乾杯
「そこまでだ、ハル!!」
ハルは、第一のロープの上に、30秒間、立ち尽くすと、次のロープに飛び移ろうとした時、
俺は、ハルを止めた、
もう、良い、
分かった、
ハル、やはり、ハル、お前は、『星に愛されし子供』だ、
スタッ!
ハルは、地面に着地し、片膝を付いて、肩で、息をしながら、
「ハァ、ハァ、ハァ、師匠、ハァ、で、で、ハァ、出来ました!」
嬉しそうに、俺に報告する、
「ああ、分かった、大丈夫だ、馴れれば、もっと楽になる、今日は、そこまでだ、少しずつ、挑戦して行けば良い、」
俺は、笑顔で、ハルに、そう、告げた。
4月28日の火曜日、第6回放課後自主講座が開催された、
今回から、『星の遺跡・密林』での放課後自主講座となるのだが、攻略には、『星の力』を使いこなさなければ、ならない、
俺は、その練習用として、宿舎の前の森の木々に、ロープを張り巡らした、
いざ練習してみると、リアを除いた、『星に愛されし民』の面々は、『星の力』を使っても、一番低い、ロープにすら乗る事が、出来なかった。
俺は、問題が、『星の力』の使い方に有る事に気付き、ハルにアドバイスをし、
更に、ダンに、励まされた、ハルは、耳に有る、三半規管まで、『星の力』を広げた後、ロープに乗る事に挑戦した。
ハルは、30秒間、ロープの上に立っていた後、次のロープに移ろうとした、そんなハルを、俺は、ハルの消耗が激しい事に気付いて、それ以上の行動を止めた。
成功したハルに、全員が取囲み、ロープに乗る事が出来た事に、歓声と、祝福、そして、方法を聞いたりと、大きく盛り上がった。
皆の騒ぎが治まった頃、俺は、メルティスト先生を見た、先生も、頷いていたので、俺は、
「良し、皆、此で、今日の、放課後自主講座は、終わりだ、この、ロープ渡りの練習は、次回から、本格的にやろう、」
俺は、そう、皆に告げた。
その時、ダンは、
「スグルさん、自主的なら、この、ロープに挑戦しても、問題は、?」
「まぁ、良いけど、怪我は、すんなよ、ダン、」
ダンは、ロープを見ながら、
「大丈夫です、スグルさん」
ダンは、少しでも早く、練習したい訳けだ、
「ダン、但し、暗い時は、禁止な、ロープが見えないと、危険だし、」
ダンは、頷いて、
「分かりました、スグルさん」
こんな、やり取りをした後、今日の『星に愛されし民』は、解散になり、
俺は、ハルに、
「ハル、夕飯、食ってくだろ、」
ハルは、嬉しそうに、
「はい、師匠!!」
ハルは、少しでも、『星に祝福されし食物』を取る必要が有る、其を摂取していれば、ハルの『星の力』も、きっと、大きくなる、
俺が、ハルにしてやれる事は、
飯を、食わせて、体を作ってやる事だけだ。
「肉は、此れくらいで、良いですか、」
「うん、其くらいで良いわ、スグル、」
と、メルティスト先生が俺に、言った、
何故、メルティスト先生が、居るんだ!
と、騒がないけど、メルティスト先生以外、『星に愛されし民』の皆が、俺の宿舎にいる。
俺が、ハルを飯に誘ったら、エミちゃんが、ずるい、ずるいって大騒ぎして、俺は、皆は、ボーゲンさんの夕飯が有るでしょ、と言ったら、
リアちゃんが、ボーゲンさんの夕食を、俺の宿舎に持ってきて、皆で食べましょう、って提案して、皆、大賛成、
で、急遽、俺の宿舎で、『星に愛されし民』の夕食会が開かれる事になって、
一時間後、着替えて、シャワーを浴びた彼等は、ボーゲンさんの夕飯を手に持って、俺の宿舎に集まった。
俺は、彼等に、黄色のソースを掛けたステーキ、『星に祝福されし穀物』のパンの木実、と野菜、『星に祝福されし果木』の果実と、果実ジュースを出す事にし、
俺の宿舎には、椅子や、テーブルが無いので、キッチンに料理を並べて、皆で、立食パーティにする事にした。
料理の準備が出来た後、
俺から見て、アンリ、リア、ジェミが右手、真ん中に、オルとダン、左にハル、エミ、メルティスト先生が、立ち、
ダンが、果実ジュースの入ったコップを持ち上げ、
「今日は、スグルさんの好意により、」
俺の好意って、
まぁ、良いか、其で、
「私達、『星に愛されし民』は、『星の遺跡・草原』の攻略を、此処に、祝う事が出来た!更に、『星の遺跡・密林』も、必ず、攻略する事を誓い、そして、我らは魔導格闘技大会に優勝を懸けて、乾杯!!!」
全員が、乾杯と、大声で、言った後、パーティが始まった。
パーティは、盛り上がり、リアとジェミ、アンリは、楽しく会話をしている、その中にハルとエミが、加わり、ダンとオルは、二人、大人の会話をしながら、時々、ハルに意見を求めたりして、
そんな光景を見た俺は、彼等が、本当に高校生なんだなぁ、と思った。
俺は、思い出す、あの、『魔神』を寝かせに行く旅の前夜、俺達の為に、『月の星の大国』は、こんなパーティを開いてくれた事を、
あの頃の俺は、今の、彼等と変わらない年齢だったのかも知れない、
大人と、会話する事が苦手で、俺は、ルーナ姫と、二人、パーティの席から、逃げ出した、
今も、思い出す、あの美しい庭園を二人で歩いた事を、天界の美しい星を、満月の月を、
ルーナは、俺に、絶対、帰って来てと、泣きながら、言った、
俺は、彼女の唇に唇を重ねながら、彼女に誓った、
帰って来ると、
帰って、
来ると、
だが、
約束は、
守れなかった。
ドン!
