム戦、
彼等は、チームとは何かを、自分達で考え、答えを導きだした!
俺は、少し感動した、
此なら、行けんじゃね、と、俺は、思ったんだが、
体力が足りない、
結局、彼等は、六回挑戦して、俺の処迄、後、3分の1位で、力尽きて、リタイアとなった。
しかし、良くやった、
体力は、練習を繰り返せば、自然と付く、重要な事は、自分達で攻略を考え、自分達の意思で行動した事だ、
彼等は、成長している、
時刻は、6時半、着替えて、シャワーを浴びて、朝飯食ったら、授業が始まる、8時ギリギリ、此で、朝練は終了だ、
ダンも、オルも、アンリも、大量の汗と、肩で息をしながら、『ロープの森』の地面に座っていた、
其処に、暫く前から、練習を見ていた、ジェミとリアが彼等に近付き、
ジェミは、練習を終えた、三人に声を掛け、
「ダン、オル、アンリ、凄いね、あれなら、もうすぐ、スグルさんの場所に行けるじゃないか、」
ダンが、ジェミとリアに気づき、
「ジェミ、リア、見てたのか、」
「ああ、見てたし、驚いた、」
「アンリ、貴方も、素敵でしたわ、」
「お嬢様、」
俺が、木の天辺から、地上に降りると、ジェミとリアがいて、俺は皆と会話している、ジェミの側により、俺に気付いた、ジェミが、
「あっ、スグルさん、おはようございます。」
俺は、笑いながら、
「あぁ、おはよう、で、何だ、二人とも、早朝デートか?」
二人は、顔を見合わせ、ジェミはやれやれって顔しながら、
「スグルさん、差し入れです、リアに呼び出され、リアが、アンリが早朝練習しているから、朝飯、持って行くって言うから、僕が運んで来たんですよ。」
「俺の分も有るのか?」
ジェミは、頷いて、
「沢山有りますよ、今、出します。」
シュン!!
ジェミは、宿舎の前の庭に、沢山の料理がセッティングされている、10人用の巨大なアウトドアテーブルと、椅子をだした。
「えっ!」
俺、ダン、オルが驚き、
アンリは心配そうにリアを見た、
そんな、アンリに、リアは、
「大丈夫、料理長が、アンリの為に頑張ったようですし、私は、テーブルごと、持って行くと言いましたから。」
・・・
そうか
やっぱ、ジェミ、お前も、尻に敷かれるタイプか、
俺は、ジェミを見た、
ジェミは、仕方ないですよ、ってな顔で、俺に答えた。
しかし、料理は旨かった、アレンジした俺のソースを掛けた上級牛肉のオーブン焼き、冷たいシチュー、高級野菜、上品に焼き上がったパンの木実、絞りたての果実ジュース、デザートには氷ケーキ、
体が、早朝練習で火照っている、彼等には、丁度良い、温度の料理、
流石、一流プロの料理!
食事が終わると、リアは、テーブルも椅子も、食器も、『星に愛されし民』で、使えるので、置いて行くと言い、
まぁ、見たところ、テーブルも、椅子もアウトドア用だから、外に置いても良いし、何せ、俺の宿舎は小さいから、こんな大きなテーブル邪魔だ、
しかし、テーブルが有ると打ち合わせにも便利だ、先日のパーティでは、料理を並べるのもキッチンの上だったし、
俺は、此のテーブルと椅子は、有り難く、貰う事にした。
ダンとオルは、着替えと、シャワーを浴びに寄宿舎に戻り、アンリは、俺の宿舎の、シャワーを使った後、制服に着替えて、リアとジェミの三人で、教室に向かった。
その後、俺は食器を片付けた後、校舎の掃除等を始めて、
午後、4時過ぎに、今日も、『星に愛されし民』は、俺の宿舎の前に集まり、
今回は、庭のテーブルを囲んで、オルを中心にミーティングをしてから、自主練習が始まった。
勿論、俺は、そのミーティングには参加してはいない、あくまでも、彼等の自主的行動だ、
内容を、俺が聞いたら、俺はその対策をしてしまうから、意味が無い、
俺は、ミーティングを終えて、ストレッチを、彼等が始めた時から、参加し、彼等が準備出来た時、『ロープの森』の天辺に立ち、彼等を待った、
そして、アンリを先頭に、彼等は、ロープを登り始めた。