「スグル!何、悲しい顔してんだ!」
えっ、
メルティスト先生、
先生は、右手に軽酒の瓶、
メルティスト先生は、酔った、真っ赤な顔で、
「スグル!暗いぞ、良くないぞ、そう言う時は、飲んで忘れろ!!」
忘れろか、
そうだな、
今日だけは、
忘れよう、
俺は、メルティスト先生から軽酒を貰い、
飲んだ。
メルティスト先生は、
スグルは、バカだ、バカだ、と酔った勢いで、俺に言い、世界には、良い女が沢山いるんだあ!!!と叫んで、
たぶん、先生は、エルさんから、俺の事を聞いたのかも知れない、
俺は、笑いながら、そうですね、でも、其は、先生じゃぁ、無いですよね、って言ったら、先生、俺をぽかぽか、殴ってきた、
そんな、おふざけを、して、時が過ぎ、アンリとリア、エミちゃんが、酔ったメルティスト先生を、先生の宿舎迄、連れて帰り、ハル、ジェミ、ダン、オルと俺で、片付け、
片付けた後、ハルを除いて、皆、寄宿に帰った、
天界の星は、二千年前と変わらず、美しく輝き、その星が輝く、光りの中を、『星に愛されし子供』である、ハルは帰宅の道に向かった。
まるで、星々が、彼を、『星に愛されし子供』を、祝福しているかのように、
彼は、星、輝く世界を背景に、自身の戻る、場所へ、帰って行った。
そして、次の日の4月29日の力曜日、
早朝、の5時、日が明けた早朝、俺は、庭からの物音で、目を覚ました、
庭を見ると、一人、ダンが、黙々と、ロープ乗りに挑戦していた、
彼は、昨日、ハルから、ロープ乗りのコツを聞いて、早速、挑戦している様だった。
ダンバード・グラスタ
努力の天才、
彼は、人が誰も見て無い所で、人一倍、努力をしている男、
ダンは、努力をしている所を、決して、他人に見せようと、しないし、人には、言わない、
だが、俺には、分かる、
かって、俺も、一人で努力をして来たから、だから、分かる、彼の努力の結果が、
努力をしない、他人は、結果を出す為の努力が、どれ程、過酷で有るか、分からない、
だから、他人は、簡単に、あの人には、才能が有るから、あの人は優秀だからと、片付けて、終わらせてしまう、
その、努力に対する、成果に対して、才能が答えている事を、理解しようとせずに、
俺には、彼が、何を背負い、何の為に、彼処まで努力しているのか、分からない、
只、分かる事は、
彼も、また、人生の重い、運命を背負っている事だけだ、
彼は、最初は、5分間、ロープを移動しただけで、地面に両膝を付いて、苦しそうに、肩で息をしていた、
彼も、また、ハルと同様、『星の力』を使う事に対して、体力が足りていない、
まだ、彼にとって、本格的に『星の力』を使う事は、今回が初めてだから、仕方無いと、俺は、思っている、
本来、『星に愛されし子供』と、『星に愛されし民』は、違う、
『星に愛されし子供』が、星に選ばれた、特別な民なら、『星に愛されし民』は、星に指名された一般人程の差が有る、
だから、ダンが、ハルと同じ、ハルより、『星の力』を使いこなせなくても、理解は出来る、
だが、ハルは、違う、
彼は、『星に愛されし子供』だ、
何故、こんなにも、『星の力』を使いこなせない、
其が、俺には、分からない、
何故、
・・・
結局、ダンは、朝の7時迄、自主練習を続け、その結果、彼は、ロープ渡りが、継続して10分位迄、出来るようになった。
そして、彼は、宿舎に帰る前に、俺の方に向いて、一礼して、帰った。
俺が見ている事に、気が付いていたのか、俺に対して、敬意を払ったのか、その真意は分からない、
其でも、良い、
俺は、帰る彼を、窓より、姿が見えなくなる迄、ずっと見続けていた。
その日の、学校の授業が終った、4時過ぎに、『星に愛されし民』は、俺の宿舎の前の『ロープの森』の前に集まり、練習を開始した、
此は、生徒の自主練習だから、メルティスト先生も、俺も立ち会う必要は無い、
しかし、俺は、彼等の練習に、日が暮れて、彼等が練習を終える迄、立ち会っていた、そして、忙しい、メルティスト先生も、日が暮れる少し前に『ロープの森』に、彼等の練習を見に来た。
ハルとダンが、積極的に、残りの皆に『星の力』の使い方を指導して、
日没前に、全員が、ロープ渡りを15分間は、出来るようになっていた。